AMDが中価格帯向けの新型グラフィックカード「Radeon RX 9060 XT」を5月18日に発売する可能性が高まってきた。当初6月発売と見られていたが、複数の情報筋によれば前倒しとなる模様だ。一方、「Radeon RX 9070 GRE」は当初5月8日に発表予定だったが、Q4(10月~12月)に延期されるという。両モデルのスペックと予想性能を分析する。
RX 9060 XTの発売日と仕様
Radeon RX 9060 XTは5月18日にアナウンスされ、その後数週間以内に販売開始となる見込みだ。これはComputex 2025(5月19日開始)の直前という戦略的なタイミングとなる。
主な仕様は以下の通り
- GPU:Navi 44 XT(RDNA 4アーキテクチャ)
- ストリームプロセッサ:2,048基
- ブーストクロック:約3.23GHz
- メモリ:16GB/8GB GDDR6(20Gbps)
- メモリバス幅:128ビット
- メモリ帯域幅:320GB/s
- インターフェース:PCIe 5.0 x8
同時に、「RX 9070 GRE」は12GB GDDR6メモリ、192ビットバス、ストリームプロセッサ3,072基のスペックで予定されていたが、発売は2025年第4四半期に延期となる。
予想される性能比較
RX 9060 XTのスペックを分析すると、ストリームプロセッサ数はRDNA 3世代のRX 7600 XT(2,048基)と同等だが、アーキテクチャの刷新(RDNA 4)とプロセスの微細化(4nm)、そして大幅に向上したブーストクロック(3.23GHz)により、性能向上が見込まれる。
これらの要素を考慮すると、RX 9060 XTはRTX 4060 Tiを上回る性能を持つ可能性があるが、RTX 5060 Tiには以下の理由から及ばないと予想される
- RTX 5060 TiはBlackwellアーキテクチャによる効率向上
- GDDR7メモリ(28Gbps)による帯域幅の優位性(448GB/s vs 320GB/s)
- より強力なAIアクセラレータとレイトレーシングコア
具体的な性能予想
- RX 9060 XTは高いブーストクロック(3.23GHz)を活かしたラスタライズ性能で一定の強さを示す
- RDNA 4ではレイトレーシング性能が向上し、RTX 4060 Ti程度のRT性能が期待できる
- 128ビットという狭いメモリバス幅は帯域制限の懸念があるが、Infinity Cacheによって一部ゲームでは緩和される可能性がある
実質的なライバルとなるRTX 5060 Ti 16GBとの比較では、純粋な処理性能では不利な面があるものの、価格で勝負してくるだろう。
16GBモデルの価値
特筆すべきは、RX 9060 XTも16GBと8GBのバリアントが用意される点だ。8GBモデルは現代のゲーム環境においては完全に時代遅れであり、購入を検討すべきではない。最新ゲームでは高解像度テクスチャやレイトレーシング、フレーム生成機能の使用時に8GBではVRAMが不足し、深刻なパフォーマンス低下やテクスチャの欠落が発生する。
16GBモデルであれば、メモリ帯域幅では不利でも容量面では優位性があり、特に高解像度テクスチャやレイトレーシングを使用するゲームで安定したパフォーマンスを発揮できるだろう。現在のRX 7700 XTと同等の性能で16GBのVRAMを備えていれば、画質設定に余裕が生まれ、長期的な使用にも適している。
RX 9070 GREの延期と展望
10〜12月に延期されたRX 9070 GRE(12GB GDDR6、3,072基のストリームプロセッサ)は、RTX 5070とRX 7800 XTの間に位置づけられる製品になりそうだ。しかし、12GBというVRAM容量はRX 7900 GREやRX 7800 XT(16GB)に対して不利な点となり、同価格帯で競争できるかは不透明だ。
筆者コメント
RX 9060 XTの成否は、RX 7700 XTを超えるコストパフォーマンスを提供できるかにかかっている。同等の性能に16GBのVRAMという組み合わせであれば魅力的だが、物理メモリ帯域の狭さがどこまで影響するかが焦点だ。
8GBモデルについては、RTX 5060 Ti 8GBと同様、初めから選択肢から除外すべきだ。2025年のゲーム環境では8GBはすでに不足しており、購入数ヶ月でVRAM制限に悩まされることになる。
価格次第ではあるが、RX 9060 XT 16GBはRTX 5060 Ti 16GBの対抗馬として健全な競争をもたらすだろう。NVIDIAの独走を抑え、消費者にとって選択肢が増えることは歓迎すべきことだ。
※本記事はBoard Channelsの情報に基づいています。性能予測はスペック比較と現行製品のベンチマーク傾向に基づく分析です。
コメント