2025年6月現在、RTX 50シリーズは発売当初の品薄状態から一転、在庫が余り気味で価格も下落傾向にある。この価格変動により、発売時とは評価が大きく変わったモデルも存在する。現役PCショップ店員として、実際の販売現場で見えてきた各モデルの真の実力とコストパフォーマンスを徹底的に分析する。
なお、RTX 40シリーズはRTX 4060以外がほぼ終売状態となっているため、新規購入ならRTX 50シリーズ一択の状況だ。
目次
RTX 5060:競技系FPS専用機として割り切れば悪くない
RTX 5060はRTX 4060 Tiとほぼ同等の性能を持ちながら、RTX 4060 Tiより安価という立ち位置だ。DLSS 4対応により前世代からの進化も感じられる。
しかし致命的な問題がある。VRAM容量が 8GBしかないことだ。
高い処理性能に対してVRAM容量が圧倒的に不足している。DLSS 4が真価を発揮するような重いゲームほどVRAM使用量が多く、結果的にDLSS 4を積極活用できない矛盾した設計になっている。
唯一推奨できるのは競技系FPSゲーマーだ。 Valorant、CS2、Apex Legendsなど8GBに収まる軽量ゲームでは十分な性能を発揮する。ただしこれらのゲームではDLSS 4を使わないため、RTX 5060の最大の売りが無意味になる。
正直な話、VRAM 8GBの用途なら3万円台で買えるRX 7600で十分すぎる性能だ。RTX 4060という選択肢もある。
ただし、最新の9世代ハードウェアエンコーダー/6世代デコーダーが搭載されているので動画編集用グラボと割り切れるのであれば非常におすすめできる。
RTX 5060 Ti:8GB版は論外、16GB版は条件付きで推奨
RTX 5060 Tiの8GB版は、前述のRTX 5060とまったく同じ理由で絶対に避けた方がいい。コスパはRTX 5060よりもさらに悪い。
ただ、16GB版は話が別だ。こちらは十分な性能を持っている。
ただし、冷静に性能を見ると、コア性能そのものはRTX 4070に一歩劣る。レイトレを多用するゲームや、AAAタイトルを高解像度・高画質設定でガッツリ遊ぶには少し厳しいかもしれない。
頼りになるのはDLSS 4のマルチフレーム生成機能だ。これと画質設定の調整を組み合わせれば、意外と手ごたえのあるパフォーマンスが引き出せる。さらに、16GBのVRAMがあるおかげで、将来のゲームにもある程度対応できる将来性はある。
もっとも、生成AIやクリエイティブ用途を考えていないなら、RX 9060 XT 16GB版の方がコスパは遥かに高い。
RTX 5070:VRAM不足が痛い惜しいモデル
RTX 5070はRTX 4070 SUPERより高性能で、RTX 4070 Tiとほぼ同等の処理能力を持つ。価格もRTX 4070 SUPERと同等レベルまで下がっており、コストパフォーマンスは決して悪くない。
最大の問題はVRAM不足だ。 これが16GBで同じ価格だったら間違いなく覇権を取れていた。
それでもプレイするゲームとモニター解像度によっては十分選択肢になる。ちょっと重めの競技系ゲームでフルHD高FPSを安定させたい場合などには最適だ。
しかし10万円近い予算があるなら、もう少し奮発してRX 9070を買った方がゲームでは確実に満足できる。4GBのVRAM容量の差はそれ程に大きいのだ。
RTX 5070 Ti:現在最もコスパが優秀な王道モデル
RTX 5070 Tiはコスパも性能も素晴らしい、現在のRTX 50シリーズで最も推奨できるモデルだ。
VRAM 16GBを確保し、性能もRTX 4080とほぼ同等で申し分ない。4Kゲーミングもこなせる実力を持っている。
価格も下落傾向にあり、RTX 4070 Ti SUPERに完全に取って代わる存在となった。
唯一のライバルはRX 9070 XTだ。ゲーミング性能では同等だが、コスパでは大きく負けている。
しかし、生成AIや動画編集、3DCGモデリング作業を少しでもするならNVIDIA製の方が有利だ。
RTX 5080:コスパ最悪の残念モデル
RTX 5080は端的に言ってコスパが悪い。 RTX 5070 Tiで良いじゃないかという立ち位置だ。
確かにコア性能は高く帯域幅も向上しているが、VRAMが16GBから増えていないため実用上の差を感じにくい。メモリ帯域幅をいくら増やしても、容量が変わらなければ実用上の恩恵は限定的だ。
唯一の差別化要素はハードウェアデコーダーの搭載数だ。RTX 5070 Tiより1基多い2基搭載により、動画デコード性能に優れる。配信時のウェブカメラ取り込みやオーバーレイ動画のデコード、動画編集時のプレビュー性能が向上する。
しかし、これらの恩恵を受ける人は限られている。Vtuberの様な使い方をしない限り ほとんどの人には無意味だ。RTX 5070 Tiのゲーム性能で不足を感じるなら、素直にRTX 5090を買うべきだ。
RTX 5090:文句なしの最強モデル
RTX 5090は性能面で文句のつけようがない最強GPUだ。
売れ行き不振により最近は価格も下がってきているのが朗報だ。性能は当然として文句なし、VRAM容量も 32GBで最強、コア性能も当然最強だ。
4K最高画質設定、レイトレーシング最高設定、フレーム生成機能をフルで使用しても余裕という圧倒的なスペックを誇る。使い切れないほどのVRAMと最強のコア性能、さらにAI機能まで含めてトップオブトップの存在だ。
ワークステーション向けGPUとして使える汎用性も持っている。
予算に制限がなく、最高の性能を求めるなら迷わずRTX 5090だ。
筆者のコメント
現役PCショップ店員として率直に言う。RTX 50シリーズは在庫余りで値下がり傾向ではあるが、依然としてRX 7000/RX 9000シリーズのコスパが高すぎて太刀打ちできていないというのが現実だ。
特筆すべきはRX 7000シリーズの価格暴落だ。RX 7800 XTが7万円を割り、RTX 5060 TiどころかRX 9060 XTすら上回るコスパだ。RX 7900 XTXも一部小売店で10万円台に突入し、まさに異次元のコスパを叩き出している。これではRTX 50シリーズの存在価値が問われる。
RTX 50シリーズも確かに値下がってきているが、RX 9000シリーズも供給安定により同様に値下がり傾向だ。結果として相対的な価格差は縮まっていない。むしろAMD勢の方が値下がり幅が大きく、コスパ格差は拡大している印象すらある。
2024年12月から2025年4月の間にGPUを購入した人は正直可哀想だ。 この時期は両陣営とも最高値を記録しており、現在の価格と比べると20%から30%も高く買わされている。特にRTX 5070 Tiを18万円で買った人を何人も見てきたが、現在は13万円台まで下がっている。
筆者としては夏頃まではGPU価格の下落傾向が続くと予想している。在庫が積み上がり、新製品発表のサイクルも考慮すると、急いで買う理由はない。特にRTX 50シリーズを狙っている人は、もう少し待てばさらなる値下がりが期待できる。
ただし誤解してはいけない。RTX 50シリーズは悪いGPUではない。 DLSS 4、レイトレーシング性能、クリエイティブ性能は確実にAMD勢を上回る。問題は価格だけだ。NVIDIAがもう一段の価格調整を行えば、市場は大きく変わるだろう。
※ドライバーの不安定性についてはあえて触れていません。
現時点での結論は明確だ。純粋にゲームだけならAMD勢、クリエイティブ用途も考慮するならRTX 50シリーズという住み分けが最も合理的な選択といえる。
※情報源:筆者の販売経験、価格.com
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