6月5日の正式発売を前に、AMD Radeon RX 9060 XT 16GBモデルの初期ベンチマーク結果が流出した。今回はOpenCLとVulkan APIというゲーム性能に直結しない合成ベンチマークでの結果だが、AMDの過去の傾向から判断すると、実際のゲーム性能ではRTX 5060 Tiとほぼ同等の性能を発揮することが予想される。価格面では349ドル(16GB)というRTX 5060 Ti 16GB(429ドル)より80ドル安い設定により、コストパフォーマンスで圧倒的な優位性を持つ。発売直前に明らかになった実際の性能データから、RX 9060 XTの真の実力を分析する。
目次
結論:RTX 5060 Tiとほぼ同等性能でコスパでは優位
まず最も重要な結論から述べると、RX 9060 XT 16GBは実ゲームにおいてRTX 5060 Tiとほぼ同等の性能を発揮しつつ、価格面で大幅に優位な製品になると予想される
性能面の予想
- 実ゲームではRTX 5060 Ti 8GB/16GBとほぼ同等
- VRAM使用量の多いタイトルではRTX 5060 Ti 8GBを上回る
- 1440p解像度に最適なゲーム性能を発揮
価格面の優位性
- RX 9060 XT 16GB:349ドル
- RTX 5060 Ti 16GB:429ドル(80ドル高)
- RTX 5060 Ti 8GB:379ドル(30ドル高、しかも半分のVRAM)
技術仕様での優位性
- PCIe 5.0 x16対応(RTX 5060 Tiは5.0 x8制限)
- 16GB GDDR6(GDDR7より製造コスト安でコスパ良好)※
- x16の為PCIe 4.0の古いマザーボードでも性能低下なし
ベンチマーク結果詳細:前世代比25-31%の確実な性能向上
流出したベンチマーク結果は、レビュアー向けサンプルを使用したと思われる以下の環境で実施された
- CPU: AMD Ryzen 7 9800X3D
- マザーボード: Gigabyte AORUS X870E Master
- メモリ: 32GB DDR5
- GPU: AMD Radeon RX 9060 XT 16GB
前世代との比較で確実な性能向上を確認
RX 7600 XTとの比較
- OpenCL: 31.2%向上(83,313 → 109,315ポイント)
- Vulkan: 25.2%向上(99,223 → 124,251ポイント)
この25-31%という性能向上は、Navi 44 GPUコアの設計改良とPCIe 5.0 x16インターフェースの恩恵を反映している。特にVulkanでの性能向上は、最新のゲームエンジンでの性能向上を示唆する重要な指標だ。
各GPUとのベンチマーク比較表
GPU | OpenCL | Vulkan |
---|---|---|
RX 9070 XT 16GB | 158,990 | 181,320 |
RX 7800 XT 16GB | 140,279 | 156,865 |
RTX 5060 Ti 16GB | 138,869 | 133,861 |
RX 9070 16GB | 134,163 | 164,347 |
RX 7700 XT 12GB | 127,276 | 141,288 |
RTX 5060 8GB | 123,883 | 118,299 |
RX 9060 XT 16GB | 109,315 | 124,251 |
RX 7600 XT 16GB | 83,313 | 99,223 |
競合との比較で見えた課題
しかし、直接の競合であるNVIDIAのRTX 5060シリーズとの比較では、やや厳しい結果が出ている
RTX 5060 Ti 16GBとの比較
- OpenCL: 21.3%劣勢(109,315 vs 138,869)
- Vulkan: 7.2%劣勢(124,251 vs 133,861)
RTX 5060 8GBとの比較
- OpenCL: 11.7%劣勢(109,315 vs 123,883)
- Vulkan: 5.1%優勢(124,251 vs 118,299)
この結果は、AMDがComputexで発表した「RTX 5060 Ti 8GBより6%高速」という主張と一致しないように見える。ただし、ベンチマークスコアは実際のゲーム性能と異なる場合がある点に留意が必要である。
AMDのポジショニングは実ゲーム性能基準か?
AMDは新しい命名規則により、RX 9060 XTをRX 7700 XTとRX 7800 XTの間に位置づけると説明していた。
今回のベンチマーク結果では
- RX 7700 XT: 127,276(OpenCL)/ 141,288(Vulkan)
- RX 9060 XT: 109,315(OpenCL)/ 124,251(Vulkan)
合成ベンチマークでは、RX 9060 XTがRX 7700 XT(12GB)より低い数値を示している。しかし、これはAMDのポジショニング戦略が間違っているわけではない。
重要なのは、AMDは実際のゲーム性能でポジショニングを行っているということだ。例えば、RX 9070 XTも単純なスペック比較では前世代のRX 7900 XTXに及ばないが、実際のゲーム性能では肉薄する結果を見せている。これは、新アーキテクチャ(RDNA 4)による効率改善や、実ゲームでの最適化により実現されている。
RX 9060 XTについても同様で、Geekbenchのような合成ベンチマークではRX 7700 XTに劣っても、実際のゲームではより高い性能を発揮する可能性が高い。特に、以下の要因により実ゲームでの逆転が期待される
- アーキテクチャ効率の向上: RDNA 4の改良によるゲーム最適化
- VRAM容量の活用: 16GBという大容量が実ゲームで威力を発揮
- PCIe帯域幅の優位性: 5.0 x16による安定したデータ転送
VRAM容量の優位性は健在
ベンチマークスコアでは期待を下回る結果となったが、16GBという大容量VRAMは依然として大きな優位性を持つ。特に
- RTX 5060 Ti 8GBがVRAM制限で苦戦するタイトルでは、RX 9060 XT 16GBが優位に立つ可能性が高い
- 将来的なゲームでのVRAM要求量増加に対応
- AI関連用途での活用可能性
合成ベンチマークではVRAM容量の影響は少ないが、実際のゲーミング性能はVRAMに大きく依存する。この点で、16GBモデルの真価は実ゲームでの検証を待つ必要がある。
AMDの「控えめベンチマーク」傾向を考慮すべき
今回の結果を評価する上で重要なのは、AMDのベンチマークやリーク情報には「控えめな数値」を示す傾向があることだ。これは過去のRDNA世代でも見られた現象で、発売前の合成ベンチマークでは競合に劣っていても、実際のゲーミングベンチマークでは予想を上回る性能を発揮するケースが多い。
この「逆詐欺」とも呼べる現象は、以下の要因によるものと考えられる
- ドライバー最適化の段階的改善: 発売前サンプルでは完全に最適化されていない
- ゲーム固有の最適化: 実ゲームでのアーキテクチャ特性がより活かされる
- VRAM容量の実効性: 合成ベンチマークでは測れないVRAM優位性が実ゲームで発揮される
実ゲームではRTX 5060 Tiとほぼ同等の性能を予想
上記の傾向を踏まえると、RX 9060 XT 16GBは実ゲームにおいてRTX 5060 Ti 8GB 版を上回り、16GB版とほぼ同等の性能を発揮する可能性が高い。
特に以下のシナリオでは、RX 9060 XTが有利になると予想される
- VRAM使用量8GB超えのタイトル: RTX 5060 Ti 8GBでは性能低下が発生
- 1440p解像度: 大容量VRAMの恩恵がより顕著に現れる
- 最新のAAA級タイトル: テクスチャ品質向上によりVRAM要求量が増加
コストパフォーマンスではRX 9060 XTが圧倒的優位
価格面での比較では、RX 9060 XT 16GBが明らかに優位な立場にある
- RX 9060 XT 16GB: 349ドル
- RTX 5060 Ti 16GB: 429ドル(80ドル高)
- RTX 5060 Ti 8GB: 379ドル(30ドル高、しかも8GB制限)
同等の性能を前提とすれば、RX 9060 XT 16GBのコストパフォーマンスは圧倒的だ。特に、RTX 5060 Ti 8GBより安価でありながら2倍のVRAMを搭載している点は、長期的な視点で大きな価値を持つ。
6月5日のレビュー解禁に注目
今回の流出結果はあくまで合成ベンチマークであり、実際のゲーミング性能は6月5日のレビュー解禁まで不明だ。以下の点が特に注目される
- 実ゲームでの性能: 特に1440p解像度での競争力
- VRAM制限下での比較: 8GB超えタイトルでのRTX 5060 Tiとの比較
- レイトレーシング性能: RDNA 4での改善度合い
- 電力効率: 150-160WのTBPでの実際の消費電力
筆者のコメント
今回流出したベンチマーク結果は、一見するとRX 9060 XTに対する期待を下げるものに見える。しかし、AMDの過去の傾向を考慮すると、むしろ期待が高まる結果だと捉えている。
AMDは伝統的に、発売前のベンチマークでは控えめな数値を示し、実際のゲーミング性能で「良い意味で期待を裏切る」ことが多い。これは「逆詐欺」とも呼べる現象で、今回のGeekbench結果もその文脈で理解すべきだろう。
実際のゲーミング性能では、RX 9060 XT 16GBがRTX 5060 Tiとほぼ同等、場合によってはそれを上回る性能を発揮する可能性が高い。特にVRAM使用量の多いタイトルや1440p解像度では、16GBという大容量VRAMがRTX 5060 Ti 8GB版に対し、決定的な優位性を発揮するはずだ。
コストパフォーマンスの観点では、RX 9060 XT 16GBが圧倒的に有利だ。RTX 5060 Ti 16GBより80ドル安く、8GBモデルより30ドル安いにも関わらず、2倍のVRAMを搭載している。これは明らかに消費者にとって魅力的な選択肢だ。
また、PCIe 5.0 x16対応という点も見逃せない。RTX 5060 Tiが5.0 x8に制限されている中、古いマザーボードでも性能低下なく使用できるのは実用上の大きなメリットだ。
結論として、今回のベンチマーク結果に一喜一憂する必要はない。むしろ、AMDの「控えめ発表→実性能で驚かせる」というパターンを考慮すれば、RX 9060 XT 16GBは349ドルという価格で非常に魅力的な製品になる可能性が高い。6月5日のレビュー解禁が今から楽しみだ。
※本記事は、VideoCardz.comおよびBenchleaks等の海外メディア情報に基づいています。正式な性能評価は、6月5日のレビュー解禁後の詳細なゲーミングベンチマークをご確認ください。
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