NVIDIAのGeForce RTX 5070 TiグラフィックカードにSK hynix製GDDR7メモリを搭載したモデルが登場し、オーバークロック時に34Gbpsという高速動作を達成したことが明らかになった。これはSamsung製GDDR7と同等の性能を示しており、かつてGDDR6時代に見られたSK hynixの「劣勢」が完全に解消されたことを示している。同社はHBM市場でも先行し、業界をリードする立場を確立しつつある。
RTX 5070 TiでSK hynix GDDR7が34Gbpsを達成
これまでRTX 50シリーズはSamsung製GDDR7メモリを搭載していたが、今月に入りNVIDIAがSK hynixも新たなGDDR7サプライヤーとして採用していることが明らかになった。中国のChiphellフォーラムユーザー「michelelee」氏が、SK hynix製GDDR7メモリを搭載したGIGABYTE製RTX 5070 Ti Gaming OCモデルでオーバークロックテストを実施した結果、標準の28Gbpsから21%向上となる34Gbpsまでの動作に成功している。
このオーバークロックにより、3DMark Time Spyのスコアは28,46x点から30,426点へと約7%向上。これは実際のゲームパフォーマンスにも同様の向上をもたらす可能性が高い。注目すべきは、この性能がSamsung製GDDR7メモリと遜色ない点だ。
ただし興味深い問題も発生している。ユーザーがSamsung製GDDR7メモリを想定したAORUS Master向けBIOSをSK hynix搭載カードにフラッシュしたところ、カードが起動しなくなった。これはRTX 50シリーズのBIOSがメモリベンダーに依存している可能性を示唆している。幸いにもテスト対象のカードはデュアルBIOS機能を搭載していたため、復旧は可能だった。
SK hynixの急速な技術的進化
SK hynixのGDDR7メモリは、性能面でSamsungに完全に追いついたと言える。これは同社のメモリ技術が急速に進化していることを示している。GDDR6世代では、SK hynixのメモリはSamsungと比較して若干劣っていると評価されることが多かったが、GDDR7世代ではその差は完全に解消されたようだ。
この変化は単なる偶然ではない。SK hynixは近年、メモリ技術への積極的な投資と研究開発を続けてきた。GDDR7メモリは28Gbpsの標準動作速度を実現し、オーバークロック時には34Gbps以上の速度を安定して出せるレベルに達している。
また、チップの温度面でも安定しており、ある中国のユーザーがGIGABYTE製RTX 5070 TiでのSK hynix GDDR7の温度を計測したところ、負荷時でも72℃と適正範囲内に収まっていることが確認されている。
HBM市場でも圧倒的リード
SK hynixはGDDR市場での躍進だけでなく、HBM(High Bandwidth Memory)市場でも他社を大きくリードしている。最近のTSMC北米テクノロジーシンポジウムで同社は世界初となるHBM4技術を一般公開した。これは48GBの容量、2.0TB/sの帯域幅、8.0Gbpsのデータ転送速度を実現する最先端技術だ。
さらに、16層HBM3Eの実装も世界初として披露しており、これらは「Advanced MR-MUF」と「TSV」と呼ばれる同社の先進技術によって実現されている。HBM4は2025年下半期の量産開始を予定しており、現時点でSK hynixだけが一般公開できるレベルまで開発を進めている。
このようなHBM技術でのリードは、NVIDIAの次世代AI製品に採用される可能性が高く、SK hynixの市場地位を一層強化することになるだろう。
NVIDIAのマルチベンダー戦略
NVIDIAがRTX 50シリーズでSK hynixをGDDR7サプライヤーに追加した背景には、供給安定化の狙いがある。高性能GPUの需要増加に伴い、単一のメモリサプライヤーに依存することはリスクになるため、複数のベンダーから供給を受ける戦略は理にかなっている。
現在のところ、RTX 50シリーズの大半はSamsung製GDDR7メモリを搭載しているが、今後数週間でSK hynix製GDDR7を搭載したモデルが増えていくと予想される。これはメモリ供給の問題を軽減し、市場供給量の改善につながるだろう。
筆者のコメント
SK hynixのGDDR7メモリ技術の進化は、半導体業界における技術競争の激しさを象徴している。かつてはSamsungの後塵を拝していた同社が、わずか数年でトップレベルの技術を確立したことは驚くべき成果だ。
GDDR7での同等性能の達成はゲーマーにとっても朗報だ。メモリベンダー間の競争が激化することで、最終的には品質向上とコスト低下が期待できる。現時点でSK hynix製GDDR7を搭載したRTX 5070 Tiを入手できれば、Samsung製と同等のオーバークロック性能を期待できるというのは心強い。
最も印象的なのは、SK hynixがGDDR市場で追いつくと同時に、HBM市場では完全に先行している点だ。特にAI分野の急成長に伴い、高帯域メモリの重要性はますます高まっている。HBM4とHBM3Eでの技術的リードは、今後数年間のAIハードウェア市場においてSK hynixに優位性をもたらすだろう。
ただし、最終的な製品の品質はメモリだけでなく、グラフィックカード全体の設計やBIOSの最適化にも大きく依存する。今回のBIOSクロスフラッシングの問題が示すように、メモリベンダーの違いによる互換性の問題には注意が必要だ。RTX 50シリーズの購入を検討している場合は、搭載されているメモリベンダーを確認し、それに対応したBIOSやツールを使用することが賢明だろう。
※本記事はChiphell、UNIKO’s HardwareなどのWeb上の情報に基づいています。正確な情報は各社の公式発表をご確認ください。
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