カプコンがモンスターハンターワイルズのベンチマークツールを公開し、同時に推奨スペックを更新。一見すると要求が緩和されたように見えるが、これは旧世代GPUユーザーへの救済措置であり、高画質設定での要求は依然として高いままだ。PCショップ店員として、新旧推奨スペックの実態を詳しく解説する。
今回の変更は、「最適化」というよりも旧世代ユーザーへの対応が主目的だ。カプコンは720pからの超解像やフレーム生成技術の活用により、より多くのユーザーが遊べる環境を提供しようとしている。ただし、本来の美しさを体験するための要件は、むしろ厳格化されている部分もある。
さらに深刻な問題として、ベンチマークソフトが示すVRAM使用量と実際のゲームでの使用量に乖離が確認された。この問題の重要性と実際に必要なスペックについて警鐘を鳴らしたい。
推奨スペックの変更点
FHD/30fps(最低設定)
- GTX 1660(6GB)で動作可能に
- 720pネイティブ解像度からの超解像
- あくまで最低限の動作保証
最低設定ではネイティブ解像度が720pにダウンサンプルされ、アップスケールで1080pを実現する仕組みだ。
ネイティブ解像度の負荷低減により、GTX 1660クラスの旧世代GPUでも30fpsでのプレイが可能になったが、画質面での妥協は避けられない。また、30fpsという基準は、あくまでも最低限の動作を保証するものであり、快適なプレイとは言えない可能性が高い。
FHD/60fps(中設定)
- RTX 2060 Super/RX 6600で対応
- フレーム生成技術が必須
- 8GB以上のVRAM要求は継続
「アップスケール使用」を前提とした最新のフレーム生成技術(DLSS 3.7やFSR 3.1)の活用により、推奨スペックはRTX 2070 Super/RX 6700XTからRTX 2060 Super/RX 6600へと大幅に引き下げられた。しかし、これはネイティブ解像度での負荷軽減が主な要因であり、これらの技術なしでは安定した60fpsの維持は困難だ。また、8GB VRAMという要件はテクスチャ品質維持のための最低限の数値であり、余裕のある動作には更に大きな容量が必要となる。
フルHD中画質設定については、初回のOBTと比較して確かに最適化は進んでいる。しかし、快適なプレイ体験を得るためには、依然としてRTX 3060(12GB)やRX 6650 XTクラスのGPUが最低限必要となるだろう。
おすすめGPUは以下
WQHD/60fps(高設定)
- RTX 4060 Ti/RX 6700 XTが必要
- 依然として高いGPU要求
- VRAM8GBでは足りない
WQHDでRTX 4060 TiやRX 6700 XTが必要という要件は、実は厳しい指定だ。特にRTX 4060 Tiの8GB VRAMでは、高解像度テクスチャを使用した際にVRAM不足が発生する可能性が高い。RX 6700 XTの12GB VRAMの方が、より安定した動作が期待できる。
画質設定を上げる場合や、レイトレーシングを有効化する場合RX 7800 XT、RTX 4070 Super程度の性能は最低限必要になる。
おすすめGPUは以下
4K/60fps(ウルトラ設定)
- RTX 4070 Ti/RX 7800 XTが最低ライン
- 高解像度テクスチャ使用時は16GBを超える VRAM消費
- 4K/60fpsには最新GPUが必要不可欠
RTX 4070 TiやRX 7800 XTが最低要件として指定されているが、これはフレーム生成技術の使用が前提となっている。実際のネイティブ4K描画では、これらのGPUでも性能が不足する場面が頻発する。特に激しい戦闘シーンや天候エフェクトが重なる場面では、フレームレートが大きく低下する可能性が高い。
4K解像度で高解像度テクスチャとレイトレーシングを有効化した設定で快適にプレイするためには、20GB以上のVRAMが欲しいところだ。
⚠警告
ベンチマークツールが表示するVRAM使用量は、実際のゲームプレイ時の使用量と異なることが判明している。ゲームプレイ時のVRAM使用量は、ベンチマーク時の予測値を上回る可能性があるため、将来的なアップデートでの改善を待つとしても、十分なVRAM容量を確保したGPUの選択が賢明だ。
おすすめGPUは以下
CPU要件の詳細
特筆すべきは、4K環境でのCPU要求がむしろ厳格化している点だ。
一般的には解像度が上がるほどGPUボトルネックとなりCPU要求は下がると考えられているが、本作ではその逆の傾向を示している。これは、高解像度環境でGPU性能を最大限引き出すために、より高いCPU性能が必要という証左だ。
4K環境での要求アップ
- AMD 製CPUでは、Ryzen 7 5800X/7700が新たな基準
- Intel 製CPUでは、OBT時と変わらずCore i5 12400/11600Kが基準
- 可能な限りフレームドロップを低減させる為、高解像度ほど高性能CPUが必要としている
実際の必要性能
- Ryzen 7 5800X、Core i5 12400では性能不足
- 特に6コアCPUは非推奨継続
- 高いシングル性能が要求される
8コアCPUが必要な理由
本作でなぜ6コアCPUが推奨されないのか、実機検証の結果から明確に説明できる。
まず、Intel CPUの例では、Core i5 12400と13400を比較すると、メインとなるPコアの性能はほぼ同等だが、Eコアが追加された13400の方が平均・最低fpsともに大きく安定する。同様に、AMD CPUでも6コア12スレッドのRyzen 5 7600より、8コア16スレッドのRyzen 7 7700の方が明らかに安定した性能を示す。
興味深いことに、より多くのコアを持つRyzen 9 7950X/9950Xでは逆にRyzen 7 7700(X)/9700Xよりfpsが低下する。これは本作のゲームエンジンが8コア16スレッドまでしか効果的に活用できないことを示している。
(※Ryzen9 シリーズでは2CCD構成による遅延の影響も考えられるが、その影響は比較的軽微であり、やはりゲームエンジンの最適化限界が主な要因と考えられる。)
Intel製CPUでもi5 13600K以上の上位モデル間で性能差が少ないことから、この傾向が裏付けられる。
つまり、本作では6コアでは性能不足となり、かといって8コア以上を大きく超えても恩恵は少ない。加えて、キャッシュサイズやメモリ帯域の影響も考慮すると、8コア16スレッドのCPUが最適な選択となる。
AMD CPU
Ryzen 7 5800XクラスのCPUでは、本作の要求するシングル性能に届かず、マルチモンスター戦での処理に不安が残る。しかし、同世代でも5700X3Dであれば3D V-Cache技術による大容量キャッシュにより、複雑な処理を効率的に処理できる。
より新しいRyzen 7 7700(X)やRyzen 7 9700XといったZEN4世代以降のCPUは、圧倒的なシングルコア性能により、3D V-Cache搭載のZEN3モデルと同等以上のゲーム性能を実現。さらにRyzen 7 7800X3DやRyzen 7 9800X3DなどのZEN4世代の3D V-Cache搭載モデルは、現時点で最強のゲーミング性能を誇る。
おすすめCPUは以下
Intel CPU
Core i5 12400が推奨に記載されているものの、実際には性能不足となる可能性が高い。Core i5 13600K以降の世代であれば十分な性能を発揮できるが、13、14世代CPUには信頼性の懸念があることに注意が必要だ。Core i7 14700クラスなら性能面では申し分ないが、やはり安定性の観点から、AMD CPUの方が安全な選択となる。
おすすめCPUは以下
※不具合リスクの無い12世代CPUは2025/02/06現在購入可能
Core i5 12600KFは Core i5 14400とコア数やキャッシュ構成は同じだがより高い性能を持ち
Core i7 12700KFであればモンハンワイルズに十分な性能を持つ
ハイエンドGPUとの組み合わせ
RTX 4090やRTX 5090などの超高性能GPUの性能を最大限引き出すには、ZEN4世代以降の3D V-Cache搭載CPUの使用が推奨される。これらのCPUは、高負荷なゲーム処理においてもGPUのポテンシャルを最大限に活用できる性能を備えている。
おすすめCPUは以下
VRAM要件の実態
実測値では、FHD環境ですら12GB以上のVRAM使用量を記録することがある。推奨値はあくまでも最低限の動作を保証する数値であり、快適なプレイのためには、各解像度で示された値よりも2-4GB程度の余裕を持たせることが望ましい。特に4Kでの16GB要求は、高解像度テクスチャパックの使用を考慮した必要最低限の数値だ。
解像度 | 公式推奨容量 | 実際に必要な容量 |
FHD | 8GB | 8~12GB |
WQHD | 8GB | 12~16GB |
4K | 12GB | 16GB~ |
4K(高解像度テクスチャ) | 16GB | 20GB~ |
ストレージ要件の変更
OBT時はストレージ要件が150GBだったが、製品版の動作環境では基本ストレージ要件が75GBへと変更された。
容量要件
- 基本:75GB
- 高解像度テクスチャパック導入時:150GB
- SSDが必須条件 ※HDDではプレイ不可
DirectStorage対応
- 高速ローディングをサポート
- NVMe SSDでの恩恵
- パフォーマンスに直結
本作では広大なマップの読み込みが頻繁に発生するため、ストレージの性能が体験に直結する。基本容量は75GB、高解像度テクスチャパック使用時は150GB必要となるが、単なる容量以上に転送速度とレイテンシが重要だ。
高性能なNVMe SSDの使用により、マップやモンスターの読み込み時間を大幅に短縮できる。特にレイテンシが低く、ランダムリード性能の高いSSDが理想的で、DRAMキャッシュ搭載モデルを選ぶことで、長期的な性能維持と寿命の向上が期待できる。
高解像度テクスチャを使用する場合は、上記の要件を満たした高性能なSSDの使用を推奨する。
SATA SSDはロード時間が長くなるため非推奨だ。
また、本作はDirectStorage技術に対応しており、この恩恵を最大限に受けるためにもNVMe SSDは必須といえる。DirectStorageはGPUに直接データを転送することでロード時間を短縮し、CPUの負荷も軽減する最新技術だ。
以下おすすめSSD
Crucial T500
実行性能は990 PROを上回る。最強なのにコスパが良い。
Samsung 990 PRO
低いレイテンシ、高いランダムリード性能を持ちほぼ欠点がない。
Micron版蝉族
コスパが良く早いのでゲーム用ストレージとして最適。DRAMキャッシュレスだが問題ない
セール時はかなりコスパが良い
Gen5(エンスー向け)
メモリ容量は32GBが必須 – 公式推奨の16GBでは不十分
公式の推奨要件では16GBとされているが、実際のゲームプレイではより多くのメモリを必要とする。ベンチマークテストでも9GB以上のメモリ消費が確認され、実際のゲームプレイでは12GB以上を消費する(OBT時を参考)。さらにWindows自体で6-7GBを使用することを考えると、16GBでは明らかに不足する。
特に現代のゲーミング環境では、ゲーム以外のアプリケーションの同時起動が一般的だ。マルチモニター環境でブラウザ、Discord、Twitter等を併用する場合、これらのアプリケーションで追加の3-5GBのメモリを消費する。また、VRAM不足時にはシステムメモリが補助的な役割を果たすため、より多くのメモリ容量が必要となる。
したがって、快適なゲームプレイを実現するためには32GBのメモリ搭載を強く推奨する。これは単なる余裕ではなく、実用上必要な容量だ。
以下おすすめメモリ
まとめ
今回のベンチマークツールは、ゲームの性能要件を確認する手段として有用だが、実際のゲームプレイとは異なる点に注意が必要だ。特にムービーシーンでの不自然な高フレームレートが平均値を押し上げている点や、実戦的な狩猟シーンが含まれていない点は、結果の解釈に慎重さを要する。
実際のゲームプレイでは
- マルチプレイヤーの参加
- 多数のエフェクト表示
- モンスターとの戦闘シーン により、ベンチマーク結果よりも低いフレームレートになることを想定しておくべきだ。
ベンチマーク実行時は、以下の指標に特に注目することを推奨する
- フレームレートの安定性(スタッタリングの有無)
- 最低フレームレート
- VRAM使用量の推移
- CPU使用率の変動
これらの指標を総合的に判断することで、より実際のゲームプレイに近い性能予測が可能となるだろう。
快適な動作のための推奨構成
- CPU:Ryzen 7 7700以上
- GPU:解像度に応じて選択
- 1080p:RTX 4060 Ti/RX 7600 XT以上
- WQHD:RTX 4070 SUPER/RX 7800 XT以上
- 4K:RTX 4070 Ti Super/RX 7900 XT以上
- メモリ:32GB以上
- VRAM:要求以上の余裕を持たせる
今回の推奨スペック変更は、旧世代GPUユーザーの救済が主目的であり、高画質での要求は実質的に変わっていない。特に注目すべきは4K環境でのCPU要件の引き上げで、これはGPU性能を最大限活用するための要件だ。
結論として、推奨スペックは下がったように見えるが、これは最低限の動作を保証するための数値。本来の美しさを楽しむには、従来通りの高スペックが必要となる。
※本記事は公式発表と実機検証に基づいています。
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