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【朗報】AMD Radeon RX 9070シリーズが快進撃 – 発売1週間でRTX 50シリーズ全体の販売数を上回り、アンダーボルト時にはRTX 5080さえ凌駕【2025年3月最新情報】

AMDが3月6日に発売した「Radeon RX 9070」シリーズが市場で絶好調の滑り出しを見せている。発売からわずか1週間でRTX 50シリーズ全体の販売数を上回ったという調査結果が出ただけでなく、アンダーボルト(低電圧化)するとRTX 5080をも上回るパフォーマンスを発揮することが判明した。長らくNVIDIAの後塵を拝してきたAMDが、ミドルレンジ市場で意表を突く躍進を見せている。

発売1週間でRTX 50シリーズ全体の売上を上回る

ドイツの大手テクノロジーメディア「ComputerBase」が実施した読者調査によると、Radeon RX 9070/9070 XTシリーズは発売からわずか1週間で、NVIDIAのRTX 50シリーズ全体(RTX 5090、5080、5070 Ti、5070)の累計販売数を上回ったことが明らかになった。

調査では4,200人以上が回答し、その中で約720人がRadeon RX 9070シリーズを購入できたと回答。これに対しRTX 50シリーズの購入者は合計でも約180人にとどまった。特に注目すべきは、調査時点でRTX 5070の購入者が0人だったことだ。

ComputerBaseの調査結果を分析したドイツの3DCenterによるグラフでは、以下のような購入状況が明らかになっている

  • RX 9070 XT購入者:約7.6%(約320人)
  • RX 9070購入者:約2.4%(約100人)
  • RTX 5090購入者:約1.2%(約50人)
  • RTX 5080購入者:約2.2%(約93人)
  • RTX 5070 Ti購入者:約0.8%(約34人)
  • RTX 5070購入者:0%(0人)

この結果は、AMDが十分な供給量を確保したことが大きな要因だ。NVIDIAのRTX 50シリーズは発売直後から深刻な供給不足に見舞われ、アメリカのMicroCenter全店舗でもRTX 5090の入荷数は「数百台」程度だったと報告されている。

一方で懸念材料も浮き彫りになった。調査回答者の約40%は「2025年にはGPUを購入する予定がない」と回答。さらに約19%は「購入する予定だったが興味を失った」と答えている。RTX 50シリーズとRX 9070シリーズの「偽装MSRP」(希望小売価格での実質的な入手困難)と限られた在庫が、市場全体への信頼を損なっている可能性が指摘されている。

アンダーボルトでRTX 5080をも上回る驚異のパフォーマンス

ドイツの著名なオーバークロッカーDer8auerが、PowerColor RX 9070 XT Red Devilを使ったテストで衝撃的な結果を公開した。アンダーボルト(定電圧化)設定を施すと、RX 9070 XTはNVIDIAのRTX 5080を上回るパフォーマンスを発揮したのだ。

Der8auerのテストでは、以下の結果が得られた

GPU平均FPS(Cyberpunk 2077・4K Ultra・レイトレなし)GPUクロック速度最大消費電力電圧オフセット電力ターゲット
RX 9070 XT(OC設定)66 FPS3.36 GHz358W-170mV110%
RX 9070 XT(標準設定)60 FPS2.90 GHz339W0mV100%
RTX 5080(標準設定)65 FPS2.61 GHz336W0mV100%

特筆すべきは、アンダーボルトによってむしろGPUクロックが上昇した点だ。電圧を下げることで熱の発生が抑えられ、ブースト機能がより効果的に働くようになったと考えられる。通常のOC(オーバークロック)ではクロック設定を高くしても実際の効果は限定的だったが、アンダーボルトすることで3.36GHzという驚異的なクロック速度を達成した。

このテスト結果は、「700-800ドル(約10.5-12万円)のRX 9070 XTが、1000-1200ドル(約15-18万円)のRTX 5080と同等以上のパフォーマンスを発揮できる」ことを示している。価格差を考慮すると、コストパフォーマンスでAMD製品が圧倒的に優位に立っていると言える。

RX 9070(非XT)も同様のポテンシャルを持つ

インドネシアのオーバークロッカーAlva Jonathanによるテストでは、ASRock RX 9070 Steel Legend(非XTモデル)も同様の傾向を示した。アンダーボルト設定と電力制限の増加(110%)により、標準設定の54 FPSから60 FPSへと約11%のパフォーマンス向上を達成。これはRTX 4070 Ti Superの46 FPSを大きく上回る結果だ。

GPU平均FPS(Cyberpunk 2077・4K Ultra・レイトレなし)GPUクロック速度最大消費電力電圧オフセット電力ターゲット
RX 9070(OC設定)60 FPS3.00 GHz270W-125mV110%
RX 9070(標準設定)54 FPS2.60 GHz244W0mV100%

さらに興味深いのは、電力を30%削減(-100mV)した状態でも50 FPSを記録し、パフォーマンスの90%を維持したことだ。これはRTX 4070 Ti Superの46 FPSを依然として上回っており、消費電力あたりのパフォーマンス(FPS/W)が30%向上したことになる。

特に優れているのは、アドバタイズされたブーストクロック(2.52GHz)から大幅に上回る2.95GHzまでクロックが上昇した点だ。これはRX 9070 XTと同様に、アンダーボルトによって熱問題が改善され、GPUのブースト機能がより効果的に機能した結果だと考えられる。

上級者向け機能に課題も

これらのアンダーボルトテストから、RDNA 4アーキテクチャのポテンシャルの高さが示された一方で、いくつかの課題も明らかになった。Der8auerによれば、手動でGPU周波数を変更しても効果が見られず、アンダーボルト以外のオーバークロック手法は現状では制限されているという。

また、メモリのオーバークロックも期待したほどの効果が得られないことが報告されている。メモリクロックを上げると実際の周波数は上昇するものの、ゲーム内パフォーマンスは低下する現象が確認された。これはGDDR6メモリに搭載されたエラー訂正機能が、不安定になったメモリからの読み取りエラーを修正するために追加の処理時間を要しているためと推測されている。

AMDは今後のドライバーアップデートでこれらの課題に対応する予定とみられるが、現時点では一般ユーザーにはアンダーボルト手法が最も効果的な性能向上策となっている。

ユーザーからの高い評価

ComputerBaseの調査では、RX 9070シリーズに対するユーザーの評価も明らかになった。
「AMDはRDNA 4とFSR 4でポジティブな驚きを与えたか?」という質問に対し
76.4%のユーザーが「RX 9070(XT)とFSR 4は予想以上に良い」と回答。
20.1%が「期待通り」と答え、「期待はずれ」という回答はわずか3.4%にとどまった。

また、「どちらのグラフィックカードを推奨するか?」という質問では

  • RX 9070(730ユーロ)vs RTX 5070(820ユーロ)の比較で、92.9%がAMD製品を選択
  • RX 9070 XT(850ユーロ)vs RTX 5070 Ti(1,100ユーロ)の比較では、91.8%がAMD製品を選択

この結果は、価格差を考慮した際のAMD製品の圧倒的な優位性を示している。単純な性能比較ではなく、「価格あたりの性能」という観点でユーザーの選択が大きく傾いていることが明らかとなった。

市場投入状況への評価

RX 9070シリーズの市場投入状況に関しても調査が行われ、「完全に上手くいった」(10.5%)と「期待を考慮すると十分良かった」(38.6%)を合わせると約半数が肯定的に評価。「素晴らしいとは言えないが、RTX 50シリーズよりは良い」という回答も44.3%あり、合計で93.4%のユーザーがNVIDIAの展開よりも良いと評価している。

しかし、実際の購入状況を見ると、RX 9070 XTの購入を希望しながら希望モデルや定価での入手ができなかったユーザーが18.8%、RX 9070でも同様の状況が5.8%存在している。これは、AMDの供給量がNVIDIAよりは良いものの、依然として需要に追いついていない状況を示唆している。

筆者のコメント

RX 9070シリーズの成功は、AMDのGPU事業において久々の朗報だろう。特に定電圧化時のパフォーマンスは驚異的で、従来のイメージを覆すものだ。通常、定電圧化はパフォーマンスを犠牲にして消費電力や発熱を抑える手法だが、RDNA 4では逆にパフォーマンスが向上する点が革新的だ。

この現象は「AMDが保守的な電圧設定をしている」ことを示唆しており、長期的な製品安定性を重視した設計思想が伺える。ユーザーにとっては「簡単な設定変更で無料の性能向上が得られる」という嬉しい状況だが、メーカーとしてはデフォルト設定でより攻めた設定にしても良かったのではないだろうか。

供給状況については、NVIDIAよりは大幅に改善しているものの、まだ十分とは言えない。特にMSRP(希望小売価格)での入手が依然として困難な状況は、改善の余地がある。それでも「購入できる可能性がある製品」という点で、RTX 50シリーズとの差は歴然としている。

今後の市場展開として注目すべきは、4月に控えるRX 9060シリーズとRTX 5060/Tiシリーズの投入だ。より広範なユーザー層をターゲットにした製品が、適切な価格と十分な供給量で市場に投入されれば、現在「購入を諦めた」層を再び取り込める可能性がある。そして何より、健全な競争環境が戻ることで、消費者にとってより良い選択肢が生まれることを期待したい。

※本記事の情報は、ComputerBase、3DCenter、Der8auer、Alva Jonathanらの公開情報に基づいています。

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