中国CXMT製DDR5について、「電圧を上げても伸びない」「タイミングを詰められない」「SK hynixより性能が低い」とする記事が出ている。

結論から言えば、比較対象がおかしい。

CXMTが低性能なのではない。SK hynix製DDR5だけが、現在のOCメモリ市場で頭二つほど飛び抜けている。

世界記録保持者に負けた新人を見て「実力不足」と評するようなものだ。SamsungやMicronまで同じ基準で測れば、その多くもSK hynixより下に並ぶ。

見当違いな記事に流されてはいけない。

DDR5-6000 CL36を量産できる時点で「低性能」ではない

今回テストされたのは、CXMT製24Gbダイを搭載するKingBankの48GBキットだ。

定格はDDR5-6000 CL36、1.25V。手動OCではDDR5-8600 CL44に到達し、メモリテストを完走している。報告された弱点は、電圧を上げても伸びにくいこと、サブタイミングを詰めにくいこと、ロット間の個体差が大きいことだ。

確かに、OC耐性ではSK hynixに及ばない。

しかし、DDR5-6000 CL36を1.25Vの量産キットとして出荷できる時点で、一般向けDDR5としては十分まともな水準である。

MicronブランドのCrucialも、DDR5-6000 CL36の市販キットを販売している。一方、SK hynix系ICが独占的に強いハイエンド領域では、DDR5-6000 CL26やCL28といった異常な低レイテンシ製品まで量産されている。

つまりCXMTの現在地は、少なくとも一般的なMicron系OCメモリと同じ土俵に入り始めた段階と見るべきだ。

SK hynixに届いていないから低性能なのではない。

SK hynixだけが、通常のDDR5メーカーと別競技をしている。

CXMTは2025年末、EUV露光装置を持たないままDDR5量産に踏み切ったメーカーだ。EUV導入前のMicronやSamsungの初期DDR5ダイも、電圧を上げてもクロックが伸びにくいという同じ症状を経験している。SK hynixがそこから頭一つ抜け出したことで、いつの間にか「SK hynix並み」が業界標準であるかのような錯覚が広まっただけだ。

CL36からCL44は「大幅な性能悪化」ではない

DDR5-6000 CL36からDDR5-8600 CL44へ上げるため、タイミングを大きく犠牲にしたという見方も雑だ。

CLは時間ではなく、待機するクロック数である。

実際のCASレイテンシーは、次の式で概算できる。

CASレイテンシー=CL×2000÷データレート

DDR5-6000 CL36は12ns。

DDR5-8600 CL44は約10.23nsだ。

CLの数字は36から44へ増えているが、1クロック当たりの時間が短くなるため、CASの実時間はむしろ約15%短縮されている。

もちろん、メモリ性能はCLだけでは決まらない。tRCD、tRP、tRFCなどのサブタイミング、メモリコントローラー、Gear設定まで確認しなければ、本当の実効レイテンシーは分からない。

だからこそ、比較ベンチマークも詳細タイミングも提示されていない段階で、「同一クロックでもSK hynixより遅い」と断定するのは早い。元になった報道も、同条件の比較結果が示されていないため、性能差の主張は慎重に扱うべきだと認めている。

CXMTの本当の弱点は、性能より再現性

今回の結果から警戒すべきなのは、DDR5-6000 CL36という定格性能ではない。

問題は、ロット間の個体差と、電圧を上げた際の伸びの悪さだ。

同じ型番を買っても、あるロットはDDR5-8000まで伸び、別のロットは伸びないのであれば、OCメモリとして扱いにくい。サブタイミングを詰められないなら、同一クロック時の実効レイテンシーでもSK hynixに差を付けられる可能性がある。

OCを楽しみたい人がSK hynixを選ぶべきなのは間違いない。

ただし、それはCXMTが粗悪品だからではない。

CXMTは量産メモリとして使える水準へ到達したが、選別品質とOC時の再現性ではSK hynixに届いていない。

正しい評価はこれである。

耐久性については、まだ判断できない

性能と耐久性も分けて考える必要がある。

筆者は以前、CXMT製のJEDEC DDR4-2666メモリをRyzen 7 5700X環境で使用し、DDR4-3600 CL19前後まで雑にOCした状態で約1年間運用していた。少なくとも筆者の個体では、不具合や目立った劣化は発生していない。

ただし、これは1セットだけの個人使用例にすぎない。

CXMT製DDR5が高温環境や高電圧、長期連続稼働でどの程度の耐久性を持つのかは、まだ十分な実績がない。ロット差が大きいという報告が事実なら、短期間のメモリテストを通っただけで長期信頼性まで保証されたとは言えない。

安価だから無条件で買えとも、短命だから避けろとも、現時点では断定できない。

結論:CXMTが遅いのではなく、SK hynixが異常

CXMT製DDR5は、DDR5-6000 CL36を量産し、選別個体ではDDR5-8600 CL44まで動作している。

これは「性能の低い中国製メモリ」の結果ではない。

一方で、電圧耐性、サブタイミング、ロット間の均一性、長期耐久性には未確認の部分が残る。価格が同じなら、実績とOC耐性に優れるSK hynix製を選ぶべきだろう。

だが、SK hynixに負けたことだけを根拠にCXMTを低性能と評価するのは、現在のDDR5市場を理解していない。

CXMTはSamsungやMicronがいる一般向けDDR5市場へ追いつき始めた。SK hynixだけが、そのさらに二段上にいる。

今回のニュースで見るべきなのは、CXMTがSK hynixに負けたことではない。

新規参入メーカーがDDR5-6000 CL36を量産し、DDR5-8600まで動かす地点へ、すでに到達していることだ。

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