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【残念】小売店がRX 9070を定価より22%高い価格で販売、RX 9070 XTは799ドルが標準に – 「定価販売の約束」は早くも破られる【2025年3月最新情報】

AMDが先週「定価での販売」を約束したRadeon RX 9070/9070 XTグラフィックカードだが、実際の小売価格はMSRP(希望小売価格)を大きく上回る状況となっている。米国やイギリスの主要販売店では、エントリーレベルモデルでさえMSRPより約22%高い価格設定となり、RX 9070 XTに至っては799ドル(約12万円)が「標準価格」となっている実態が明らかになった。

約束された「定価販売」はわずか数日で消滅

The Vergeの調査によると、米国およびイギリスの主要小売店(Micro Center、Newegg、Overclockers UKなど)では、発売時にMSRPで販売されていたRX 9070シリーズの「ベースモデル」の価格が、すでに大幅に上昇している。現在ではMSRPでの在庫はほぼ皆無で、すべてのモデルが値上げされている状況だ。

具体的な価格上昇率は以下の通り

RX 9070 XT(MSRP: 599ドル)

  • 米国:11.7~21.7%上昇(+70~130ドル)
  • イギリス:14~17.4%上昇(+80~100ポンド)
  • 現在の標準価格:約799ドル(約12万円)

RX 9070(MSRP: 549ドル)

  • 米国:14.5~21.8%上昇(+70~80ドル)
  • イギリス:7.5%上昇(+40ポンド)
  • 現在の標準価格:約670ドル(約10万円)

特に注目すべきは、これらの価格上昇が「ハイエンド冷却システムを搭載した高級モデル」ではなく、PowerColorの「Reaper」、Sapphireの「Pulse」、XFXの「Swift」シリーズといった、従来は「エントリーレベル」「予算重視」として知られていたモデルで発生している点だ。これらはAMDの専属パートナーであり、本来はMSRPに近い価格設定が期待されていた企業だ。

名目上は「MSRP販売」は継続中だが…

調査によれば、Best BuyやMicro Centerなどの一部小売店では、依然としてXFX SwiftやGigabyte GamingなどのモデルがMSRPで表示されているものの、すべて「在庫切れ」状態となっており、再入荷の見込みも不明確だ。

これはAMDが先週「複数のベンダーが発売価格で販売する」と発表した内容と矛盾するものではないが、実質的には「入手不可能な定価」という状況になっている。AMDは当初、何枚のカードがMSRPで販売されるのか、また需要が高く供給が限られた場合にどのパートナーや小売店がMSRPを維持するのかについて具体的な情報を提供していなかった。

RTX 50シリーズも同様の問題:「幻のMSRP表示」の実態

The Vergeの調査では、NVIDIAのRTX 50シリーズにも興味深い現象が見られる。一部の米国小売店(Best Buy、Newegg、Micro Centerなど)は、GeForce RTX 5070、RTX 5070 Ti、RTX 5080の一部モデルをMSRPで表示し続けているが、これらも例外なく「在庫切れ」状態となっている。

つまり、AMDもNVIDIAも同様に「表示上はMSRPが存在するが、実際には入手不可能」という状況だ。ただし、表示価格を維持し続けるNVIDIAのアプローチと、エントリーモデルまで値上げするAMDパートナー企業の対応には明確な違いがある。

これが単に需給バランスの自然な結果なのか、あるいはNVIDIAが「少なくとも一部の製品では公式価格を維持する」という方針を持っているのかは不明だが、消費者にとっては「どちらも実質的には希望小売価格での購入は困難」という現実に変わりはない。

現在の実質的な市場価格

Tom’s Hardwareの調査によると、米国の主要オンラインストアでの現在の状況は以下の通りだ

  • Best Buy: RTX 5070カードが649~739ドルで在庫あり(「30ドル割引」と滑稽な表示をしているモデルも)、他はすべて在庫切れ
  • ASUS公式ストア: RX 9070 Primeが659ドルで在庫あり(すぐに売り切れる可能性大)、RTX 5070 Primeが549ドルで表示されているが実質的に入手不可能
  • Newegg: 現時点ですべてのモデルが在庫切れ
  • Amazon: 一部在庫あるが、多くが「新規セラー」からの出品で信頼性に懸念

この状況を考えると、22%の値上げでも実際には「現在オンラインで見つけられる中では良い方の価格」となっている可能性が高い。

なぜ値上げが発生するのか

小売店やAIBパートナー(グラフィックカードメーカー)がMSRPより高い価格で販売する理由には、以下のような要因が考えられる

  1. 需給バランスの不均衡: 需要が供給を大きく上回っている状況では、価格は自然に上昇する
  2. 利益率の向上: 特に初期出荷分を早く売り切った後は、追加供給分の価格を上げることで利益を最大化できる
  3. 店舗差別化: オンラインと実店舗で価格設定を分けている可能性
  4. 為替や物流コストの変動: グローバルな供給網における様々な変動要因の影響

AMDとそのパートナー企業は「十分な供給量を確保した」と発表していたが、実際の市場では依然として供給が需要に追いついていない状況だ。

市場への影響と消費者の選択肢

この状況は消費者にとって非常に厳しいものだ。特に以下のような影響が考えられる

  1. 価格性能比の劣化: 当初期待されていたコストパフォーマンスが大幅に低下
  2. 購買判断の複雑化: レビューや比較はMSRPに基づいているが、実際の購入時には大きく異なる価格状況に直面
  3. ブランド信頼性の低下: 「MSRP販売」の約束が実質的に守られていないことによる信頼低下
  4. 中古市場への影響: 新品の高騰により中古市場も価格上昇の可能性

現時点での選択肢としては、以下のような対応が考えられる

  1. 待機戦略: 供給が増加し価格が安定するまで待つ
  2. 旧世代製品検討: RX 7000シリーズなど、価格が安定している旧世代モデルへの注目
  3. 実店舗での探索: オンラインよりも実店舗の方がMSRP近辺で入手できる可能性がある
  4. RTX 5060/RX 9060シリーズ待ち: 4月に発売予定の、より手頃な価格帯の新モデルを待つ

筆者のコメント

AMDが発売前に「十分な供給量」「MSRP販売の実現」を約束していたことを考えると、今回の状況は明らかに期待外れだ。特に気になるのは、値上げが「ハイエンドカスタムモデル」ではなく「エントリーレベルモデル」でも発生している点だ。

PowerColor、Sapphire、XFXといったAMDの専属パートナーが、発売からわずか数日で大幅な値上げに踏み切ったことは、非常に残念だ。これらの企業は通常、AMDのMSRP戦略に従う傾向が強かったが、今回は異なる判断をしたようだ。

一方で、市場の現実を考えると、この値上げは「予想通り」とも言える。GPU市場は過去数年、需要過多と供給不足のバランスが崩れた状態が続いており、RTX 50シリーズでも同様の状況が発生していた。AMDもこの市場環境の中で生き残るために、現実的な判断をしたとも考えられる。

しかし、消費者の立場からは「MSRPという幻」が続く限り、市場への信頼は回復しないだろう。もはや「定価」という概念自体が形骸化しており、メーカー発表の価格が実質的に意味を持たない状況となっている。

理想的には、「高級カスタムモデル」と「スタンダードモデル」の明確な棲み分けがあり、後者がMSRPで安定供給されるべきだ。しかし現状では、すべてが「プレミアム価格」という歪んだ市場が形成されており、消費者の選択肢が著しく制限されている。

一縷の望みとしては、4月に控えるRTX 5060/RX 9060シリーズの発売により、市場全体の価格バランスが改善される可能性だ。より広範なユーザー層をターゲットとするこれらのモデルでは、メーカーも「実際に購入できる価格」を重視せざるを得ないだろう。

※本記事は2025年3月現在の情報に基づいています。市場状況は日々変化する可能性があります。

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