一度は中止されたと伝えられていたIntelのArrow Lake-SリフレッシュCPUシリーズが計画中であることが明らかになった。このリフレッシュモデルでは主にNPU(Neural Processing Unit)の性能強化が図られるとともに、Arrow Lake-HXリフレッシュと同じダイを利用する見込みだという情報が浮上している。
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キャンセル噂から一転、計画復活の背景
昨年末、Intelは当初予定していたArrow Lakeリフレッシュの計画を中止したと報じられていた。しかし、中国の著名リーカーGolden Pig Upgradeによれば、この計画は復活しており、デスクトップ向け「Arrow Lake-S」とモバイル向け「Arrow Lake-HX」の両方でリフレッシュモデルが準備されているという。
このリフレッシュシリーズは当初「Core Ultra Series 3」として展開される予定だったが、現行の「Core Ultra Series 2(Arrow Lake)」CPUに搭載されている13 TOPSのNPUよりも高性能なNPUアーキテクチャを取り入れることが主な目的とされている。ダイサイズはやや大きくなる見込みだ。
Intel NPUアーキテクチャの進化
IntelのNPUは世代を追うごとに大幅な性能向上を遂げており、リフレッシュモデルでも引き続きこの流れが続く見込みだ。現在判明している各世代のNPU性能は以下のとおり
- NPU1: 0.5 TOPS
- NPU2: 7.0 TOPS
- NPU3: 11.5 TOPS
- NPU4: 48.0 TOPS(Lunar Lake搭載)
- NPU5: 約50 TOPS(Panther Lake予定)
- NPU6: 約75 TOPS(Nova Lake予定)
リーカーの@Jaykihnによれば、NPU5アーキテクチャは1〜3タイル構成で18〜50 TOPSの性能を発揮し、NPU6アーキテクチャは4タイル設計で最大75 TOPSの性能を実現するという。Arrow Lakeリフレッシュでは既存モデルのNPU3から性能向上したNPUが搭載される見込みだが、具体的な数値は未発表だ。
LGA 1851ソケットの継続利用を確認
Arrow Lake-Sリフレッシュは現行のLGA 1851ソケットを継続して使用する。これまでIntelはLGA 1851プラットフォームが次世代CPUをサポートするかどうかについて明言を避けていたが、今回の情報によりArrow Lakeリフレッシュモデルは少なくとも同じソケットを使用することが明らかになった。
技術的には「リフレッシュ」はまったく新しい世代ではなく、AIチップレットの変更と若干のクロック向上が主な変更点となる見込みだが、現行のLGA 1851マザーボードが少なくとももう1年は継続して活用できることになる。
ゲーミング最適化の強化にも期待
現行のCore Ultra 200Sシリーズはゲーミング性能に関して十分な最適化がなされていないという指摘もある中、Arrow Lakeリフレッシュではこの点も改善される見込みだ。発売時点でより良好なゲーミング最適化が施されることが期待されている。
インテルCPUロードマップにおける位置づけ
Arrow Lakeリフレッシュは、2026年に予定されているNova Lakeの前に登場するCPUとなる。現時点での発売時期は明確になっていないが、Nova Lakeの発売時期を考慮すると、2025年後半のリリースが有力視されている。
インテルのデスクトップCPU世代比較表は以下の通り
CPU世代 | プロセス | アーキテクチャ | コア/スレッド(最大) | ソケット | メモリ対応 | PCIe対応 | 発売年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Alder Lake (12th Gen) | Intel 7 | Golden Cove (P) / Gracemont (E) | 16/24 | LGA 1700/1800 | DDR5 / DDR4 | PCIe 5.0 | 2021 |
Raptor Lake (13th Gen) | Intel 7 | Raptor Cove (P) / Gracemont (E) | 24/32 | LGA 1700/1800 | DDR5 / DDR4 | PCIe 5.0 | 2022 |
Raptor Lake Refresh (14th Gen) | Intel 7 | Raptor Cove (P) / Gracemont (E) | 24/32 | LGA 1700/1800 | DDR5 / DDR4 | PCIe 5.0 | 2023 |
Arrow Lake (Core Ultra 200) | TSMC N3B | Lion Cove (P) / Skymont (E) | 24/24 | LGA 1851 | DDR5 | PCIe 5.0 | 2024 |
Arrow Lake Refresh (TBD) | TSMC N3B? | Lion Cove (P) / Skymont (E) | TBD | LGA 1851 | DDR5 | PCIe 5.0 | 2025 |
Nova Lake (Core Ultra 400?) | TBA | Coyote Cove (P) / Arctic Wolf (E) | 52/52? | TBA | DDR5? | PCIe 6.0? | 2026 |
モバイルラインナップとの整合性
Arrow Lakeリフレッシュが発売されれば、インテルのモバイルラインナップはさらに複雑化する可能性がある。すでに発表されているPanther LakeやWildcat Lakeと並行して、「Core Ultra 300シリーズ」(Arrow Lakeリフレッシュ)も選択肢として登場することになる。
特にGPUアーキテクチャに注目すると、Arrow LakeはAlchemistベースのGPUを搭載しているのに対し、Panther LakeはCelestialベースのGPUを採用予定。となれば、Arrow Lakeリフレッシュと同時期の製品間でGPUアーキテクチャが2〜3世代の差(Xe-LPG+を含めると)が生じることになる。
筆者のコメント
Arrow Lakeリフレッシュの復活は、現LGA 1851プラットフォームユーザーにとっては朗報と言えるだろう。特に最近になってArrow Lakeベースの「Core Ultra 200S」シリーズを購入したユーザーにとっては、アップグレードの余地が生まれたことになる。
ただし、主な改良点がNPU性能の向上にとどまるとすれば、AIワークロードを日常的に使用しないユーザーには大きなアピールポイントにはならないかもしれない。一方で、ゲーミング最適化が向上するという点は、現行モデルの課題を考えると重要な改善と言える。
特に興味深いのは、インテルがArrow Lakeリフレッシュに「Ultra」ブランドを適用するかどうかだ。「Core Ultra」はインテルの新しいAI対応CPUを示すブランドとして導入されたが、単なるリフレッシュモデルにもこの名称を使うのか、それとも別のブランディングを用意するのか。仮に「Core Ultra 300シリーズ」として登場するなら、消費者の混乱を招く可能性もある。
結論として、Arrow Lakeリフレッシュは大幅な革新というよりも、インテルがNova Lakeの準備を整えるための「つなぎ」的な位置づけと見るのが妥当だろう。ただし、ゲーミング最適化やNPU性能の向上など、特定のユースケースでは意味のある進化となる可能性がある。
※本記事はリーク情報に基づいています。正式発表までに内容が変更される可能性があります。
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