AMDが中国市場向けに投入した「Radeon RX 9070 GRE」のレビュー解禁となり、実性能が明らかになった。RTX 5070と互角に近いラスタライズ性能を持ちながらもVRAM容量の制限が足かせとなり、ユーザーからは「微妙な立ち位置」との評価が広がっている。本記事では、各種レビューを踏まえたRX 9070 GREの実力と、グラフィックカード市場における位置づけを分析する。
RX 9070 GREのスペックと位置づけ
Radeon RX 9070 GREは、RX 9070 XTおよびRX 9070と同じNavi 48 GPUを採用しながらも、以下のように仕様が切り詰められている
- ストリームプロセッサ: 3,072基(RX 9070より15%減)
- VRAM: 12GB GDDR6(RX 9070の16GBから減少)
- メモリバス: 192-bit(RX 9070の256-bitから縮小)
- メモリ速度: 18Gbps(純正仕様、一部AIBモデルは20Gbps)
- TDP: 最大245W(ピーク時317W)
- 中国価格: 4,199人民元(約577ドル)
価格は4,499人民元(約618ドル)のRX 9070やRTX 5070と比較して約7%安い設定となっているが、スペック削減度に対してそれほど大きな値引きとは言えない。さらにVRAM容量12GBは、今日の高解像度ゲーミングでは既に限界に近づいている。
実性能評価:期待に届かない部分も
中国メディアのレビューによれば、RX 9070 GREの実性能はラスタライズにおいてRTX 5070より平均5-10%程度遅く、前世代のRX 7900 GREと同等レベル。ただし、ゲームによってはRTX 5070とほぼ互角の性能を発揮する場面もある。
RTX 5060 Ti 16GBとの比較では20-30%のリードを持つものの、RTX 5060 Tiが3,599人民元(約494ドル)とさらに安価である点を考慮すると、コストパフォーマンスの観点では疑問が残る。
特筆すべきは、レイトレーシング性能ではRTX 5070と同等かそれ以上の性能を示す場面があることだ。「Cyberpunk 2077」のような特定タイトルではNVIDIA有利だが、「Assassin’s Creed: Shadows」や「F1 24」ではほぼ互角の性能を示している。これはAMDのレイトレーシング技術の進化を示す兆候と言える。
VRAM容量の制限と実用性
RX 9070 GREの最大の弱点は、12GBというVRAM容量だ。同価格帯の競合製品と比較すると
- RX 9070: 16GB GDDR6(256-bit)
- RTX 5070: 12GB GDDR7(192-bit)
- RX 7800 XT: 16GB GDDR6(256-bit)
- RX 7900 GRE: 16GB GDDR6(256-bit)
RTX 5070も12GBだが、こちらはGDDR7メモリを採用しており帯域幅で有利。RX 9070 GREは旧世代のGDDR6を採用し、さらにバス幅も192-bitに制限されているため、高解像度・高詳細度設定のゲームではVRAMがボトルネックとなる可能性が高い。
実際、4K解像度のテストでは多くのゲームでVRAM不足による制限が見られ、RTX 5070が同様の制限を受ける一方で、16GB VRAMを搭載するRX 9070やRX 7800 XTがより安定したパフォーマンスを発揮している。
現行GPUとの比較:どれを選ぶべきか
現時点でのグラフィックカード選びにおいて、RX 9070 GREは以下のように位置づけられる
- RTX 5060 Ti 16GBの代替としては: RX 7800 XTの方が16GBのVRAMを搭載し、同等以上の性能を持ちながら価格面でも有利
- RTX 5070対抗としては: ラスタライズでわずかに劣るが、レイトレーシングでは互角。ただし両者ともVRAM容量が12GBと少なく、性能よりVRAM容量がボトルネックになる
- RX 9070との比較: 約15%性能が低下する一方で価格は7%程度しか下がらないため、コスパではRX 9070が優位
- RX 7900 GREとの比較: 性能は同等だが、VRAM容量が4GB少ないため、長期的にはRX 7900 GREが有利
総合的に見ると、同価格帯での購入を検討するなら、16GB VRAMを搭載するRX 7800 XTやRX 9070の方が将来性を考慮して魅力的な選択肢と言える。
筆者のコメント
RX 9070 GREの性能を一言で表すなら「中途半端」の一言に尽きる。最新のRDNA 4アーキテクチャを搭載しながら、12GBという時代遅れのVRAM容量が足を引っ張り、その真価を発揮できていない。特に16GB VRAM搭載のRX 7800 XTが8万円を切る価格帯で存在する現状で、この容量設定は理解に苦しむ。
性能面ではRX 7900 GREと同等のラスタライズ能力を持ち、RTX 5070と互角のレイトレーシング性能を発揮するが、VRAM容量で4GB劣る点を考えると、むしろRX 7900 GREの方が長期的に有利だ。そもそもVRAM 12GBならRX 7700 XT程度のラスタライズ性能でも十分に使い切れるレベルであり、むしろIntel Arc B580クラスの性能・価格帯で丁度良いVRAM容量と言える。
コストパフォーマンスの観点からも疑問が残る。RX 9070と比較して性能は15%低下するにもかかわらず、価格はたった7%しか下がっていない。スペック削減度を考えれば、もっと積極的な値下げがあってしかるべきだろう。結局のところ、VRAM容量が少なく将来性に乏しい点で、RTX 5070と同じ評価にならざるを得ない。
現時点では、近い価格帯の16GB VRAM搭載モデル、特にRX 7800 XTやRX 9070の方が圧倒的に魅力的な選択肢だ。中国市場限定という位置づけは、グローバル市場では通用しない中途半端なスペックであることの裏返しなのかもしれない。
※本記事の内容は2025年5月現在の情報に基づいています。製品の発売状況や価格は地域・時期により異なる場合があります。
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