目次
結論:約6万円を払う価値はない
先に結論を述べる。UPERFECT UMax 24は、価格に見合わない中途半端な製品だ。
約380~440ドル(日本円で約5.5万~6.5万円)という価格設定は、24.5インチのQHDポータブルモニターとしては決して安くない。むしろ高価な部類に入る。問題は、この価格に見合った性能を提供していないことだ。
この製品の致命的な問題は、ポータブル性と性能の両方で中途半端な点にある。
ポータブルモニターとして見れば重すぎ、デスクトップモニターとして見れば性能が低すぎる。そして、どちらの用途で評価しても価格が高すぎる。
ポータブルモニターとして見た場合の問題
重量:2.64kgは「ポータブル」と呼べるのか
2.64kgという重量は、ポータブルモニターとしては明らかに重い。
比較対象として、同社のUMax 22は1.63kgだ。約1kgの差は、実際に持ち運ぶ際に大きな負担となる。さらに、24.5インチという大きさは一般的なバックパックには収まらない。付属のトラベルケースを使ったとしても、気軽に持ち運べるサイズではない。
「ポータブル」を謳うなら、せめて2kg以下に抑えるべきだった。
24インチという大きさを選んだ時点で、真のポータブル性は犠牲になっている。
輝度:210~320nitsでは外出先で使えない
レビューサイトによって測定値にばらつきがあるものの、最大輝度は210~320nits程度だ。これは室内使用では問題ないが、明るい環境では視認性が大幅に低下する。
ポータブルモニターの利点の一つは、カフェや屋外など様々な場所で使えることだ。
しかし、この輝度では窓際の席すら厳しい。ポータブルを謳うなら、最低でも400nits以上は欲しい。
てかカフェでポータブルモニター使う機会ってそうそう無いだろ。
デスクトップモニターとして見た場合の問題
応答速度:10msは2025年の基準では遅すぎる
最も深刻な問題がこれだ。10ms(GtoG)という応答速度は、現代のIPSパネルとしては明らかに遅い。
一般的な24インチIPSモニターの応答速度は1~4msが標準だ。つまり、UMax 24は標準的なモニターの2.5~10倍遅いことになる。この差は、特に動きの速いゲームや動画編集で顕著に現れる。
165Hzのリフレッシュレートを謳っているが、10msの応答速度では高リフレッシュレートの恩恵を十分に受けられない。これは「ゲーミングモニター」としては致命的な欠陥だ。
バックライト漏れ:品質管理の問題
複数のレビューでバックライト漏れが報告されている。特に画面上部で顕著に現れるようだ。
これは個体差の問題かもしれないが、この価格帯のモニターでバックライト漏れが発生すること自体が問題だ。同価格帯の通常のデスクトップモニターでは、ここまで明確なバックライト漏れは稀だ。
価格比較:同じ金額で何が買えるか
約6万円という価格で、日本市場では何が買えるのか。
デスクトップモニターとの比較
同価格帯(5~6万円)で購入できるデスクトップモニターの例:
- Dell S2722DC(27インチ、WQHD、IPS、4ms、USB-C給電対応):約4万円台
- BenQ SW270C(27インチ、WQHD、IPS、5ms、色精度重視):約5万円台
- ASUS TUF Gaming VG27AQL1A(27インチ、WQHD、IPS、1ms、170Hz):約4万円台
これらのモニターは、UMax 24より:
- 画面が大きい(27インチ)
- 応答速度が速い(1~5ms)
- バックライト漏れなどの品質問題が少ない
- そして価格が安い
ポータブルモニターとの比較
ポータブルモニターとして比較した場合も、より優れた選択肢がある:
- ASUS ZenScreen MB249C(24インチ、フルHD):約3.5万円
- InnoView 24インチモデル:約3.5~4万円
これらは解像度やリフレッシュレートでUMax 24に劣るが、価格差は約2~3万円もある。
さらに重要なのは、EPORMOT製の同一スペック品(おそらくOEM元が同じ)がUMax 24より30ドル安く販売されている点だ。
つまり、UPERFECTブランドに3,000円以上の価値があるのかという疑問が生じる。
「ハイエンド」と呼べない理由
UPERFECTはこの製品を「ハイエンド」として位置づけているように見えるが、それは誤りだ。
ハイエンドモニターの条件
真のハイエンドモニターは以下を満たす:
- 応答速度:1~3ms以下
- 輝度:400nits以上(HDR対応なら600nits以上)
- 色域:DCI-P3 95%以上、またはAdobe RGB 99%以上
- 品質管理:バックライト漏れや色ムラなし
- 調整機能:高さ、角度、ピボット、スイベルすべて対応
UMax 24が満たしているのは、この中で実質的に「無し」だ。
色域は100% sRGBと記載されているが、これは最低限の基準であり、ハイエンドの条件ではない。
ミドルレンジとしても微妙
ハイエンドではないとして、ミドルレンジとしてはどうか。これも微妙だ。
ミドルレンジの価格帯は通常3~4万円程度だ。UMax 24は明らかにこの範囲を超えている。にもかかわらず、性能はミドルレンジ相当か、それ以下だ。
つまり、この製品は「ミドルレンジの性能でハイエンドの価格」という最悪の組み合わせなのだ。
UPERFECTが取るべきだった戦略
この製品の問題は、すべて「中途半端さ」に集約される。製品企画の段階で、明確な方向性を持つべきだった。
オプション1:性能重視
もし性能を重視するなら:
- 応答速度を5ms以下に改善
- 輝度を400nits以上に向上
- バックライト漏れなどの品質問題を徹底的に解消
- 価格は$500~600でも許容される
オプション2:価格重視
もし価格競争力を重視するなら:
- スペックを妥協(フルHD、120Hz程度)
- 価格を$250~300に抑える
- ポータブル性を重視し、重量を2kg以下に
オプション3:ポータブル性重視
もしポータブル性を真剣に追求するなら:
- サイズを18インチ以下に縮小
- 重量を1.5kg以下に
- バッテリー内蔵も検討
- 価格は$350~400
UPERFECTは、これらすべての中間点を狙って、結果的にどれも中途半端になった。
この製品を買うべき人(ほぼいない)
正直に言えば、この製品を積極的に推奨できる人はほとんどいない。
唯一の候補者
以下のすべての条件を満たす人のみ:
- デスクトップモニターとしての性能は妥協できる
- たまに持ち運ぶ必要がある(月1回程度)
- 24インチの画面サイズが絶対に必要
- 予算に余裕がある(約6万円を気にしない)
- 他の選択肢を十分に検討した上で、それでもこれが欲しい
このすべてに当てはまる人がいるなら、購入を検討してもいい。ただし、ほとんどの人には当てはまらないだろう。
一般的な用途別の推奨
- デスクトップ使用メイン:通常のデスクトップモニターを買うべき(Dell、BenQ、ASUSなど)
- ポータブル性重視:より軽量な15~18インチモデルを買うべき
- ゲーミング用途:応答速度1ms台のゲーミングモニターを買うべき
- 予算重視:同スペックのEPORMOT製品か、スペックを下げた他社製品を検討すべき
まとめ:製品設計の失敗例
UPERFECT UMax 24は、製品企画の段階での判断ミスが最終製品に反映された典型例だ。
大きな画面とポータブル性を両立させようとしたアイデア自体は理解できる。しかし、実際の製品は:
- ポータブルモニターとしては大きすぎ、重すぎる
- デスクトップモニターとしては性能が低すぎる
- そして、どちらとして見ても価格が高すぎる
メーカーには二つの選択肢がある:
- 価格を下げる:$250~300なら、中途半端さも許容できる
- 性能を上げる:応答速度、輝度、品質管理を改善し、ハイエンドに相応しい製品にする
現状のままでは、この製品を推奨する理由が見当たらない。約6万円という予算があるなら、より優れた選択肢が市場には溢れている。
結論:UPERFECT UMax 24は、「誰のための製品なのか」という基本的な問いに答えられていない失敗作だ。同じ予算なら、用途に特化した他の製品を選ぶべきである。













































































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