NVIDIAは新世代のRTX 5070について、「RTX 4090と同等の性能」を謳っている。
しかし、この表現には重要な注釈が必要だ。発表内容を詳しく分析すると、この性能比較には大きな前提条件が存在することが分かる。
目次
ラスタライズ性能で見える圧倒的な差
実際のRTX 5070は、GPUの基本性能であるラスタライズ性能で見ると、RTX 4090との間に大きな差が存在する。CUDAコア数はRTX 4090の16,384基に対してわずか6,144基、理論性能も82.6 TFLOPSに対して30.9 TFLOPSと、約37%程度の性能しかない。
実質的には、RTX 4070 Tiを上回る程度の性能と見るべきだろう。
メモリ構成が示す現実的な性能
メモリ構成を見ても、RTX 5070の位置づけは明確だ。12GB VRAMという容量はRTX 4090の半分であり、192bitというバス幅も同様に半分となっている。確かにGDDR7の採用により帯域幅は672GB/sまで向上したが、4K解像度での高負荷ゲーミングには制限となる可能性が高い。
DLSS 4が示す真の性能差
DLSS 4の性能向上効果は確かに印象的だ。
マルチフレーム生成技術により、DLSS 4対応ゲームにおいては確かにRTX 4090に迫る、あるいは上回る性能を発揮することもある。しかし、これはあくまでもDLSS 4に対応したゲームに限定された話だ。フレーム生成機能をオフにしたり、非対応ゲーム、特にVRゲームなどでは、素の性能差が如実に表れることになる。
新世代GPUの進化と限界
RTX 5000シリーズは、確かに多くの進化を遂げている。
AI処理性能とレイトレーシング性能は大幅に向上し、PCIe Gen5対応やGDDR7採用による帯域幅の向上など、技術的な進歩は明らかだ。さらに、AIを活用したテクスチャー圧縮技術により、VRAM使用量の削減も可能となった。
しかし、これらの進化をもってしても、VRAM容量の重要性は変わらない。どれだけAI技術でVRAM使用量を最適化できたとしても、VRAM容量自体がGPUの性能指標となることは変わらないのだ。
グラフィックボードを正しく理解するために
グラフィックボードの性能を正確に理解するためには、以下の3要素に注目する必要がある
- 素の描画性能(ラスタライズ性能)
- メモリバス幅
- VRAMの速度と容量
これらの基本性能で見ると、RTX 5070は「RTX 4070 TiのVRAM強化版」という位置づけが最も適切だ。
まとめ:賢明な選択のために
RTX 5070は、確かに優れたGPUである。しかし、「RTX 4090と同等」という表現は、多くのユーザーを誤解させる可能性がある。実際の用途に応じた冷静な判断が必要だ。
今後登場するであろうSuper等の強化モデルでは、VRAM容量の増加も期待される。NVIDIA製品の歴史を見ても、後発モデルでの仕様向上は十分にあり得るシナリオだ。
※この解説は2025年1月時点の情報に基づいています。
※性能の評価は、正式なベンチマーク結果により変更される可能性があります。
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