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メモリ・SSD価格高騰の真相。「2倍になった」は本当か?AI需要と円安が招く構造的変化を現役エンジニアが解説

SNSやPC自作コミュニティを中心に、悲鳴にも似た声が上がっています。

「SSDやメモリの値段が高すぎる」「底値の時期と比べて価格が倍になっている」といった投稿を目にし、慌ててパーツを買い求めている方も多いのではないでしょうか。

「どうせいつもの一時的な変動だろう」と楽観視していると、思わぬ痛手(出費)を被るかもしれません。なぜなら、今回の価格上昇は単なる在庫調整ではなく、生成AIブームという産業構造の変化が根底にあるからです。

なぜこれほどPCパーツの価格が上がっているのか、そしてこの傾向はいつまで続くのか。

現役エンジニアのGearTune編集部さいとーが市場の現状と構造的な背景を整理して解説します。

1. 「価格が2〜3倍」という噂は本当か?

まず、SNSで飛び交う「価格が2〜3倍になった」という情報の真偽について整理しましょう。

結論から言えば、すべてが3倍になったわけではありませんが、2023年の歴史的な安値(底値)と比較して、実売価格が1.5倍から2倍近くまで戻っている製品は確実に存在します。

2023年は「異常な安値」だった

2023年は、半導体バブルの崩壊によってメモリ(DRAM)やストレージ(NANDフラッシュ)が深刻な供給過多に陥り、いわゆる「投げ売り」状態でした。例えば、高性能な2TBのNVMe SSDが1万円台前半、セール時には1万円を切るような価格で購入できたことを覚えている方も多いでしょう。

現在は「適正価格への回帰」プラス「高騰」

その後、メーカー各社による生産調整(減産)と需要の回復により、価格は上昇に転じました。人気のSSD製品などは底値から50%〜80%以上値上がりしており、そこに円安の影響が加わることで、ユーザーの体感として「当時の2倍近い出費」を強いられるケースは決して大袈裟ではありません。

しかし、真に懸念すべきは「これから」です。市場の観測では、今後も上昇、あるいは高止まりのトレンドが続くと予測されています。

2. なぜ上がっているのか? AIが引き起こす「製造ラインの奪い合い」

今回の高騰要因は、単なるメーカーの減産だけではありません。生成AIブームが引き起こした「半導体製造リソースの奪い合い」が最大の要因です。

要因①:HBM(広帯域メモリ)が生産能力を占拠

現在、NVIDIAのH100やH200といったAI用GPUには、「HBM(High Bandwidth Memory)」と呼ばれる超高性能なメモリが不可欠です。Samsung、SK Hynix、Micronといった主要メモリメーカーは、利益率が圧倒的に高いこのHBMの生産に全力を注いでいます。

ここで問題となるのが、HBMは通常のPC用メモリ(DDR4/DDR5)よりも製造工程が複雑で、同じ設備を使っても生産できる数が少ないという点です。さらに、メーカーは限られた生産ラインをPC用メモリからHBM用へと次々に転換しています。
その結果、我々が普段使用するPC用メモリの生産能力が物理的に圧迫され、供給量が絞られることで価格が押し上げられているのです。

要因②:データセンターによる「エンタープライズSSD」の爆買い

AIの学習や推論には、膨大なデータを高速で読み書きする環境が必要です。そのため、データセンター向けの高性能SSD(eSSD)の需要が爆発的に伸びています。

NANDフラッシュメーカーとしては、利益の薄い一般消費者向けSSDよりも、高値で大量に売れるサーバー向けSSDへ優先的に半導体チップを回すのが合理的です。結果として、自作PC向けのSSD供給は後回しにされがちになり、店頭価格の上昇につながっています。

3. 日本特有の「円安」という追い打ち

世界的なドルベースでの価格上昇に加え、日本国内では円安の影響が直撃しています。

PCパーツは基本的にドル建てで取引されます。為替レートが円安水準で推移する限り、海外での値上がり幅以上に、日本国内の店頭価格への転嫁は避けられません。輸入代理店のコスト増も加わり、値下げを期待しづらい状況が続いています。

結論:これは「構造的なインフレ」。必要な時が買い時

現在懸念されている価格上昇は、残念ながら一過性のものでは済まない可能性が高いと言えます。

これまでのPCパーツ価格は「上がっては下がる」を繰り返すシリコンサイクルの中にありましたが、今回は「AIという巨大な需要」が「PC向けの生産枠」を物理的に侵食しているため、構造が根本から変化しています。

メモリメーカー各社は、赤字に苦しんだ2023年の反省から、安易な増産を行わず、収益性の高いAI向け製品や高価格帯の維持を徹底する姿勢を見せています。AIブームが沈静化しない限り、PC用メモリやSSDの供給不足感や高値傾向は解消されにくいでしょう。

「欲しい時が買い時」という自作PC界隈の格言がありますが、今の状況に限っては「今買わないと、来月はもっと高くなっているかもしれない」という現実的なリスクがあります。PCの新調やストレージの増設を検討している方は、値下がりを待つよりも、必要なスペックを早めに確保することをおすすめします。

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