歴史から見る真実の対決
2017年から2024年まで、IntelとAMDの戦いは、PCの歴史を大きく変えてきた。その変遷を追いながら、現在の選択に活かせる知見を探っていこう。
2017年:AMDの復活と新時代の幕開け
2017年、AMDはRyzen 7 1800Xで市場に復帰した。
Intel Core i7-7700Kとの戦いでは、シングルコア性能こそIntelが優位を保ったものの、8コア16スレッドという当時としては革新的な仕様により、マルチコア性能で圧倒的な差を見せつけた。主流帯でもRyzen 5 1600Xが、4コア4スレッドのCore i5-7600Kに対し、6コア12スレッドという余裕の構成で価格性能比での完勝を果たしている。特にストリーミングやマルチタスクでの優位性は顕著だった。
2018年:Intelの反撃とAMDの堅持
翌2018年、IntelはCore i7-8700Kで6コア12スレッドまで強化し、ゲーミング性能での優位を確保。しかしRyzen 7 2700Xは8コア16スレッドを維持し、マルチタスク性能での強みを保った。主流モデルでもIntelはCore i5-8600Kを6コア6スレッドに進化させて競争力を回復したが、Ryzen 5 2600Xの6コア12スレッドには重負荷作業で及ばず、価格性能比でもAMDの優位は変わらなかった。
2019年:7nmプロセスによるAMDの躍進
2019年は転換期となる。AMDはRyzen 9 3950Xで7nmプロセスを採用し、Intel Core i9-9900Kに対して圧倒的な優位を確立。ついにシングルコア性能でも互角以上となり、マルチコア性能では圧倒的な差をつけた。主流帯でも8コア16スレッドを持つRyzen 7 3700Xが、8コア8スレッドのCore i7-9700Kを性能面で圧倒。特に消費電力効率の差は歴然としていた。
2020-2021年:完全なる逆転
2020年、IntelはCore i9-10900Kでコア数を増やして対抗を試みるも、消費電力の増大が致命的となった。続く2021年、AMDはZen 3アーキテクチャ採用のRyzen 9 5950Xで、さらなる進化を遂げる。Intel Core i9-11900Kは8コア16スレッドに後退する一方、AMDは16コア32スレッドで圧倒的な差を見せつけた。
2022-2024年:新技術競争と世代交代
2022年、IntelはEコアを導入したCore i9-12900Kで再起を図る。
電力制限を解除した際のピーク性能ではRyzen 9 5950Xと互角以上の性能を発揮したが、高い消費電力と初期不具合、ヒートスプレッダの歪みなど、多くの課題を抱えていた。一方AMDは3Dキャッシュ技術を投入したRyzen 7 5800X3Dで、特にゲーミング性能で圧倒的な優位を確立した。
2023年、IntelはEコアをさらに増強したCore i9-13900Kで対抗するも、AMDの5nmプロセス採用Ryzen 7000シリーズには実効性能で及ばなかった。特にBTOなどでよく見られる65W制限下では、本来の性能を発揮できないという課題が顕在化した。
2024年に入り、IntelはCore i9-14900Kを投入するも実質的な13世代のリネームに留まる。注目すべきはCore i7-14700KでEコアを強化したが、これによってフラッグシップi9の存在意義が薄れる結果となった。さらにCore Ultra 200シリーズではソフトウェアの相性問題やゲーミング性能の低下、SMT無効化によるマルチ性能の低下など、数々の課題が浮き彫りとなっている。
対するAMDは4nmプロセスを採用したRyzen 9000シリーズを投入。
シングルコア性能でIntelに完全に追いつき、マルチコア性能では圧勝する状況を確立。特にゲーミングではRyzen 7 9800X3Dが圧倒的な性能を示し、クリエイター向けではRyzen 9 9950Xが安定した高性能を実現している。Intelが製造をTSMCに委託し始めたことでコスト面での優位性も確保しており、総合的な優位を確立している。
現状分析と展望
2024年現在、AMDは製造プロセスの微細化とアーキテクチャの革新、3Dキャッシュなど独自技術の成功により、全面的な優位を確立している。
対するIntelは、高い消費電力要件やプラットフォームの安定性問題、さらにTSMCへの製造委託による製造コスト増大など、多くの課題を抱えている。
実用面での選択において、AMDは予算重視のRyzen 5からハイエンドのRyzen 9まで、用途に応じた最適な選択肢を提供している。特にゲーミング用途ではX3Dモデルが圧倒的な性能を誇り、クリエイター向けではRyzen 9シリーズが安定した作業環境を提供している。
IntelはCore Ultra 200シリーズで巻き返しを図るものの、現時点では特別なユースケースを除いて、AMDの選択が賢明と言える状況が続いている。
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