マザーボードの選び方解説記事を開くと、必ずと言っていいほど「チップセットの違い」や「ATXとM-ATXの違い」といった覚える必要のないくだらない話から始まる。
ハッキリ言うが、チップセットや規格の確認など後回しでいい。
まずは「正しい選び方の順序」を頭に叩き込んでくれ。
マザーボードはPCの土台だが、主役ではない。使いたいCPUやGPUの性能を損ねなければ良いのだ。
目次
マザーボードは「最後」に決めろ
自作PC構成における正しい決定順序は、以下の順だ。
- CPU
- グラフィックボード
- 見た目や大きさ
- 最後にマザーボード
CPUが決まっていない状態でマザーボードを選ぶのは、足のサイズも測らずに、ランニングシューズを買うようなものだ。
最も重要なのは「CPUに対して必要なVRM」を備えているか
マザーボード選びの本質は、機能の多さではない。
「使いたいCPUを、長時間・高負荷で安定して回せるか」
これに尽きる。
ここで見るべきはVRM(電源回路)だ。
CPUが決まれば、自動的に以下の要件が決まる。
- ソケット形状・対応チップセット
- 消費電力
- 必要なVRMの品質・フェーズ数
- 高負荷時の安定性
CPUクラス別・マザーに求められる現実
ざっくりとした目安は以下の通りだ。ここをケチると痛い目を見る。
| CPUクラス | マザーボードへの要求 |
| 100W未満 例)Core i3 12100(F)、Ryzen 7 5700X、Ryzen 9 7900等 ※TDP表記は当てにならないので要注意 特にIntel製品は Core i5 12400(F) ですら実際の最大消費電力は100Wを超える。 | 最大消費電力が100W未満の製品であれば適当に選んでもほとんど問題ないが、長時間負荷をかけるクリエイティブ用途なら少しグレードを上げたほうが良い。 |
| 100~150W 例)Core i5 12400(F),14400(F)、Ryzen 7 5800X3D,7700X等 | 150W以下の消費電力であればあまり気にしなくても良いが、VRMヒートシンク付きが最低条件だ。ここを削りすぎると性能が出ない。 |
| 150~200W 例)Core i5 14600K(F), Core Ultra 7 265(F)、Ryzen 7 9800X3D等 | しっかり選ばないと性能が出ない。少なくとも8フェーズ(パワーステージ数)以上かつ、Dr MOSやSPS等の一体型MOSFET搭載製品を選んだ方が良い。 |
| 200~250W 例)Core i7 14700(F),Core i9 14900(F)、Ryzen 9 9950X(3D),7900X,7950X | フェーズ数も重要だが、VRMヒートシンクの冷却性能も重要だ。 少なくとも10フェーズ(パワーステージ数)以上かつ、Dr MOSやSPS等の一体型MOSFET搭載製品を選んだ方が良い。 |
| 250W以上 例)Core Ultra 7 265K(F),Core i7 14700K Core Ultra 9 285K,Core i9 14900K(F) | 最低限まともなミドルレンジ以上のマザーボードが必要。 定格60A以上の一体型MOSFETを採用し、12フェーズ(パワーステージ数)以上搭載した製品が理想。 ASUS:TUF GAMING-PLUSシリーズ ※TUF GAMINGでも-Eシリーズはフェーズ数が少ないので注意。 ASRock:Steel Legendシリーズ MSI:TOMAHAWKシリーズ GIGABYTE:AORUS ELITEシリーズ |
i9を買ってマザーをケチるくらいなら、i7とまともなマザーを買ったほうがマシだ。
「CPUの全力を受け止められるか?」まずはそこだけを見ろ。
GPUが決まると「足回り」の条件が見える
次に決めるのがグラフィックボード(GPU)だ。
ここで意識すべきは、単なるベンチマークスコアではなく、PCIe接続と帯域の関係だ。
よく「PCIe 4.0でも帯域は十分」と言われる。
基本的には正しい。特に「×16接続」で使うなら、PCIe 4.0で帯域不足になることは稀だ。
だが、PCIe 5.0が明確に意味を持つケースは存在する。これを無視してはいけない。
帯域の差が出る「VRAM不足」の挙動
生成AI処理や、VRAMを食いつぶす超重量級ゲームを想像してほしい。
VRAMが枯渇すると、システムは足りない分をメインメモリ側でバッファ処理しようとする。
この時、パフォーマンスを左右するのはGPUとメインメモリ間の通信帯域だ。
- PCIe帯域が広いほど、オーバーヘッド時の劣化が小さい
- つまり、PCIe 5.0はこの「限界領域」で効いてくる
特に注意すべき「×8接続のGPU」
ここが最大の罠だ。
NVIDIAの60番台以下など、ミドルレンジGPUの多くはPCIe ×8接続に制限されている。
- PCIe 4.0 ×8 = 帯域は実質半分
- Radeon RX 9060 XTなどは ×16(※例)
GPU側で足回りを削っている場合、マザーボード側の帯域幅がボトルネックになりやすい。
ここでジレンマが発生する。
PCIe 5.0対応マザーは、信号品質の要件(PCB品質)が高く、価格が跳ね上がる。
本来、コストを抑えたいロー~ミドルGPUユーザーほど帯域の影響を受けやすいのに、対策するには高価なマザーが必要になるという矛盾だ。
「帯域が欲しいGPU構成ほど、マザー選びがシビアになる」
この事実は、上級者を目指すなら必ず押さえておくべきだ。
初心者が見るべきポイントは2つだけ
VRMと拡張性。それ以外は一旦捨てていい。
① VRM(電源回路)
初心者は以下の3点だけチェックすればいい。
- VRMヒートシンクはあるか?(ヒートシンクなしは論外)
- 明らかにフェーズ数が少なすぎないか?
- 同クラスの上位CPU運用実績はあるか?
カタログスペックの「〇〇フェーズ!」という数字だけに騙されるな。
重要なのは実フェーズ(PWM制御)とパワーステージの質だ。数字遊びに付き合う必要はない。
② 拡張性
用途を考えれば、見るべき場所は自然に決まる。
- M.2 SSDは何本必要か?
- キャプチャーボードやサウンドカードを使うか?(PCIeスロットの位置と数)
- USBポート数は足りるか?
特に注意:RGB・簡易水冷を使う人
最近の自作PC(Corsair / NZXT / Lian Li系)で組むなら、以下は必須確認事項だ。
- アドレサブルRGB(ARGB)ヘッダーの数
- 内部USB 2.0ヘッダーの数
ここを確認せずに買うと、ハブを追加購入する羽目になったり、配線地獄を見ることになる。
「とりあえず安いから」で選ぶと、後で確実に詰むポイントだ。
理解したい人向けの話(中級者編)
PCIeレーンとチップセットの現実
勘違いしてはいけないのが、「高級チップセット = マシンの動作が速い」ではないということだ。
- PCIe世代が新しくても、CPU性能そのものは変わらない。
- CPU直結レーンとチップセットレーンは別物だ。
チップセットの違い(Z790とB760など)は、性能差というより「拡張性と選択肢の差」だ。
オーバークロックをしない、大量のPCIeレーンも使わないなら、上位チップセットはただの無駄金になる。
よくある死亡例(全部実話)
- i9 + 貧弱なBシリーズマザー
→ VRMサーマルスロットリングで性能低下。
VRM品質が低く低電圧化等のチューニングができない。 - M.2スロット不足
→ ゲーム用SSDを増設できない。 - 内部USBヘッダー不足
→ 簡易水冷の制御ができない、RGBが光らない。
NZTXやCorsairであるある。 - 物理干渉
→ マザーのレイアウトの問題でケースに干渉する。
これらは全て、事前にスペック表を見れば防げた失敗だ。
まとめ
マザーボード選びで迷ったら、この順番だけを思い出せ。
- CPU(まずはこれを決める)
- GPU(帯域と接続数を考慮)
- 用途(必要な端子やスロット)
- VRM(CPUを回しきれるか)
- 拡張性(物理的に足りるか)
余裕があれば、最後にPCIe世代やチップセットを気にすればいい。
フォームファクタからからグダグダ解説する長文記事は読まなくていい。
そのマザーは、あなたの選んだCPUを全力で回せるか? あなたのやりたいことを満たす端子はあるか?
それだけ見れば、マザーボード選びは失敗しない。


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