BTOパソコンのスペック表には決して載らない、「あるある」なコストカット手法について解説しよう。

最新のハイエンドグラフィックボードの性能を最大限かつ安全に引き出すためには、スパイク耐性に優れた「ATX 3.0」や「ATX 3.1」対応の電源ユニットが理想的だ。しかし、NVIDIAが従来電源+変換アダプタでの動作も公式に許容していることをいいことに、BTOパソコンではコストカットのために一昔前の「ATX 2.x」規格の電源ユニットが使われることが未だに多い。 その結果、最新グラボへの給電にタコ足のような分岐コネクタを使うハメになる。

もちろん、使ってもすぐさま壊れるわけではない。抜けないように丁寧にアセテート布粘着テープで接続部分を補強して出荷するBTOメーカーが多いし、負荷テストもきちんと行われている。

しかしこの「旧規格の使い回し」というコストカットには、決してテープでは補強しきれないデメリットが潜んでいる。

分岐コネクタと「トランジェント・スパイク」のリスク

RTX 4070やRTX 5070以上のハイエンドグラボは、「12VHPWR」や「12V-2×6」と呼ばれる新しい16ピンコネクタでの給電を要求する。これにネイティブ対応しているのが最新の「ATX 3.0(または3.1)」準拠の電源だ。

しかし、BTOメーカーがコストを削って「ATX 2.x」の電源を搭載するとどうなるか。当然コネクタの形状が合わないため、従来の8ピンケーブルを複数本束ねて変換する「分岐コネクタ(変換アダプタ)」をかませることになる。 見た目が不格好になるだけでなく、ケーブルの取り回しが悪化し、ケース内で無理に曲げることでコネクタの接触抵抗が増大。結果として、異常発熱や焼損リスクすら高まってしまう。

さらに恐ろしいのが、ハイエンドグラボ特有の「トランジェント・スパイク(瞬間的な電力の跳ね上がり)」への耐性不足だ。 最新のグラボは、重い処理が入った瞬間に定格の2〜3倍という暴力的とも言える電力をミリ秒単位で要求することがある。ATX 3.0/3.1電源は、このスパイクに耐えられるよう厳格にルール化されて作られている。

しかし、旧規格であるATX 2.x電源にはその保証がない。ゲーム中に突然グラボがドカ食いをした瞬間、電源側の保護回路(OCP/OPP)がそれを許容できずに作動し、システムが突然ブラックアウトする。最新グラボを旧規格電源で運用するのは、常にこのシャットダウンリスクと隣り合わせなのだ。

「80PLUS GOLD」は信用できない

BTOパソコンのスペック表を見ると、必ずと言っていいほど「80PLUS GOLD搭載」等と誇らしげに書かれている。消費者はこれを見て「高品質な電源なんだな」と安心してしまうが、これこそがBTOメーカーの仕掛ける最大の罠である。

結論から言えば、80PLUS認証は「コンセントからの交流電力をどれくらい無駄なく直流に変換できるか(変換効率)」を示しているだけであり、電源ユニット自体の「品質」や「耐久性」を証明するものでは一切ない

電源において本当にこだわるべきは、マザーボードやグラフィックボードにいかに「リップルノイズ(微細な電圧の揺れ)の少ない綺麗な電気」を流せるかである。規定値ギリギリのノイズまみれの電気を流し込まれれば、システムは不安定になり、CPUやGPUの性能を出しきれないどころか、寿命まで削られてしまう。

そして、そのノイズを取り除き、電源自体の長寿命化を支えているのが内部に使われている「電解コンデンサ」の品質だ。ガチ勢が電源を選ぶ際、「一次側・二次側ともに日本メーカー製105℃コンデンサ」を採用しているかどうかを絶対的な指標とするのには明確な理由がある。 コンデンサの寿命には「環境温度が10℃下がると寿命が2倍になる(アレニウスの法則)」という特性があり、熱がこもりやすいPC内部において、105℃品は一般的な85℃品に比べて圧倒的な長寿命を誇る。さらに、日本メーカー製のコンデンサはESR(等価直列抵抗)が極めて低いため、高周波のリップルノイズを効果的にフィルタリングし、システムの安定性を強固に守ってくれるのだ。

BTOメーカーが標準搭載する「詳細不明のGOLD電源」は、変換効率だけはGOLD基準をクリアしつつも、見えないところで限界までコストカットされているのが日常茶飯事である。例えば、目立つ一次側(入力側)には質の良いコンデンサを使いつつも、出力の安定性に直結する二次側には安価な海外製の85℃品を混在させるといった手法が横行している

品質を見極めたいのであれば、変換効率だけでなくノイズレベルや全体的な品質基準をより厳格にテストする「Cybenetics(サイバネティクス)認証」などを取得しているかどうかも、現在の品質重視のシステム構築において重要なチェックポイントとなる。

結論:電源にこだわりたいなら「自作」したほうがいい

「じゃあ、BTOのカスタマイズ画面で良い電源にアップグレードすればいいのでは?」と思うかもしれない。

しかし、ここにも情報の不透明性という絶望的な壁がある。BTOのカスタマイズ画面を見ても、「+15,000円:1000W 80PLUS GOLD電源に変更」としか書かれておらず、メーカー名も、コンデンサの品質も、そして「ATXバージョンがどれになるか」すら明記されていないことが多いのだ。 お金を払ってアップグレードしたのに、届いてみたら旧規格のATX 2.x電源で分岐コネクタまみれだった、という「合法的なミスマッチ」の悲劇は普通に起こり得る。

PCのすべてのパーツに電力を送り出す「心臓」である電源ユニット。 ここに妥協したくない、最新グラボの性能を安全に引き出し、リップルノイズのない綺麗な電気でシステムを長持ちさせたいと考えるなら、結論は一つ。

「自作」したほうがいい。

パッケージ化されたブラックボックスの中で何が使われるか怯えるくらいなら、自分でATX 3.0/3.1に準拠し、日本メーカー製コンデンサを積んだ信頼できる電源(CorsairやSeasonicなど)を指名買いする。それが、この理不尽なコストカット構造から抜け出し、本当に価値のあるPCを手に入れるための安全策であり、唯一の正解である。

※BTOパソコンを購入するより、パソコンショップに組立代行を依頼したほうが安く済む事が多い。特に自宅付近にパソコンショップがある人は、サポート面でも安心できるのでおすすめだ。

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