来週の正式発表を前に、AMD次世代GPU「Radeon RX 9070 XT」および「RX 9070」の初期ベンチマーク結果がGeekbenchデータベースにて流出した。RDNA 4アーキテクチャを採用する新世代GPUの性能は、期待されたほどの飛躍は見られない可能性が示唆されている。
流出したスペック詳細
リークされたGeekbenchの情報によると、RX 9070シリーズの主要スペックは以下の通り
RX 9070 XT
- コンピュートユニット:64基(4,096ストリームプロセッサ相当)
- 最大クロック:2,570MHz
- VRAM:16GB GDDR6
RX 9070
- コンピュートユニット:56基(3,584ストリームプロセッサ相当)
- 最大クロック:2,210MHz
- VRAM:16GB GDDR6
これらは以前から噂されていたスペックとほぼ一致しており、RX 9070 XTはNavi 48チップを完全有効化した構成と見られる。
ベンチマーク結果の分析
テスト環境としては、RX 9070 XTはRyzen 7 9800X3DとROG Crosshair X870E Heroマザーボードの組み合わせ、RX 9070はRyzen 7 9700XとMSI B650 Gaming Plus Wi-Fiマザーボードという異なる構成で検証されている。
Geekbench 6の結果(Vulkan/OpenCL)
GPU | Vulkan | OpenCL | 9070 XTと比較 Vulkan | 9070 XTと比較 OpenCL |
---|---|---|---|---|
RX 9070 XT | 177,395 | 179,178 | 100.00% | 100.00% |
RX 9070 | 158,520 | 140,842 | 89.36% | 78.60% |
RX 7900 XTX | 235,279 | 212,081 | 132.63% | 118.36% |
RX 7900 XT | 206,494 | 186,399 | 116.40% | 104.03% |
RX 7800 XT | 155,488 | 139,983 | 87.65% | 78.13% |
RTX 5070 Ti | 228,576 | 229,140 | 128.85% | 127.88% |
RTX 4070 Super | 178,982 | 192,378 | 100.89% | 107.37% |
この結果からいくつかの重要な点が浮かび上がる
- RX 9070 XTはRTX 4070 SUPERとほぼ同等の性能(Vulkanで同等、OpenCLでやや劣る)
- RTX 5070 Tiと比較すると、約22-28%性能が劣る
- 前世代のRX 7800 XTと比較して約28%の性能向上
- RX 9070はRX 7800 XTとほぼ同等の性能
- 現行フラグシップのRX 7900 XTXには大きく劣る(約18-32%の差)
性能に関する考察
今回のベンチマーク結果は、1月に流出した「RTX 4080 SUPER相当の性能を持つ」という情報からは大きく外れている。ただし、いくつかの重要な注意点がある
- 合成ベンチマークの限界:Geekbenchはあくまで合成ベンチマークであり、実際のゲーム性能とは相関しないことが多い
- 初期ドライバの影響:発売前のドライバでは最適化が不十分である可能性が高い
- RDNA 4の特性:新アーキテクチャが合成ベンチマークで不利に測定される可能性
- 認証の信頼性:正規のレビュワーによる誤公開とされるが、確証はない
特にRDNA 4アーキテクチャは、レイトレーシング性能の向上とAI/ML機能の強化に重点を置いており、これらの性能は従来の合成ベンチマークでは適切に測定できないことに留意する必要がある。
AMDの市場戦略と価格予想
初期のベンチマーク結果が期待を下回っているように見えることから、AMDは価格戦略で優位性を確保することを目指す可能性が高い。RTX 5070 Ti(749ドル)やRTX 4070 SUPER(599ドル)との競争を考慮すると
- RX 9070 XT:549-599ドルの価格帯が予想される
- RX 9070:449-499ドルの価格帯が予想される
ただし、NVIDIAのRTX 5070とRTX 5060シリーズの発売延期が報じられており、AMDがこの状況を利用して価格を高めに設定する可能性も否定できない。
今後の展望
AMDは2月28日に正式発表を予定しており、3月上旬に製品が市場に投入される見込みだ。この発表では、以下の点に注目が集まる
- 正式スペック:最終的なクロック周波数やTDP値
- FSR 4:AMDの新しいアップスケーリング技術の詳細
- レイトレーシング性能:前世代からの改善度
- 価格設定:NVIDIA RTX 50シリーズとの競争ポジション
- 供給状況:実際の店頭在庫の見込み
特にRDNA 4世代でのレイトレーシング性能の向上は、AMDにとって重要な要素となる。前世代ではNVIDIAとの差が大きかったこの分野での進化が、実際のゲーム性能に大きく影響する可能性がある。
筆者のコメント
今回流出したベンチマーク結果は、一見するとAMDファンにとって期待外れに思えるかもしれない。特に1月に噂された「RTX 4080 SUPER相当」という情報と比較すると、大きな乖離がある。
しかし、合成ベンチマークの結果から実際のゲーム性能を予測することは非常に困難だ。特にRDNA 4のような新アーキテクチャでは、既存のベンチマーク手法が適切に性能を測定できないことも十分考えられる。
また、NVIDIA RTX 50シリーズの深刻な供給不足と価格高騰を考慮すると、たとえRTX 5070 Tiより性能が低くても、適切な価格設定と十分な供給量が確保できれば、RX 9070 XTは市場で十分な競争力を持つ可能性がある。
最終的な判断は、2月28日の正式発表と、それに続く第三者による実ゲームベンチマークの結果を待つべきだろう。RDNA 4アーキテクチャの真の実力は、様々なゲームタイトルでのパフォーマンスと価格性能比で判断されることになる。
※本記事はGeekbenchデータベースに掲載された非公式情報に基づいています。最終的な製品性能は大きく異なる可能性があります。正式情報は2月28日のAMD発表をお待ちください。
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