2026年1月、ラスベガスで開催されたCES 2026において、家庭の給湯という日常的な行為に革命をもたらす製品が発表されました。
スタートアップ企業Superheatが開発した「H1」は、外見こそ一般的な電気温水器ですが、内部には高性能なビットコインマイニングマシンが搭載されており、マイニング時に発生する排熱を利用してお湯を沸かすという画期的なシステムを実現しています。

排熱を資源に変える革新的アプローチ
従来、コンピューターの稼働時に発生する熱は厄介な副産物として扱われてきました。
データセンターでは冷却のために膨大なエネルギーを消費しており、この熱エネルギーの大部分は単に大気中に放出されています。

Superheat H1は、この常識を覆す発想から生まれた製品です。
H1の基本的な仕組み
H1のタンク内には、ビットコインマイニング専用のASIC(特定用途向け集積回路)チップが組み込まれています。
このチップが暗号通貨の計算処理を実行する際に発生する熱を、タンク内の約190リットルの水に効率的に伝達し、給湯に必要な温度まで加熱します。
同社の試算によれば、マイニングによって得られるビットコイン収益により、給湯にかかる電気代の最大80%を相殺できるとしています。
暖房とは異なり、給湯は季節に関係なく毎日必要とされるため、年間を通じて安定した稼働が可能です。この点が、排熱利用システムとして特に優れている理由の一つです。
AIインフラとしての可能性
Superheatは将来的な展望として、ビットコインマイニングだけでなく、AI推論処理を行う分散型データセンターとしての活用も視野に入れています。
各家庭の給湯器がネットワークでつながり、AIコンピューティングの一翼を担う未来は、決して荒唐無稽な話ではありません。
このアプローチは、データセンターの集中化がもたらすエネルギー効率の課題に対する一つの解答となる可能性があります。
ゲーミングPCと電気ポットの融合という新たな地平
H1が示した「演算排熱の実用化」というコンセプトは、給湯器の枠を超えて応用できる可能性を秘めています。GearTune編集部が特に注目したいのが、ゲーミングPCへの展開です。
ハイエンドゲーミングPCの発熱問題
最新のハイエンドゲーミングPC、特にGPUの発熱量は驚異的なレベルに達しています。
高負荷なゲームや動画編集を実行すると、PCケースから吹き出す温風は冬場の暖房代わりになるほどです。
この膨大な熱エネルギーを単に室内に放出するだけでは、あまりにももったいないと言えます。
ゲーマーのライフスタイルと排熱利用の親和性
ゲーマーの生活パターンを考えると、排熱でお湯を沸かすシステムは理にかなっています。
深夜のゲームセッション中にカップ麺を食べたり、コーヒーを淹れたりするゲーマーは少なくありません。H1のような大容量タンクは不要で、GPUが80度を超える高負荷状態でゲームをプレイしている間に、コップ1〜2杯分のお湯が沸けば十分です。
さらに、水の熱伝導率は空気よりもはるかに高いため、水冷システムと組み合わせることで、従来の空冷ファンよりも効率的にGPUを冷却できます。
騒音の低減も期待でき、お湯が沸く音がGPUのパフォーマンスの証となるわけです。
想定される製品コンセプト
たとえば、NVIDIAなどのGPUメーカーがPC周辺機器メーカーとコラボレーションし、「サイバーパンク2077を最高設定で30分プレイすれば、カップヌードルが作れます」といった製品を開発する日が来るかもしれません。
レイトレーシングを有効にすることで沸騰速度が向上するといった、ゲーミング性能と実用性を両立させたデバイスの登場も夢ではありません。

エネルギー効率の再定義
Superheat H1が示した本質は、単なる技術的な工夫ではなく、排熱という概念の再定義にあります。
これまで廃棄物として扱われてきた熱エネルギーを、価値ある資源として活用するという発想の転換です。
給湯器から始まったこの潮流は、今後ゲーミングPCや家電製品全般に広がっていく可能性があります。私たちの日常生活において、コンピューティングと熱エネルギーの融合がどのような形で進化していくのか、注目していく価値は十分にあるでしょう。









































