ようやくMSRP以下で買えるようになったGPUが、再び値上がりする可能性が浮上した。
NVIDIAとAMDは、2026年初頭(あるいは早ければ2025年12月)にグラフィックカードの価格を引き上げる見通しだという。両社から公式発表はないものの、業界筋の情報として、 メモリチップの調達コストが確実に上昇している ことが報じられている。
この価格上昇は、我々PCゲーマーにとって決して他人事ではない。ようやく落ち着いたGPU市場が、再び混乱に陥る可能性があるからだ。
目次
DRAM価格高騰の実態
今回の価格上昇の根本原因は、 DRAM(特にGDDR6/GDDR7)の供給不足と価格高騰 にある。
具体的な数字を見てみよう
- DDR5 16Gbスポット価格: 過去1ヶ月で2倍以上に上昇、過去最高価格に到達
- GDDR6/GDDR7価格: AI向け需要急増により、供給が逼迫
- 今後の見通し: この傾向は2026年Q1まで続く見込み
つまり、GPU製造に不可欠なVRAMのコストが、 短期間で劇的に上昇している のだ。
GPU価格への影響はどの程度か
では、実際にGPU価格はどれほど上がるのか。
業界の試算によれば
- VRAMコストが10〜15ドル上昇 → GPUは25〜40ドル値上げ
- VRAMコストが2倍 → GPUは100ドル以上値上げ
現在のDDR5の価格動向を見る限り、 後者のシナリオも現実味を帯びている 。
具体例を挙げれば
| GPU価格帯 | 現行価格 | 値上げ後(楽観的) | 値上げ後(悲観的) |
|---|---|---|---|
| エントリー(RTX 5060クラス) | 約45,000円 | 48,900円 〜 51,200円 | 60,500円以上 |
| ミドル(RTX 5070クラス) | 約83,000円 | 86,900円 〜 89,200円 | 98,500円以上 |
| ハイエンド(RTX 5080クラス) | 約180,000円 | 183,900円 〜 186,200円 | 195,500円以上 |
この数字は、あくまで推定だが、 決して誇張ではない 。DRAM価格の上昇率を考えれば、むしろ控えめな見積もりといえる。
なぜDRAMが不足しているのか
DRAM不足の背景には、 AI需要の爆発的な拡大 がある。
データセンター向けのAI用途では、大容量・高速なメモリが大量に必要だ。ChatGPTのような大規模言語モデル、画像生成AI、機械学習インフラ――これらすべてが、膨大なメモリを消費する。
結果として、メモリメーカーは サーバー向けDDR5やHBM(High Bandwidth Memory)の生産を優先 し、コンシューマー向けGDDR6/GDDR7の供給が後回しになっている。
つまり、我々PCゲーマーが使うGPUは、 AI市場の成長の「しわ寄せ」を受けている のだ。
値上げのタイミングは?
報道によれば、価格改定は以下のタイミングで実施される可能性が高い
- 早ければ2025年12月
- 遅くとも2026年1月(Q1初月)
つまり、 年末商戦の直後 だ。
この時期の値上げは、ブラックフライデーやホリデーシーズンで在庫を一掃した後、新価格で市場に再投入する、という販売戦略とも一致する。消費者にとっては、まさに「買い時」を逃すと痛手を負うタイミングだ。
ゲーマーはどう対応すべきか
この状況で、我々が取るべき行動は明確だ。
1. 年末までに購入を検討する
もしGPU購入を考えているなら、 2025年末までに動くべき だ。
現在、NVIDIAとAMDのGPUは、ようやくMSRP以下、あるいはMSRP付近で購入できる状況にある。この「買い時」は、値上げが実施されれば終わる。
特に、以下のような用途を考えている人は、早めの決断が賢明だ
- 新規PC構築
- 既存GPUからのアップグレード
- 予備機の確保
2. 中古市場の動向を注視
新品が高騰すれば、中古の相対的な価値が上がり、価格も上昇する。つまり、 中古で安く買えるのも今のうち だ。
ただし、中古購入時は以下に注意
- マイニング使用歴: 長期間酷使されたGPUは寿命が短い
- 保証の有無: メーカー保証が残っているか確認
- 動作確認: ベンチマークスコアや温度を必ずチェック
3. 次世代GPUの発売を待つという選択肢
もう一つの選択肢は、 次世代GPU(RTX 50シリーズやRX 8000シリーズ)の発売を待つ ことだ。
ただし、この戦略にはリスクがある
- 初期価格は高い: 次世代GPUは、DRAM高騰を織り込んだ価格設定になる可能性が高い
- 供給不足: 新製品は常に品薄で、入手困難なケースが多い
- 値上げ後の現行モデル: 現行モデルも値上げされるため、「安い選択肢」が消える
つまり、 「待てば安くなる」という保証はない 。むしろ、全体的に価格が底上げされる可能性が高い。
メーカーの責任と市場の現実
今回の値上げは、NVIDIAやAMDの「利益追求」だけが理由ではない。
DRAM価格の上昇は、サプライチェーン全体の構造的な問題であり、GPU製造コストが実際に上がっている以上、ある程度の値上げは 避けられない現実 だ。
とはいえ、 メーカーがどこまでコストを吸収し、どこまで消費者に転嫁するか は、企業の判断次第である。
過去のGPU不足(マイニングブームや半導体不足)では、一部のメーカーやショップが便乗値上げを行い、消費者が不当な負担を強いられたケースもあった。今回も、同様の事態が起きないとは限らない。
我々消費者にできることは、 適正価格を見極め、不当な値上げには反応しないこと だ。
結論、値上げ前の「今」が最後の買い時
DRAM価格の高騰によるGPU値上げは、残念ながら 避けられない現実 である。
AI需要の拡大は今後も続くため、メモリ不足が短期間で解消される見込みは薄い。つまり、 2026年以降、GPU価格は高止まりする可能性が高い 。
GPUの購入を検討しているなら、2025年末までに動くべきだ。 現在の価格は、MSRP付近まで落ち着いており、値上げ前の「最後の買い時」といえる。
一方で、急いで購入する必要がない人は、冷静に市場を観察し、次世代GPUの発売や価格動向を見極めるのも一つの手だ。
いずれにせよ、 市場の変化を正しく理解し、自分にとって最適なタイミングで行動する ことが、賢い選択につながる。
筆者のコメント
AI需要の拡大がPCゲーマーに「しわ寄せ」を与えるという構図は、皮肉としか言いようがない。データセンターが優先され、コンシューマー市場が後回しになる――これは、半導体業界の現実だ。
しかし、この状況を嘆くだけでは何も変わらない。 市場の動きを正しく読み、適切なタイミングで行動する力 こそが、我々ゲーマーに求められている。
値上げは避けられないが、賢く立ち回れば、損失を最小限に抑えることはできる。それがGearTuneの結論だ。
























































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