Acerのスウェーデンサイトにて、まだ正式発表されていない「Radeon RX 9070 GRE XT」グラフィックカードが誤って掲載されるという出来事があった。これはマーケティングチームのミスである可能性が高いが、AMDが近日中に発表予定の「RX 9070 GRE」の存在を裏付ける証拠となった。
誤表記の内容と真相
Acerは数週間前に発売されたNITROシリーズのグラフィックカード製品ページにて、正式名称である「NITRO RX 9070 XT」の代わりに「RX 9070 GRE XT」という名称を使用していた。「GRE」とは「Great Radeon Edition」の略称と思われるが、実際には「RX 9070 GRE XT」というモデルは存在しない。
掲載されているスペック自体は通常のRX 9070 XTのものであり、他のモデルページでは正しい名称が使用されていることから、これは単純な表記ミスだと考えられる。しかし、この誤表記によって、AMDが「RX 9070 GRE」という新モデルを準備していることが間接的に確認された形だ。
RX 9070 GREについて
複数の情報筋によれば、AMDは近日中に2つの新型グラフィックカード「RX 9060 XT」と「RX 9070 GRE」を発表する予定だ。特にRX 9070 GREはRX 9070非XTモデルの代替として位置づけられ、一部の市場では在庫切れが続いているRX 9070に置き換わることが予想されている。
入手した情報によると、RX 9070 GREのスペックは以下の通りとなる
- GPU:Navi 48 XL
- ストリームプロセッサ:3,072基(RX 9070の3,584基から削減)
- ブーストクロック:約2.79GHz
- 演算性能:約17.1TFLOPS(RX 9070は18TFLOPS)
- メモリ:12GB GDDR6(RX 9070は16GB)
- メモリバス:192ビット(RX 9070は256ビット)
- メモリ速度:18Gbps(RX 9070は20Gbps)
- メモリ帯域幅:432GB/s(RX 9070は640GB/s)
これらのスペックから、RX 9070 GREはRX 9070とRX 9060 XTの間に位置する製品として、中間価格帯を埋める役割を果たすことが予想される。
市場への影響と発売時期
現時点ではRX 9070 GREが世界的に発売されるかどうかは不明だが、発売は今四半期(Q2 2025)中と見られている。注目すべきは、RX 9000シリーズ全体においてAMDのリファレンスデザインが存在せず、AIBパートナー各社によるカスタムモデルのみが販売されている点だ。
一部のカスタムモデルではブーストクロックが3.0GHzに迫るものも登場する見込みで、オーバークロックの余地も十分にあると言える。
今後の展開と市場動向
AMD RX 9070 GREとRX 9060 XTの正式発表は数週間以内と見られており、価格や詳細なスペック、グローバル展開の有無などが明らかになるだろう。
現在のRX 9000シリーズラインナップは以下の通り
モデル | GPU | コア数 | メモリ | 価格(MSRP) | 発売日 |
---|---|---|---|---|---|
RX 9070 XT | Navi 48 XTX | 4,096基 | 16GB/256bit | $599 | 2025年3月 |
RX 9070 | Navi 48 XT | 3,584基 | 16GB/256bit | $549 | 2025年3月 |
RX 9070 GRE | Navi 48 XL | 3,072基 | 12GB/192bit | 未発表 | 2025年Q2 |
RX 9060 XT | Navi 44 XT | 2,048基 | 16/8GB/128bit | 未発表 | 2025年6月 |
筆者コメント
Acerのこの誤表記は単なるケアレスミスに見えるが、背景にはAMDのモデル命名戦略の複雑さがあると感じる。「XT」と「GRE」という似たような接尾辞の混在は混乱の元だろう。特に「GRE」が「Great Radeon Edition」の略称なら、なぜ「XT」より上位に聞こえる名前をスペックダウンモデルに付けるのか疑問だ。
注目すべきは、RX 9070 GREが単なるコスト削減モデルではなく、クロック向上で性能面での妥協を最小限に抑えている点だ。メモリバスとVRAM容量の削減は気になるが、1440p解像度のゲームなら実用上問題ないだろう。
また、AMDがこのタイミングでGREモデルを投入する背景には、NVIDIA RTX 5060 Ti($399-$499)に対抗する意図が透けて見える。RTX 5060 TiとRTX 5070($549)の間に価格帯の隙間があり、AMDはここを狙っているのではないか。おそらく$479程度で投入されれば、コストパフォーマンス重視のゲーマーにとって魅力的な選択肢になるだろう。
ただ懸念点もある。RX 9070 GREの存在はRX 9070非XTモデルの将来に疑問を投げかける。既存モデルを市場に残したまま類似製品を投入すれば、自社製品同士の共食いも起こりうる。長期的には「GRE」モデルがRX 9070非XTの後継となる可能性もあるため、今後のAMDの製品戦略に注目したい。
※本記事はAcer Sweden公式サイト、VideoCardz、およびその他海外メディアの情報に基づいています。
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