PCショップ店員の立場から、PCケースの信頼性について詳しく解説していく。 PCケースは各パーツを収納し、適切な冷却環境を提供する重要なパーツである。そのため、信頼性の高いものを選ぶことが非常に重要だ。
まずは、PCケースメーカーをTier別に分類し、それぞれの特徴を見ていこう。
【S Tier】
1. Fractal Design(フラクタルデザイン)
静音性と冷却性能のバランスが秀逸なメーカーだ。
Define 7シリーズは防音材の質が高く、静音性能は群を抜く。Meshifyシリーズは冷却重視のメッシュフロントだが、フィルターの目が細かく、ホコリの侵入を最小限に抑えられる。特にTorrent Compactは4090でも余裕で搭載可能な冷却性能を持つ。
付属ファンの品質も高く、他社のように換装の必要がない。ネジ類や各部の作りも丁寧で、長期使用での経年劣化も少ない。ケーブルマネジメントのスペースも十分で、背面20-25mmの余裕があるため、配線が苦手でも綺麗にまとめやすい。
価格相応の品質はあるので買って損はないメーカーだ。
Fractal Design North Charcoal Black
2. Lian Li(リアンリー)
O11シリーズで一気に人気になった台湾メーカーだ。アルミパネルの加工精度は業界一。
特にO11 Dynamic EVO は、上下逆転可能な設計や着脱可能なマザーボードトレイなど、意欲的な機能が満載。デュアルチャンバー構造により、メイン室の冷却効率も高い。
最近のLancoolシリーズも優秀で、特にLancool III はGPUの縦置き対応やツールレス設計など、使い勝手が良い。ただし、3スロット以上のGPUを縦置きする場合は、純正ライザーケーブルを推奨する。安物ライザーだとPCIe 4.0での不具合が出やすい。
見た目重視なら o11 Vison 一択だ。
LIANLI O11 Vision Compact White
3. be quiet!(ビークワイエット)
Silent Baseシリーズは、その名の通り静音性に特化したケースだ。
防音材の質が高く、付属ファンの静音性も優秀。特にSilent Base 802は、防音パネルとメッシュパネルが付属しており、用途に応じて切り替えられる。Dark Base Proシリーズは、マザーボードトレイが反転可能で、左側設置でも見栄えが良い。
ただし、完全防音設計のため、ハイエンドGPUを使う場合は、メッシュパネルの使用を推奨。価格は高めだが、作りの丁寧さは値段以上の価値がある。
be quiet! DARK BASE PRO 901 Black
【A Tier】
1. NZXT(エヌゼットエックスティー)
H5 Flow やH7 Flowなど、最近のメッシュモデルは冷却性能も十分。特にCAMソフトウェアによるファン制御は優秀で、静音性と冷却性能のバランスが取りやすい。ケーブルマネジメントも秀逸で、背面の配線スペースも広い。
ただし、密閉型のEliteシリーズは冷却が厳しいので注意が必要だ。君等の想像する5倍くらい熱くなる。
4090クラスのGPUを使用する場合は、Flowシリーズ一択だ。
ちなみにだが、Mini-ITX向けのH1シリーズは、v2でライザーケーブルの問題が解決され今では安心して使える。
かなり組みやすいので、初心者にもおすすめだ。
2. Corsair(コルセア)
5000Dや4000Dは、無難に使える実力派ケースだ。
特にAirflowシリーズは冷却性能が高く、上面360mm、前面360mmの水冷にも対応。ケーブルマネジメントも良好で、初心者でも綺麗にまとめやすい。
ただし、付属ファンはやや心もとないので、別売りのマグレブファンへの換装を推奨する。
iCUEでのファン制御は優秀だが、他社製品との相性が悪く、RGB制御は基本的にCorsairで統一したほうが良い。
いや、Corsair製品を使うなら全てCorsairで統一しろ。
CORSAIR 3500X ARGB Tempered Glass
3. ANTEC(アンテック)
PCケース市場の古参メーカーで、豊富な実績を持つ。
P120 CRYSTALは放熱性能と見た目のバランスが良く、工具不要の組み立ても特徴的だ。
DF700 FLUXは独自の5基ファン構成で、GPUの冷却も優秀。NXシリーズはコスパが良く、特にNX700はメッシュフロントで必要十分な冷却性能を持つ。
最近はCorsairやLian Liほどの話題性はないものの、安定した品質は健在。特に電源メーカーとしての経験を活かし、電源マウント部の設計が秀逸だ。ケーブルマネジメントこそ最新のトレンドには若干劣るが、実用面での完成度は高い。価格も手頃で、特にセール時は魅力的な選択肢となる。
コスパ重視のピラーレスが欲しいなら CX200M RGB ELITE、Constellation C8をおすすめする。
【B Tier】
1. Cooler Master(クーラーマスター)
HAF 500は久々の当たり製品で、冷却性能は申し分ない。
特に前面200mmファンは風量が多く、GPUの冷却に効果的。
NR200シリーズはMini-ITXケースの定番として人気が高い。
ただし、細かい作りは他社に一歩譲る。特にケーブルマネジメントのスペースが狭く、太いケーブルの取り回しに苦労することも。
それでも価格の安さは魅力で、セール時は特に狙い目だ。
Cooler Master Qube 500 Flatpack Black
2. MSI(エムエスアイ)
新参メーカーながら、MPG VELOX 100はケーブルマネジメントが秀逸。背面に配線用の溝があり、初心者でも綺麗にまとめやすい。MAGシリーズは価格を抑えつつ、必要十分な機能を備える。
ただし、付属ファンの品質はやや劣る。交換を視野に入れるなら、最初からFractal Designを選ぶ方が良いかもしれない。
PCケース選びの重要なポイント
最近のPCケース選びで最も重要なのは、実は4090などの大型GPUへの対応だ。長さ340mm、厚さ4スロット近い巨大カードが増えており、ケースの選択肢が限られる。特にTorrent、O11D EVO、HAF 500あたりが安心できる選択肢となる。
また、電源ユニットの奥行きにも注意が必要だ。ATX 3.0対応の電源は奥行きが長いものが多く、ケース側の制限と干渉しやすい。ATX 3.0以降の規格に対応している電源は750W以上の容量を持つ製品が多く、特にMini-ITXケースでは要確認だ。
最近のCPU冷却でも重要なポイントがある。特にIntelの第13・14世代のK/KFシリーズCPUは、200W以上で動作させる場合、空冷では冷却が厳しい。13900K/KFや14900K/KFを本来の性能で使いたい場合、360mm規格の簡易水冷が必須と考えていい。そのため、ケース選びでは360mm水冷ラジエーターの搭載可否も重要なチェックポイントとなる。特に上面と前面の両方に360mmラジエーターが付けられるケースなら、将来的なカスタム水冷への拡張性も確保できる。
結論として、S Tierのメーカーなら間違いないが、用途に応じてA TierやB Tierでも十分な選択肢となる。特に静音性を重視するならFractal DesignやBe Quiet!、見た目と拡張性を重視するならLian Li、シンプルさを求めるならNZXTがおすすめだ。予算が厳しければCooler Masterの上位モデルも検討に値する。
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