NVIDIA GeForce RTX 4060がリリースから約2年経過した今、公式MSRP $299から大幅に値上がりし、$460〜500という驚異的な高価格にもかかわらず、米大手PCパーツ販売サイトNeweggで売上首位を獲得している。次世代GPU「RTX 5060」シリーズの発売を目前に控えた状況で、本来値下がりするはずの旧世代GPUが史上最高値を更新するという異常事態が発生している。
供給不足で高騰するRTX 4060
米Neweggの現在のベストセラーGPUチャートでは、MSIのRTX 4060 Ventusモデルが$460(「香港から発送」と表記)という高価格にもかかわらず首位を獲得。トップ20内の他のRTX 4060モデルとしては、Gigabyte Eagleのトリプルファンモデルが$455(米国から発送)で登場している。
発売当初は$299という価格でも「コスパ不足」と批判されたRTX 4060が、2年近く経過した今、約50%も値上がりして引き続き高い人気を維持しているという状況は極めて異例だ。通常、次世代製品の発売が近づくと旧世代製品は値下がりするのが市場の常識だが、現在の状況はまったく逆の動きを見せている。
供給不足の背景
この異常な価格高騰と売れ行きの背景には、深刻なGPU供給不足がある。NVIDIA RTX 50シリーズ、AMD RDNA 4 RX 9000シリーズ、IntelのBattlemage Arc B-シリーズなど、新世代GPUはいずれも公式MSRPでの入手が極めて困難な状況が続いている。
それに加えて、前世代のグラフィックスカードの在庫も2024年末頃から枯渇し始め、RTX 4060、RX 7600、Arc A750、RX 6600など、より低価格帯のカードのみが比較的入手可能な状態が続いていた。しかし、現在ではRTX 4060まで「妥当な価格」のリストから外れる事態となっている。
本来の市場価値との乖離
2023年6月に$299で発売されたRTX 4060は、当時のレビューや愛好家から「大幅な妥協」があるとして批判を受けていた。ベンチマークでは世代間の性能向上がわずかで、8GB VRAMと128bitインターフェースという仕様は、12GB VRAMを搭載した前世代RTX 3060と比較して大きく見劣りするものだった。
このような性能面での制約があるにもかかわらず、現在の$460〜500という価格はあまりにも不釣り合いだ。特に、RTX 4060搭載のゲーミングノートPC全体が$729で購入できることを考えると、デスクトップGPU単体の価格の異常さが際立つ。
価格高騰が続く背景
通常、次世代GPUの発売が近づくと、旧世代製品は値下がりする傾向にある。しかし現在は、RTX 5060シリーズの発売が近づいているにもかかわらず、むしろRTX 4060の価格は上昇している。
中国の小売業者は最近、RTX 5060およびRTX 5060 Tiグラフィックスカードを$463〜528(中国元から換算し、現地の売上税を差し引いた価格)でリスト化しており、これが旧世代RTX 4060の価格下落を妨げている一因となっている。
代替オプションとしてのAMDやIntel
現在の市場状況を考えると、AMDやIntelのGPUが魅力的な代替オプションとなる可能性がある。特にNeweggの売上4位にランクインしているAMD Radeon RX 6600は$210という価格で、RTX 4060の半分以下のコストでありながら、多くのゲームで十分なパフォーマンスを発揮する。
また、AMD Radeon RX 7600/XTやIntel Arc B580、B570なども、RTX 4060の代替として検討する価値がある。特に新世代GPUの発売を待つつなぎとしては、コストパフォーマンスの観点から優れた選択肢となるだろう。
筆者のコメント
今回のRTX 4060の価格高騰と売上首位という状況は、NVIDIAが意図的に作り出した品薄商法の結果としか言いようがない。本来であれば次世代製品の発売に伴い値下がりするはずの旧世代製品が、むしろ大幅な値上がりを見せるというこの状況は、健全な市場とは言い難い。
特に残念なのは、NVIDIAが高価格帯製品(RTX 5080/5090)の供給を意図的に制限し、より利益率の高い市場セグメントに集中する一方で、より多くのゲーマーが購入できる価格帯の製品の供給を十分に確保していない点だ。この戦略は短期的には企業利益を最大化するかもしれないが、長期的にはPC市場全体の健全な成長を阻害する要因となる。
AIブームに乗じたNVIDIAのこうした市場操作は、忠実なゲーミングユーザーを犠牲にするものであり、強く非難されるべきだ。ゲーマーやPC愛好家が適正価格でハードウェアを入手できる市場環境の回復が急務である。
現在RTX 4060を必要とするユーザーには、可能であれば新世代の「RTX 5060」や「RX 9060」シリーズの発売まで待つか、AMDやIntelの代替製品を検討することを強くお勧めする。日本でも5万円以上するRTX 4060が増えてきているが、その性能と基本仕様を考えると、まったく「買い」とは言えない状況だ。
※本記事はNeweggの販売データとTom’s Hardwareの報道に基づいています。価格は記事公開時点のものであり、市場状況により変動する可能性があります。
コメント