電源ユニットの信頼性 – 選び方のコツとTier別おすすめ製品【2024年12月更新】

PSU

PCショップ店員の立場から、電源ユニットの信頼性について詳しく解説していく。 電源ユニットはパソコンの全てのパーツに電力を供給する重要なパーツである。そのため、信頼性の高いものを選ぶことが非常に重要だ。

まずは、電源ユニットメーカーをTier別に分類し、それぞれの特徴を見ていこう。

【S Tier】

1. Seasonic(シーソニック)

電源ユニットの設計・製造を一貫して手がける数少ないメーカーの一つだ。特に電圧安定性は業界随一で、プラチナやチタン認証でも本当の実力を持っている。PRIME、FOCUS、COREの3シリーズ展開だが、実はCOREでも十分な品質がある。ただし、4090向けの12VHPWRケーブルは他社より太くて取り回しが悪い。日本国内の保証対応は優秀で、故障率も極めて低い。価格は高めだが、その価値は十分にある。

FOCUS-GX-850 ATX3.0 850W SSR-850FX3

FOCUS GX-750 ATX 3.0 SSR-750FX3

2. Super Flower(スーパーフラワー)

老舗の電源専業メーカーで、実は多くのメーカーへのOEM供給も手がけている。特に、EVGAの電源ユニットはSuper Flower製だったことで有名だ。LEADEXシリーズの電圧安定性は素晴らしく、プラチナやチタン認証でも本来の実力を持っている。マルチレール/シングルレールの切り替えも可能で、上級者向けの機能も充実している。

ただし、日本国内での流通量は少なめで、価格も安定しない。また、保証対応は代理店経由となるため、やや時間がかかる可能性もある。それでも、電源の設計・製造の両方を手がける数少ないメーカーの一つとして、その実力は確かだ。特にLEADEX Platinumは、電圧安定性ではSeasonicと互角の性能を持つ。Amazonでたまにセール品が出るので、そのタイミングで購入するのがおすすめだ。

SUPERFLOWER ATX3.1準拠PC電源 LEADEX III GOLD 1300W

SUPERFLOWER ATX3.0/3.1対応 PC電源 LEADEX VII PLATINUM PRO 1000W WT

3. FSP(フォートロン)

実は多くのメーカーの電源ユニットのOEM製造を請け負っている老舗メーカーだ。自社ブランドではHydroシリーズが特に優秀で、静音性が高く、電圧も安定している。価格もSeasonicやCorsairより1万円前後安いのが魅力。玄人志向やCyberPowerなど、他社ブランドの電源でもよく採用されており、その信頼性の高さが窺える。ただし、プラグイン式のケーブルの相性には若干クセがあり、交換用の入手もやや面倒なのが唯一の難点だ。

FSP 80+ BRONZE認証 ATX電源 650W[ HA650 ]

FSP エフエスピー 80 PLUS GOLD 認証 ATX3.0 PCIe Gen.5 対応 フルモジュラー ATX 電源 Hydro G PRO ATX3.0(PCIe5.0) 1000W [ HG2-1000.GEN5 ]

FSP エフエスピー 80PLUS Platinum認証・フルモジュラー方式 ATX3.0規格 PCIe5.0対応1200W電源 [ HYDRO PTM PRO 1200W ATX3.0 PCIe5 ]

4. CWT(チャネルウェル)

電源ユニットのOEM生産で世界最大手の一つだ。
Corsair、MSI、be quietなど、多くの有名メーカーの電源を製造している。特にCorsairのRMxシリーズは、CWTの技術力の高さを示す好例だ。

実は、あなたが使っている電源も、CWT製である可能性が高い。
Corsair RM850xやMSI MPG A850Gなどのハイエンドモデルは、ほぼ全てCWTの製造によるものだ。

【A Tier】

1. Corsair(コルセア)

CWTやGreat WallなどのOEMを使いながら、独自の品質管理で高い信頼性を確保している。特にRMxシリーズは、電圧安定性と静音性のバランスが秀逸だ。また、ケーブルの追加購入も容易で、スリーブケーブルも純正で入手可能なのが魅力。iCUEで電源監視もできるが、正直言って他社製品と併用すると相性が悪いので、Corsairで統一するのがおすすめだ。

CORSAIR RM850x

CORSAIR RM850e

CORSAIR RM1000e

2. be quiet!(ビークワイエット)

FSPやCWTなどの優秀なOEMを採用しつつ、独自の静音設計で人気を集めている。Dark Powerシリーズは高価格帯だが、実はPure Powerでも十分な性能がある。特筆すべきは静音性で、ファンの回転ノイズがほとんど気にならない。日本国内でのサポート体制も整っており、故障時の対応も早い。

be quiet! 80PLUS Titanium電源 850W フルプラグイン DARK POWER 13

3. Fractal Design(フラクタルデザイン)

SeasonicのOEMを採用し、高い信頼性を誇るメーカーだ。Ion+シリーズはPrimeプラットフォームをベースにしており、Seasonic直販より1万円ほど安い価格設定が魅力。特筆すべきは付属ケーブルの質の高さで、取り回しのしやすさは群を抜いている。保証も7年と長く、サポート対応も安心できる。

Ionシリーズは、FOCUSプラットフォームがベースだが、これも十分な性能がある。ケースとの同時購入で割引があることも多く、コストパフォーマンスは優秀だ。ただし、ATX 3.0対応モデルはまだ種類が少ないので、4090ユーザーは注意が必要だ。

Fractal Design Ion+ 2 Platinum 860W

4. MSI(エムエスアイ)

CWTのプラットフォームを採用しているが、独自の品質管理で安定性を高めている。特にMPGシリーズは電源容量のわりにコンパクトなのが特徴的だ。マザーボードメーカーならではの電源設計のノウハウが活かされており、過負荷保護や電圧安定性は特に優秀。さらに、保証期間は7年と長く、万が一の際の対応も極めて早い。

ただし、電源監視ソフトはまだ発展途上で、機能的にはCorsairのiCUEに一歩譲る。その分、価格は抑えめなので、RGB制御にこだわらないなら十分な選択肢となる。特に同社のマザーボードとの組み合わせでは、安定性は折り紙付きだ。個人的には、A1000GやA850Gあたりが特にコスパが良いと思う。

MAG A750GL PCIE5

MAG A850GL PCIE5

NZXT(エヌゼットエックスティー)

Seasonic製のプラットフォームをベースに、独自のデザインを加えたC-シリーズが主力だ。上位モデルはPRIMEプラットフォームがベースとなっており、電圧安定性は本家と遜色ない。特筆すべきは付属ケーブルの質の高さで、スリーブ加工が美しく、取り回しも容易だ。ただし、価格はSeasonicより1万円ほど高めで、ATX 3.0対応モデルもまだ少ない。ケースと同時購入でセットディスカウントがあることも多く、見た目にこだわるユーザーなら検討の価値はある。

NZXT C1200

NZXT C1500

【B Tier】

1. Thermaltake(サーマルテイク)

CWTやGreat Wallなど、複数のOEMを採用している。特にToughpowerシリーズは安定感があるが、品質にはやや波がある。価格は安めだが、できれば上位シリーズを選びたい。最近のRGBファン搭載モデルは派手すぎて、人を選ぶかもしれない。

Thermaltake Smart Pro 600W 80PLUS Standard認証

Thermaltake TOUGHPOWER GT 850W ATX 3.1/PCI Express 5.1対応 80PLUS GOLD

2. ENERMAX(エナーマックス)

かつての電源ユニットの名門メーカーだ。特にMAXREVOシリーズは電圧安定性が高く、独自設計の「トワイスターベアリング」ファンは耐久性に優れる。ただし、最近はCWTなどへのOEM依存が増えており、以前ほどの独自色は薄れてきている。Revolution D.F.シリーズは手堅い選択だが、価格がやや高めなのが気になるところだ。国内サポートは安定しているので、セール時なら検討の価値はある。

ENERMAX PlatiGemini 1200W、ATX 3.1 & ATX12VO規格、PCIe 5 600W 12V-2×6コネクタ

3. 玄人志向

FSP製のプラットフォームを採用し(時代やモデルにより異なる場合がある)、価格を抑えた日本市場向けブランドだ。KRPW-GKシリーズは80PLUS Gold認証で、価格の割に優秀な性能を持つ。特に4070Ti以下のミドルレンジGPUなら十分な安定性がある。3年保証だが対応は早く、国内サポートも安心できる。ケーブルの取り回しは他社より劣るが、セール時は上位メーカーの半額程度で手に入るため、コスパ重視なら十分アリだ。

KRPW-BK650W/85+

KRPW-L5-500W/80+/REV2.0

KRPW-GA850W/90+

結論

電源選びで最も重要なのは、実は保証期間とサポート体制だ。故障率自体は非常に低いが、一旦故障すると全てのパーツに影響が及ぶ可能性があるからだ。S TierやA Tierのメーカーなら、まず間違いないだろう。ただし、B Tierのメーカーでも、適切な容量で使用する限り、十分な信頼性を得られる。

最近の電源選びで特に注意したいのが、RTX 4090などの高性能GPUへの対応だ。単に容量だけでなく、12VHPWR(12V 2×16)ケーブルの有無やATX 3.0対応の確認が重要になってきている。電源は5年以上使用するパーツなので、将来性を考えて選ぶことをおすすめする。

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