2025年8月、グラフィックスカード市場が、かつてない熱狂と混乱の中にある。絶対王者NVIDIAが、新世代GPUの「大幅値下げ」に踏み切るという、異例の事態が発生したからだ。
これは、AMDとの熾烈な新世代戦争が、新たな局面を迎えていることの証左に他ならない。しかし、価格の変動が、そのまま製品の価値に結びつくわけではない。値下げされたモデル、価格を維持する競合モデル、そしてその陰に隠れた高コストパフォーマンスモデル。選択肢は、より複雑さを増している。
本記事は、この混沌とした市場を冷静に分析し、価格と性能の最新データから「今、本当に買うべき一枚」を炙り出す。スペック表の裏に隠された各モデルの真の実力と、価格競争の裏でうごめくメーカーの戦略までを読み解き、あなたの最適な選択へと導く。
目次
GearTuneでの総合コストパフォーマンス・ランキング
始めに、本稿における総合的な結論を以下の表に示す。これは、各価格帯における製品を詳細に分析し、コストパフォーマンスの観点から推奨度が高い順に並べたものである。
総合順位 | GPUモデル | 最新価格(円) | コメント |
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1 | AMD RX 9060 XT 16GB | 59,300 | 5万円台で他の追随を許さない圧倒的なコストパフォーマンスを誇る。 |
2 | AMD RX 9070 XT | 108,500 | アッパーミドルクラスの王者。性能と価格のバランスが極めて高い。 |
3 | AMD RX 7600 | 31,980 | 3万円台前半という価格で、フルHD環境における優れたゲーミング性能を実現。 |
4 | NVIDIA RTX 5070 Ti | 13,4980 | 競合製品への対抗による価格改定が奏功し、NVIDIA製GPUの中では高い競争力を持つ。 |
5 | AMD RX 9060 XT 8GB | 44,800 | VRAM容量が8GBという点が許容できれば、5万円以下のクラスでは最高の選択肢の一つ。 |
※価格は2025年8月25日時点の調査に基づく。
エントリークラス(~5万円)の分析
フルHD(1920×1080)解像度でのゲーミングを主目的とする、最も競争が激しい価格帯の分析結果だ。
順位 | GPUモデル | 価格(円) | コメント |
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1 | AMD RX 7600 | 31,980 | 3万円代前半で購入できるRTX 4060、RTX 5050といえる フルHD解像度であれば大半のゲームは快適にプレイ可能 VRAM容量が8GBと少ないので、重めのゲームでは画質制限が必要だが、コスパはぶっちぎり |
2 | AMD RX 9060 XT 8GB | 44,800 | VRAM 8GBを許せるならコスパ最強の一角 RTX 5060より安いのにゲーム性能は一回り上 こいつのお陰でRTX 5060とRTX 5050の存在価値が完全になくなった ※RTX 5060 Ti(8GB)については言及しない GearTune編集部では存在しないものとして扱っている |
3 | Intel Arc B580 | 39,374 | ゲーム向けVRAM 12GB GPUとして高コスパ ゲームによっては相性問題はあるにはあるが、大半のゲームは割と動いてくれる 相性が悪くなければ、RTX 4060よりも高性能 |
4 | NVIDIA RTX 3060 | 35,790 | フルHD解像度なら大半のゲームが快適にプレイ可能だが、ヘビー級ゲームでは力不足 在庫がなくなり次第終売する この価格でVRAM 12GBのGeForceが手に入るのは今しかない ローカルLLM用にサブや複数運用するのもあり |
5 | Intel Arc B570 | 29,800 | B580の廉価版 この価格でVRAM10GBは素晴らしい コスパは良いが純粋なゲーム性能が少し弱い エンコード性能が高く、エンコード機としても使える つなぎのグラボとして買うのは結構おすすめ |
6 | NVIDIA RTX 5060 | 47,980 | 実はコスパは前世代比ではそんなに悪くない RTX 4060 Tiと同等レベルのゲーム性能なので、安くなって帰ってきたRTX 4060 Tiとも捉えることができる。 しかし、RX 9060 XTのぶっ壊れコスパにより需要がなくなってしまった |
7 | NVIDIA RTX 4060 | 44,500 | 発売当初からFHD環境ですら性能不足感が否めない中途半端な存在だった しかし、省電力性に関しては非常に優れており、同一設計のモバイル版でもデスクトップ版に匹敵する性能を持っている RTX 5050と比較するとマシだが、2025年に買うべきグラボではない RTX 5050についてはGearTune編集部では認知していないのでこの表からは除外している |
ミドルレンジ(5万円~8万円)の分析
WQHD(2560×1440)解像度での快適なゲーミングや、軽度のクリエイティブ作業を視野に入れるユーザーにとって中心となる価格帯の分析結果だ。
順位 | GPUモデル | 価格(円) | コメント |
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1 | AMD RX 9060 XT 16GB | 59,300 | コスパ最強 マジのガチでぶっちぎりのコスパ ゲームや配信、動画編集用途ならこれ一択 After Effectsを使わない限りRTX 5060 Tiを選ぶ理由はまったくない 配信や編集時のエンコード品質も全く問題ない 3DCG系等のCUDA依存ソフトを使用しない限り基本的にこいつを選ぼう 趣味程度なら生成AIもある程度は可能 「CUDAが〜」「相性が〜」といつもやかましいNVIDIA信者に忠告するが ガチクリエイターはみんな黙って5090使ってるぞ |
2 | AMD RX 7800 XT | 67,980 | RX 9060 XT 16GB が登場するまでコスパ最強だったグラボ ラスタライズ性能(基礎性能)が非常に高く、RX 9060 XTやRTX 5060 Tiよりも1回り上の性能を持つ バス幅が広く、物理帯域幅重視のVRや高解像度ゲーミングでは RX 9060 XTよりも論理性能で有利だが、汎用性重視なら最新機能を使えるRX 9060 XT がおすすめ |
3 | AMD RX 7700 XT | 58,799 | 同価格帯の中では高いラスタライズ性能を持ちコスパは非常に優秀 しかし、RX 9060 XTの登場により需要がなくなってしまった |
4 | NVIDIA RTX 5060 Ti 16GB | 73,980 | 基本的なゲーム性能はRX 9060 XT 16GBとほぼ同じ GDDR7の恩恵により物理帯域幅が広く、高解像度やVRゲーミングでは RX 9060 XT 16GBに対し若干有利 生成AIやCUDAの優位性はあるものの、ゲームメインならコスパ悪すぎ※RTX 5070を買ったほうがマシ 生成AIに関してもVRAM16GB程度のローカルLLM使用ならRadeonで良い 手軽にちょっと凝った画像生成したい人にはおすすめ |
アッパーミドル(8万円~11万円)の分析
高リフレッシュレートのWQHD環境や、4K(3840×2160)ゲーミングへの入門機を求めるユーザー向けの分析結果だ。
順位 | GPUモデル | 価格(円) | コメント |
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1 | AMD RX 9070 XT | 108,500 | アッパーミドル帯の王者 ゲームメインならこれ一択 デュアルエンコーダー仕様で、配信・動画編集性能も非常に高い 根本的な性能が非常に高く、生成AIや3DCG制作をする場合でも、素人レベルならこいつで問題ない 所詮VRAM16GB程度のGPUで生成AIは….(ry ※VR Chatのモデル制作をする場合、GeForce一択なので注意 |
2 | AMD RX 9070 | 95,800 | コスパは高いのだが、RX 9070 XTと価格差が小さくあえて選ぶ理由がない 省電力性は非常に高く、省エネPCを組みたいならおすすめ 性能がわからない人向けに説明すると、RTX 4070 Ti SUPERと同じくらいのゲーム性能 |
3 | AMD RX 7900 XT | 92,980 | ゲーム性能はRX 9070無印版とほぼ同じ VRAM容量と帯域幅に優れているため、VRやマルチモニター環境向け ほとんどの人はRX 9070無印版を選んだほうが良いと思う |
4 | NVIDIA RTX 4070 SUPER | 85,800 | 一時期市場からなくなっていたが、実はまだ売られている ゲーム性能だとRTX 5070に負ける場合もあるが、CUDAコア数が多く省エネなこともあり、GPUとしての基本性能はRTX 5070よりも高い VRAMは12GBとコア性能に対し控えめだが、発売時はVRAM需要がそこまで高くなかった 在庫がなくなり次第終売になるので欲しい人は急ごう DLSS MFGを使いたいならRTX 5070がおすすめ |
5 | NVIDIA RTX 5070 | 85,800 | ゲーム性能はRTX 4070 SUPERより高く出がちだが、高クロックで誤魔化してる感が強い ※CUDAコア数が少ない分高クロックで動作しており、消費電力が高い GPUとしての基礎性能ではRTX 4070 SUPERに負ける 4K解像度でもゲームを動かせるコア性能があるのに、完全にVRAM不足が足を引っ張っている なぜこの性能でVRAM12GBで出したのか疑問 DLSS MFGを使わなくて良いなら RTX 4070 SUPERの方が良い |
ハイエンド(11万円~17万円)の分析
絶対的な性能を求めるユーザー向けの分析結果である。
順位 | GPUモデル | 価格(円) | コメント |
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1 | NVIDIA RTX 5070 Ti | 129,800 | Nvidiaの良心的製品 RX 9070 XTのバカ売れに対抗するために値下がっているので、NVIDIA好きならこちらを選ぶべき。 普段NvidiaをディスりまくってるGearTune編集部もこのGPUは大好き |
2 | AMD RX 7900 XTX | 119,800 | 底値より少し値上がってしまったが、それでも十分高コスパ 性能はRTX 5070 Tiよりほんの少し高い 4Kゲーミング、ローカルLLM、VRゲームに向いている 実はゲーミングGPUとして世界で初めてチップレット構造を採用したスゴいやつだったりする 物理的にも論理的にも凄まじいVRAM帯域幅を持っているのが最大の長所 |
3 | NVIDIA RTX 5080 | 164,800 | 価格が下がろうともゴミに変わりない どれだけCUDAコアが多く、性能が高かったとしてもVRAM16GBでは使い切れない 近年高まっているローカルLLM需要に相反するコスパ最悪のグラボ ゲーム目的でもそれ以外でもRTX 5070 TiでOK、今後登場予定のRTX 5080 SUPERを待つべき 地味にデュアルデコーダーだったりするが、何に使うの?状態 2つの動画を同時に編集する場合や、FPSゲーマーが手元動画を撮影しながら配信する場合にほんの少し貢献してくれるかもしれないが、デコーダーよりVRAMを増やせ |
エンスージアスト(17万円~)の分析
プロフェッショナルや究極のゲーミング環境を求めるユーザー向けの分析結果である。
順位 | GPUモデル | 価格(円) | コメント |
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1 | NVIDIA RTX 5090 | 399,800 | この性能とVRAM容量には文句はない プロシューマーやエンスーゲーマー向けの最強製品 もう少し価格が落ち着いてほしい |
最終結論
以上の分析から、2025年8月時点での推奨GPUを以下のように結論付ける。
- 5万円以下の予算で選ぶなら
AMD RX 7600
が、最もコストパフォーマンスに優れる。VRAMを重視するならNVIDIA RTX 3060
も視野に入る。 - 5~8万円の予算では
AMD RX 9060 XT 16GB
が圧倒的におすすめ。 多くのユーザーにとって、これが最も合理的な選択となるだろう。 - 10万円前後の予算では
AMD RX 9070 XT
が、性能と価格のバランスで他をリードする。 - NVIDIA製GPUにこだわるなら
NVIDIA RTX 5070 Ti
が、ハイエンドクラスにおいて最もバランスの取れた選択肢である。
筆者のコメント
勘違いされがちなのだが、筆者は特定のPCショップや代理店の回し者ではなく、完全に独立した立場としてGearTuneを運営している。もちろん、特定のメーカーから金銭を受け取るスポンサー記事でもない。運営資金は、読者の皆様がクリックしてくださるAmazonやAdsenseの広告収入のみだ。
なぜ、あえて強めの論調で記事を書くのか。それは、2流以下のPCショップ店員や、再生数目的で中途半端な検証しかしないインフルエンサーが発信する情報に、もはやユーザーが騙されてはならない、という強い信念があるからだ。
今回、GearTune編集長として、一切の忖度なく各GPUを評価したつもりだ。もちろん、これはあくまで一つの視点に過ぎない。異論や反論は喜んで受け付ける。是非コメント欄で、あなたの意見を聞かせてほしい。そのコメントもまた、読者にとって価値のある情報になるはずだ。
最終的に、この記事が読者一人ひとりの、後悔のない最高の選択に繋がること。それが、我々の唯一の目標である。
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