PCショップ店員の立場から、CPUクーラーの信頼性について詳しく解説していく。 CPUクーラーはプロセッサーの熱を適切に排出する重要なパーツである。そのため、信頼性の高いものを選ぶことが非常に重要だ。
まずは、CPUクーラーメーカーをTier別に分類し、それぞれの特徴を見ていこう。
【S Tier】
1. Noctua(ノクチュア)
空冷クーラーの王者として君臨するメーカーだ。ファンの品質が極めて高く、特にベアリングの耐久性は他の追随を許さない。NH-D15は空冷最強との評価も高いが、実はNH-U12Aでも十分な冷却性能がある。茶色とベージュの配色は賛否両論だが、黒色のchromax.blackシリーズも展開している。6年保証で、ファンが壊れても交換品を提供してくれる手厚いサポートも魅力だ。
2. サイズ(Scythe)
日本メーカーならではの細かな配慮が特徴的だ。特に虎徹シリーズは、コスパの高さと安定した性能で長年の人気を誇る。最新の虎徹マークⅢは、専用マウンタで取り付けも簡単。風魔弐はNH-D15に迫る冷却性能を持ちながら、価格は1万円以上安い。RevシリーズのAIO水冷も静音性が高く、特にIntel 12/13世代CPUとの相性が良い。国内サポートも安心できる。
3. be quiet!(ビークワイエット)
その名の通り、静音性を極めたドイツメーカーだ。Dark Rock Pro 5は見た目のゴツさに反して驚くほど静か。Pure Rock 2はエントリーモデルながら十分な性能があり、コスパも良い。特筆すべきは付属ファンの品質で、静音性と風量のバランスが絶妙。ただし、マウント方法が独特で、取り付けには慣れが必要かもしれない。
【A Tier】
1. ARCTIC(アークティック)
Liquid Freezer IIシリーズのAIO水冷が特に優秀だ。VRMも冷やす独自設計で、特にAMDのRyzen 7000シリーズとの相性が良い。
価格も他社より1万円以上安いのが魅力。空冷のFreezerシリーズも、価格の割に冷却性能は十分。ただし、ポンプの動作音がやや気になることもある。
6年保証なので水冷初心者でも安心して使える。
せっかくARCTICを選ぶなら420mm超大型簡易水冷クーラーを買おう。
ちなみに日本一有名なCPUグリス「MX-4」のメーカーだったりする。
2. DEEPCOOL(ディープクール)
中国メーカーだが、最近は品質が大幅に向上している。特にAK620は、NH-D15の7割程度の性能を3分の1の価格で実現している。水冷のLS520も独自の防漏水技術を採用しており、安心感がある。ただし、ファンの経年劣化はやや早めなので、長期使用では注意が必要かもしれない。
アメリカがロシア制裁の対象にDeepCoolを含めた為、取り扱う日本代理店が少なくなってしまった。
DEEPCOOL AK400 R-AK400-BKNNMN-G-1
3. サーマルライト(Thermalright)
PA120シリーズは価格の割に冷却性能が高く、特に5000円台のクーラーとしては驚異的な性能を誇る。
最近は国内でも流通が増えており、パソコン工房などで入手しやすくなってきた。ただし、取付説明書が分かりにくく、初心者には敷居が高いかもしれない。
とにかく安い簡易水冷クーラーが欲しい人にもおすすめなメーカーでもある。
やすいのに品質が高くちゃんと冷える…が、ホースがほつれやすいので慎重に組み立てよう。
GearTuneお気に入りのメーカーだったりもする。
Thermalright Assassin X 120R SE
Thermalright Frozen Prism 240 White ARGB
Thermalright AQUA ELITE 360 WHITE ARGB
【B Tier】
1. Cooler Master(クーラーマスター)
Hyper 212シリーズは長年のベストセラーだ。基本性能は必要十分で、価格も手頃。ただし、最近は他社の追い上げが激しく、以前ほどのコスパの良さは失われている。水冷も展開しているが、ARCTICやDEEPCOOLの方が魅力的な価格設定だ。
Cooler Master Hyper 212 LED Turbo ARGB
2. ID-COOLING
価格の安さが最大の魅力。SE-224-XTは4000円台でありながら、Hyper 212に迫る冷却性能を持つ。水冷のFROSTFLOW Xシリーズも、2万円を切る価格で必要十分な性能がある。ただし、ファンの寿命はやや短めで、数年での交換を視野に入れておく必要がある。
CPUクーラー選びの重要なポイント
現在のCPUクーラー選びで最も重要なのは、実はTDP(熱設計電力)対応だ。最新のCPUは発熱量が大きく、特にIntel 13,14世代のK付きCPUは250Wを超える場合もある。
エンコードやレンダリング作業をメインで行う場合、ハイエンド空冷クーラーでも冷やし切ることはできないため、最低でも360mm以上の大型簡易水冷クーラーが必要になる。
ただし、ほとんどの用途では、ミドルレンジのクーラーで十分だ。虎徹マークⅢやAK400クラスでも、ゲーミングなら問題なく使える。
水冷にこだわるなら、ARCTIC や Thermalright の簡易水冷クーラーが特にコスパが良い。
マウンタの種類も重要なポイントだ。Intel LGA1700は以前のソケットより縦長なため、専用設計のマウンタでないと加圧が弱くなりやすい。その点、最近のサイズ製品は専用マウンタを採用しており、安心感がある。
結論として、S Tierのメーカーなら間違いないが、A TierやB Tierでも用途に合わせれば十分な選択肢となる。特に静音性を重視するならNoctuaかbe quiet!、コスパを重視するならサイズやDEEPCOOL、水冷を考えるならARCTICがおすすめだ。ただし、最新CPUの冷却には余裕を持った選定が必要で、できれば上位モデルを選びたい。
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