最新アップデートでも性能は改善せず、むしろ一部環境では性能低下も
AMD幹部は「ひどい製品」と酷評、Ryzen 7 9800X3Dの品薄は予想以上の需要が原因と説明
IntelがArrow Lakeの性能問題を解決するとして提供した修正プログラムが、期待された効果を上げていないことが判明した。Tom’s Hardwareの詳細なテストによると、むしろ一部の環境では性能が低下する事態も確認されている。
期待外れの修正内容
IntelはCES 2025で、最大25%の性能向上を謳う修正プログラムを発表。しかし、この数字は極めて限定的な条件下でのものであり、実際のゲーム環境での性能向上はほとんど見られないことが明らかになった。
テスト結果の詳細
- ASUSマザーボード:修正後に約3%の性能低下
- MSIマザーボード:3.7%の性能向上も、未修正のASUS環境より1.9%低い性能
- 前世代のCore i9-14900Kとの差は更に拡大
特筆すべきは、Windows更新による恩恵を最も受けたのが前世代の14900Kだったという点だ。これにより、Arrow Lakeと前世代との性能差は更に広がることとなった。
AMDの反応と市場への影響
この状況について、AMDの幹部Frank Azor氏は「競合が酷い製品を作ったことで、我々の予想以上に需要が高まった」と述べている。実際、ゲーミング性能ではRyzen 7 9800X3DがArrow Lakeに対して約40%もの大きなリードを保持している。
性能比較の実態
- Ryzen 9 9950X:修正後のCore Ultra 9 285Kより6.5%高速
- Ryzen 7 9800X3D:約40%の性能優位を維持
- Core i9-14900K:Windows更新により7%の性能向上、285Kとの差は14%に拡大
問題の本質
Intelの修正は、以下のような問題を抱えている
- 特定の環境でのみ効果を発揮
- 基本的な性能問題は未解決
- マーケティング主張との大きな乖離
- 競合や前世代モデルとの差が拡大
市場への影響
この状況は、ハイエンドゲーミングCPU市場でのAMDの優位性を更に強固なものとしている。AMDによると、9800X3Dの供給不足は予想を大きく上回る需要によるもので、生産能力の増強を進めているという。
まとめ
Intelの修正は、マーケティング上の主張を裏付けるには程遠い結果となった。むしろ、Windows更新による恩恵を前世代モデルの方が大きく受けたことで、世代間の性能差が更に広がるという皮肉な結果となっている。
ゲーミング用途では、Arrow Lakeは前世代の14900Kにも及ばず、AMDのX3Dモデルには大きく引き離されている状況が続いている。2025年のゲーミングCPU市場は、引き続きAMDが優位に展開していくことが予想される。
※本記事はTom’s HardwareのテストレポートとAMD幹部の発言に基づいています。
筆者の本音
AMD Zen2の登場以降、Intelの行動には首を傾げざるを得ない状況が続いている。
合法性すら疑わしい誇大広告や提灯レビューには、業界関係者として正直辟易していた。
確かに12世代Coreプロセッサは、久々にAMDと真っ当に戦えた製品だった。しかし、最大142Wでありながらマルチスレッドで圧倒的な性能を見せたRyzen 9 5950Xには、実用性能で及ばずゲーミング性能に関しても3DV-Cascheを搭載したRyzen7 5800X3Dに敗北を喫した。
13世代、14世代に至っては、12世代の設計を基にキャッシュ増量と極限的なクロック向上で力技の対抗を試みた。Ryzen 7000シリーズには一応食らいついたものの、特にCore i9は定格253W(CPU劣化問題発覚以前はデフォルトで電力無制限仕様)という常軌を逸した電力設定で、360mm簡易水冷ですら瞬時に100℃に達するサーマルスロットリング地獄という惨状だった。有識者の間では「ベンチマーク詐欺」と揶揄される始末である。
今回のArrow Lakeでは、ついにIntelのプライドも崩壊。TSMCの最新N3Eプロセスを採用せざるを得なくなったが、それでもAMDのN4Pプロセス製品にすら性能で劣る状況は、もはや設計力の根本的な問題を示唆している。
次世代のAMD Zen 6では、コンシューマ向けでも最大32コアが予想されている。正直なところ、Intelに勝利への道筋は見えない。歴史は繰り返すとはいえ、かつてのIntel帝国の復活は、もはや夢物語なのかもしれない。
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