多くのゲーマーが頭を悩ませているであろう、Radeonのハイエンドグラボ「Radeon RX 7900 XTX」と「Radeon RX 9070 XT」。今回は、この2枚のGPUについて、どちらを選ぶべきか明確に答えを出す。
「新しいモデルの方が良いんでしょ?」などという安易な考えは捨てるべきだ。PCパーツの世界はそんなに単純ではない。それぞれのグラボにハッキリとした個性と得意・不得意が存在する。この記事を最後まで読めば、最適なグラボが見つかることを約束する。
目次
【結論】性能重視ならRX 7900 XTX、最新技術とレイトレに投資するならRX 9070 XTを選べ
まず、忙しい人向けに結論を叩きつける。
Radeon RX 7900 XTX
とにかく生のパフォーマンス(ラスタライズ性能)を追求するなら、迷わずコレを選べ。特に4Kのような高解像度でゴリゴリゲームをプレイしたいパワーユーザーには他に選択肢はない。VRAMも24GBと超大容量で、ゲーム以外のクリエイティブ作業やAIにも圧倒的な強さを発揮する。ただし、消費電力は高めで上級者向けの「じゃじゃ馬」であることは理解しろ。
Radeon RX 9070 XT
FSRのような最新のアップスケーリング技術を積極的に活用したい、そして何よりレイトレーシング(レイトレ)性能を重視するなら、こっちを選ぶのが正解だ。消費電力は比較的控えめで、非常に扱いやすい「優等生」と呼べる。最新世代ならではの機能性が決定的な差を生む一枚だ。
単純な優劣で判断すしてはいけない。「どんな使い方をしたいか」で最適解が明確に変わってくるのが、この2枚のGPUの奥深さである。それでは、さらに深く、それぞれの特徴を徹底的に掘り下げる。
暴力的なまでのパワーとVRAMが魅力!「Radeon RX 7900 XTX」
まずは前世代のフラッグシップモデル、Radeon RX 7900 XTXから解説する。このGPUを一言で表すなら「パワー系」そのものだ。
強み:圧倒的なラスタライズ性能とVRAM容量は議論の余地なし
RX 7900 XTXの最大の魅力は、なんといってもその純粋な描画性能(ラスタライズ性能)の高さだ。後継のRX 9070 XTと比較しても、この点ではひとまわり高性能であることは揺るがない事実。FSRのようなフレーム生成技術に頼らずとも、素の性能で高フレームレートを叩き出す能力を持つ。
特に、4K解像度でゲームをプレイしたいユーザーにとって、この生粋の性能は絶対的な安心感をもたらす。そのパワーを支えているのが、以下の2つの要素だ。
超大容量24GB VRAM: 16GBのRX 9070 XTとは比べ物にならない24GBというVRAMは、まさに暴力的な容量だ。高解像度のテクスチャを多用する最新ゲームでもVRAM不足に陥る心配はほぼ皆無。VRゲームで超高解像度設定にしてもびくともしないのは、この大容量VRAMがあってこそだ。
物理的に広いメモリバス幅: インフィニティキャッシュによる実効帯域幅の広さに加え、物理的なバス幅が非常に広いため、高解像度になるほどその強みが活きてくる。データの通り道が広いので、ボトルネックが発生しにくいのも確かな事実だ。
この大容量VRAMは、最近話題の生成AI(大規模言語モデルなど)をローカル環境で動かしたいという需要にも完璧に適合する。ゲームだけでなく、趣味や研究でAIを触ってみたい人にとっても、RX 7900 XTXは唯一無二の、そして最良の選択肢となる。
弱み:消費電力と上級者向けの特性を覚悟しろ
ただし、この「じゃじゃ馬」GPUを使いこなすには相応の準備が必要不可欠だ。最大のネックは消費電力の大きさ。CPUの構成にもよるが、安定動作のためには基本的に1000Wクラスの高品質な電源ユニットを推奨する。これを怠れば、予期せぬトラブルに見舞われる。
また、レイトレーシング性能に関しては、最新のRX 9070 XTに軍配が上がる。
価格性能比は非常に高いものの、その性能をフルに引き出すにはPC全体のバランスを熟考する必要がある、まさに上級者向けのグラボだと断言する。
最新技術の優等生!「Radeon RX 9070 XT」
次に、最新世代のRadeon RX 9070 XTについて語る。こちらはパワー系のRX 7900 XTXとは対照的に、技術と効率で勝負するクレバーな一枚だ。
強み:圧倒的なレイトレーシング性能と最新AIアクセラレーターは疑いようがない
RX 9070 XTの最大の武器は、劇的に進化したレイトレーシング性能である。光の反射や屈折をリアルに描画するレイトレは、ゲームへの没入感を飛躍的に高めるが、同時に非常に重い処理でもある。RX 9070 XTはこの処理能力が劇的に向上しており、同価格帯のライバル製品(GeForce)にも一切引けを取らないレベルで「めちゃくちゃ強い」。
この高いレイトレ性能をさらにブーストするのが、最新のAIアクセラレーターの存在だ。これにより、Radeonの超解像技術であるFSR(FidelityFX Super Resolution)の最新版「FSR4」に対応している。FSRを使った際のフレームレートの伸びが旧世代よりも明らかに向上しており、これは新しいAIアクセラレーターの恩恵と考えて間違いはない。
つまり、4K解像度でレイトレをONにして遊びたい、といった場合でも、FSRを併用することで快適なプレイが可能になる。これはRX 7900 XTXにはない決定的なメリットであることは明確だ。
弱み:ラスタライズ性能とVRAM容量はRX 7900 XTXに劣る、だがそれが問題か?
一方で、FSRなどを使わない純粋な描画性能(ラスタライズ性能)ではRX 7900 XTXに一歩譲る。また、VRAMも16GBと、現在の多くのゲームでは十分な容量ではあるものの、24GBのRX 7900 XTXと比べると見劣りするのは事実だ。
特に4K解像度でレイトレをONにすると、VRAM消費が激しくなる。そのため、ゲームによってはテクスチャ品質などのグラフィック設定を少し下げる、といった調整が必要になる場面は出てくる。
しかし、大きなメリットとして消費電力が比較的少ない点が挙げられる。多くのCPUとの組み合わせで850Wクラスの電源ユニットがあれば十分に動作するため、電源への投資を抑えたいユーザーや、既存のPCからのアップグレードを考えているユーザーにとっては非常に魅力的な選択肢となる。
【徹底比較】6つのポイントで見る選び方の基準
さて、それぞれの特徴を理解したところで、最適なGPUを見つけるために、具体的な用途別にどちらがおすすめなのか、6つのポイントで断言する。
1. フレーム生成(FSR)を使う?
フレーム生成技術を使っても気にならないなら RX 9070 XTがおすすめ
FSRなどのフレーム生成技術に抵抗がなく、むしろ積極的に使って高フレームレートを維持したいなら、間違いなくRX 9070 XTを選ぶべきだ。最新のAIアクセラレーターによるFSR4の恩恵は絶大だ。
フレーム生成が許せないならRX 7900 XTXがおすすめ
「俺は生の描写しか信じない!」という硬派なゲーマーにはこちらしかない。FSRを使わずとも高いパフォーマンスを発揮できる、純粋なラスタライズ性能の高さが輝きを放つ。
2. メインの解像度は?
いろんなゲームを4Kの高画質で遊びたいなら RX 7900 XTXがおすすめ
物理的なメモリ帯域幅が広くVRAMも多い為理論上は絶対的に有利だ。ただし、プレイしたいゲームのベンチマークは必ず確認しろ。ゲームによっては逆転現象も起こり得る。
4K解像度メインでもレイトレ性能重視なら RX 9070 XTがおすすめ
FSRの活用が前提となるが、4Kプレイは全く問題ない。特にレイトレを効かせた4K体験をしたいなら、こちらを選ぶ価値は十分すぎるほどにある。
3. レイトレーシング性能はどれくらい重視する?
レイトレーシング性能重視ならRX 9070 XTの一択
少しでもレイトレに興味がある、あるいは最高設定でプレイしたいなら、もう迷う必要はない。4K解像度であっても、帯域幅の弱さを補って余りある圧倒的なレイトレ性能を持っている。
RX 7900 XTXはそこそこ
レイトレが苦手というわけではないが、RX 9070 XTと比べてしまうと見劣りするのは否めない。レイトレはオフにするか、設定を少し下げるのが基本的な使い方になる。
4. 動画編集やゲーム配信性能は?
動画編集やゲーム配信性能はRX 9070 XTの方が強い
最新世代なだけあって、動画の書き出しなどで使われるハードウェアエンコーダーの性能が向上している。各種コーデックでの画質や処理速度も改善されているため、動画編集や配信を考えているなら新しい方が断然有利である。
RX 7900 XTXは画質で劣る
もちろん動画編集や配信ができないわけではないが、動画エンコード・ゲーム配信での画質ではRX 9070 XTに軍配が上がる。
5. 消費電力が高くても許せる?
RX 7900 XTXは覚悟が必要
これからPCを組む、あるいは電源のアップグレードも辞さない人におすすめ。前世代の最上位モデルだけあって、要求される電源容量は非常に大きい。CPU次第だが1000Wクラスの電源ユニットが必要になる。
※PCIe補助電源ケーブルが3本付属する電源ユニットは限られているので注意して選ぶ必要がある。
RX 9070 XTはだいぶ大人しい
消費電力が比較的少ないため、850Wクラスの電源で大抵の構成はカバーできる。既存の電源を流用したい場合や、電気代を少しでも抑えたい場合に最適な選択だ。
※補助電源にPCIeコネクタを採用しているモデルが多いが、【ASRock Taichi】の様に12V-2×6コネクタ搭載モデルも存在する。RX 7900 XTXと同様に補助電源コネクタ形状やケーブル本数には注意する必要がある。
6. VRAMを使う?
大量のVRAMを消費する用途ではRX 7900 XTXが圧倒的
将来的なゲームの要求スペックや、VRAMを大量に消費する生成AIのような用途を見据えるなら、このVRAM容量は最強の武器になる。
特に生成AI用途なら絶対にこちらを選ぶべき。
RX 9070 XTは工夫が必要
最新のAIアクセラレーターを搭載していても、物理的なメモリ容量の壁は越えられない。
現状の多くのゲームでは16GBで十分だが、将来性や特定用途では不利になる可能性を考慮する必要がある。
まとめ
Radeon RX 7900 XTXとRadeon RX 9070 XT、どちらも非常に魅力的なグラボだが、その個性は全く異なる。
RX 7900 XTXは、純粋なパワー、4K性能、そして圧倒的なVRAM容量を求めるパワーユーザーやクリエイター、AI開発者に最高の選択肢となる。
一方、RX 9070 XTは、最新のレイトレーシング体験やFSR4の恩恵を最大限に受けたいゲーマー、そして消費電力と性能のバランスを重視する賢明な選択をしたい人向けだ。
価格性能比で言えば、値下がりが進んだRX 7900 XTXに軍配が上がる場面も多い。しかし、ゲーム体験の質は単純な性能だけでは決まらない。何を最も重視するのかを明確にしろ。それが、最高のグラボ選びへの一番の近道だ。
筆者のコメント
GearTune編集部として断言する。この2つのGPU選択に迷っているなら、まず自身のプレイスタイルを徹底的に見つめ直すべきだ。なぜなら、多くのユーザーが陥りがちな「とりあえず新しい」「高性能だから」といった安易な選択は、根本的な間違いに他ならないからである。
これはGPUの選択が、用途によって絶対的な答えを持つからに他ならない。例えば、4K解像度のサイバーパンク2077をレイトレーシング最高設定でプレイしたいのであれば、選択肢はRX 9070 XT一択だ。しかし、その用途がローカルLLMの活用や画像生成であるならば、24GBものVRAMを持つRX 7900 XTXが唯一無二の選択肢となる。
特にゲーミング性能を重視するユーザーに伝えたいのは、フレーム生成技術への偏見を捨てるべきだということだ。FSR4は明確な進化を遂げており、「ネイティブ4Kこそ至高」という古い価値観はもはや時代遅れと言わざるを得ない。現実問題として、最新ゲームを最高画質で楽しむには、フレーム生成技術の活用が不可欠なのだ。
そして、見落とされがちなのが電源容量である。1000W電源は決して過剰投資ではなく、むしろ安定した性能を引き出すための必須項目と心得るべきだ。特に消費電力の大きいRX 7900 XTXでは、電源不足は致命的なトラブルに直結する。その点、RX 9070 XTは既存の850W電源で対応できる場合も多く、この差も判断材料の一つとなるだろう。
最後に価格について触れておく。RX 7900 XTXは確かに値下がりが進み、コストパフォーマンスは極めて高い。しかし、その数字だけに目を奪われてはならない。繰り返しになるが、最も重要なのは自身の用途に完璧に合致するか、ただその一点だ。
この記事で示した視点を参考に、表面的なスペックや価格に惑わされることなく、読者にとって「最適」な一枚を見つけ出してほしい。そして、最高のゲーミング体験をその手に掴むのだ。
※情報源:各種ベンチマークサイト、筆者の経験、ベンチマークテスト
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