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IntelのAI PC戦略が失速 – 旧世代Raptor Lakeプロセッサーの人気急上昇で生産が追いついてない?

Intelが直面する予想外の事態が明らかになった。同社が大々的に推進してきた「AI PC」向けCore Ultraプロセッサーの販売が不振である一方、旧世代のRaptor Lakeプロセッサーが予想を上回る人気を集め、生産ラインが逼迫する事態をPCショップ店員が徹底解説する。

価格差が大きな要因とされており、高価格帯のAI PC市場の今後に大きな疑問符が投げかけられている。

AI PCの人気が思うように広がらず

Intelが2025年第1四半期の決算発表で明らかにしたところによると、AI機能を搭載した最新のCore Ultraプロセッサー(Meteor Lake、Lunar Lake、Arrow Lake)の販売が期待を下回っている。特に注目すべきは、Neural Processing Unit(NPU)を搭載したプロセッサーが予想ほど売れておらず、代わりに旧世代の「Intel 7」プロセスで製造されるRaptor Lakeプロセッサーの需要が急増している点だ。

この状況について、Intel Products CEOのMichelle Johnston Holthaus氏は次のように説明している
「私たちが現在直面しているのは、旧世代の13世代および14世代Coreプロセッサーへの需要が想定以上に高まっているという状況です。これは単純に、消費者が手の届く価格帯のシステムを求めているという現実を反映しています」この傾向は、デスクトップCPUだけでなくラップトップ向けチップにも当てはまるという。

予想外のRaptor Lake人気の理由

Intelによると、この予想外の事態は、消費者が新しい高価格のAI PC向けモデル(Lunar LakeやMeteor Lake)よりも、より安価な前世代のRaptor Lakeチップを選好していることが原因だという。 この傾向には複数の要因が考えられる

  1. 価格差の大きさ – Core UltraシリーズはRaptor Lakeと比較して高価格
  2. 実用的なAI機能の不足 – 現状のAI PCは限定的な機能しか提供せず、多くの消費者にとって「必須」と感じられない
  3. ゲーミング性能の問題 – Arrow Lakeは前世代のRaptor Lakeと比較して一部ゲームでのパフォーマンスが低下している
  4. マクロ経済的懸念と関税 – 経済的不確実性が消費者をより安価な選択肢へと向かわせている

特にゲーム性能については、Core Ultra 9 285Kは前世代のCore i9-14900Kと比較して、15-20%性能が劣るという評価もある。これが、ゲーマーが旧世代モデルを選ぶ大きな理由の一つとなっている。

生産キャパシティの不足

Raptor Lake(13世代・14世代Core)に対する需要の急増により、「Intel 7」プロセスの生産能力に不足が生じており、Intelはこの状況が「予見可能な将来にわたって続く」と予想している。 これは極めて異例の事態だ。

通常、新世代CPUの発売後は旧世代の需要が徐々に減少するが、今回は逆の現象が起きている。一方で、Core Ultraプロセッサーは主にTSMCの最新プロセスで製造されており、供給に問題はないという皮肉な状況だ。

今後のAI PC戦略

このような状況にもかかわらず、Intelは今年末に次世代AI PCアーキテクチャ「Panther Lake」を予定通り発売する意向を示している。 しかし、この新世代チップがどれだけの需要を生み出せるかについては、同社は具体的なコメントを避けている。

また、長期的な対応策として、Arrow Lakeのリフレッシュ版となる「Core Ultra 300」シリーズの準備を進めているという噂もある。 改良されたAI性能と新しいNPUを搭載する可能性があるが、根本的なゲーム性能の問題が解決されなければ、状況が大きく変わる可能性は低いだろう。

筆者のコメント

IntelのAI PC推進が思うような成果を上げられていない現状は、「AI」という言葉だけでは消費者を十分に惹きつけられないことを示している。結局のところ、消費者が求めているのは確かな性能と適正な価格なのだ。

Arrow LakeはRaptor Lakeと比較して電力効率が向上したものの、ゲーム性能では一部タイトルで大きく劣る結果となっている。しかも購入には新しいマザーボードが必要となるため、総コストの上昇は避けられない。ユーザーが旧世代の安定したプラットフォームを選ぶのは、ある意味で合理的な判断と言える。

AI機能についても、現状では「あれば便利」程度の認識に留まっており、多くのユーザーにとって「必須」の機能とはなっていない。MicrosoftのCopilot連携などを強調しても、実際の使用シーンでそれが価格に見合う価値を提供できているとは言い難い。

この状況は、ハイエンドGPU市場でも似たような現象が起きている点でも興味深い。最新のRTX 5090や5080よりも、価格性能比に優れた前世代のRTX 4080やRTX 4090を選ぶユーザーが多いという点で、市場の成熟と共に消費者の目が肥えてきていることを示している。

Intelにとって真の課題は、AI機能だけでなく、基本的なCPU性能においても魅力的な製品を適正な価格で提供できるかどうかだ。Panther Lakeあるいは噂されるArrow Lakeリフレッシュで、この課題に応えることができなければ、「AI PC」という概念自体が単なるマーケティング用語で終わってしまう可能性も否定できない。

※本記事はTom’s Hardwareなどの報道に基づいています。正式な情報は各社の公式発表をご確認ください。

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