AMDが「RDNA 4」アーキテクチャを採用した新たなグラフィックスカード「Radeon RX 9070 GRE」の開発を進めており、すでに量産準備段階に入ったことが明らかになった。複数の情報筋によれば、RX 9070 GREは現行のRX 9070/9070 XTより低価格で、NVIDIA GeForce RTX 5070と直接競合する12GB VRAM仕様になると見られている。
Radeon RX 9070 GREの開発が確認される
中国の大手ハードウェア販売店「中正電脑」は3月9日に公式アカウントで「予算がRX 9070 XTに足りない友人はRX 9070 GREを待つといい、コストパフォーマンスはさらに良くなる」と発言。これまでほとんど噂がなかったRadeon RX 9070 GREの存在を示唆した。
台湾メディアBenchLife.infoによれば、「Radeon RX 9070 GRE 12GBはAIBパートナーの計画において、すでに量産段階に入る準備ができている」とのこと。この情報が正確であれば、近い将来に中国市場でこの新しいグラフィックスカードが発売される可能性が高い。
予想される仕様と位置づけ
現時点での情報から、Radeon RX 9070 GREの仕様について以下のような予測がされている
- GPU: Navi 48(RX 9070/9070 XTと同じ)
- メモリバス: 192bit(RX 9070/9070 XTの256bitから削減)
- VRAM容量: 12GB GDDR6(RX 9070/9070 XTの16GBから削減)
- コア数: RX 9070(3584基)よりもさらに削減された数
- 想定価格帯: $449〜$499 US(RX 9070の$549よりも安価)
この仕様は、12GB VRAMを搭載するNVIDIA GeForce RTX 5070と直接競合することになる。メモリバスが192bitに削減されることで、帯域幅も現行モデルの640GB/sから減少する見込みだが、価格性能比では魅力的なポジションを狙うと見られている。
GREシリーズとは何か
「GRE」(Great Radeon Edition)は、これまで主に中国などのアジア太平洋地域向けに展開されてきたAMDのグラフィックスカードシリーズだ。しかし、RX 6750 GREシリーズやRX 7900 GREなど、一部のモデルは世界市場でも販売された実績がある。
当初は中国市場を優先する可能性が高いものの、RX 9070 GREも後に世界市場で展開される可能性がある。特に、ミドルレンジのGeForce RTX 5070($549)に対抗するために、より安価なモデルを投入する戦略的意義は大きい。
市場投入時期
情報によれば、Radeon RX 9070 GREの発売はRadeon RX 9060 XT(Navi 44)よりも先になる見込みだ。RX 9060 XTは2025年第2四半期(4-6月)後半に登場すると予想されており、RX 9070 GREはそれより前、つまり4月から5月頃に発表される可能性がある。
AMD RDNA 4シリーズのラインナップ
現在判明しているAMD Radeon RX 9000「RDNA 4」シリーズの主な仕様は以下の通り
GPUモデル | RX 9070 XT | RX 9070 | RX 9070 GRE | RX 5070 Ti | RX 5070 |
---|---|---|---|---|---|
アーキテクチャ | RDNA 4 | RDNA 4 | RDNA 4 | Ada Lovelace | Blackwell |
GPU | Navi 48 XTX | Navi 48 XT | Navi 48 XL | GB203-300 | GB205-300 |
コア数 | 4096 | 3584 | ≤3584 | 8960 | 6144 |
ブーストクロック | ~2.97 GHz | ~2.52 GHz | 未定 | ~2.47 GHz | ~2.52 GHz |
メモリ | 16GB GDDR6 | 16GB GDDR6 | 12GB GDDR6 | 16GB GDDR7 | 12GB GDDR7 |
メモリバス | 256-bit | 256-bit | 192-bit | 256-bit | 192-bit |
メモリ速度 | 20 Gbps | 20 Gbps | 未定 | 28 Gbps | 28 Gbps |
帯域幅 | 640 GB/s | 640 GB/s | 未定 | 896 GB/s | 672 GB/s |
消費電力 | 304W | 220W | 未定 | 300W | 250W |
価格 | $599 | $549 | $449-499? | $749 | $549 |
市場戦略の背景
RX 9070 GREの投入は、AMDの市場戦略として複数の意味を持つと考えられる
- 価格帯の拡充: $599のRX 9070 XTと$549のRX 9070の下に、$499以下の価格帯を埋める
- RTX 5070への対抗: 同じ12GB VRAM構成のRTX 5070に対して価格優位性を確保
- 供給の最適化: 中国市場ではすでにRX 9070の在庫が枯渇しており、新モデルによる需要対応
- コストパフォーマンスの強化: RX 9070シリーズの成功を受け、より幅広い価格帯での競争力向上
筆者のコメント
AMDが「Radeon RX 9070 GRE」を準備しているという情報は、グラフィックスカード市場の競争が一層激化することを示している。特にRTX 5070と同じ12GB VRAM構成を採用しつつ、より低価格で提供するという戦略は注目に値する。
RX 9070/9070 XTの販売好調を受けて、より幅広い価格帯をカバーする戦略は理にかなっている。AMDは以前から「最高のパフォーマンスではなく、最高の価格性能比」を謳ってきたが、RX 9070 GREはまさにその典型といえるだろう。
一方、メモリバス幅の削減(256bitから192bit)は帯域幅の低下を意味し、高解像度ゲーミングや高負荷アプリケーションでの性能に影響する可能性がある。しかし、多くのミドルレンジユーザーにとって、この程度のトレードオフは許容範囲内だろう。
最終的に、グラフィックスカード市場における選択肢が増えることはユーザーにとって朗報であり、競争の活性化による価格の適正化も期待できる。まずは中国市場での展開が予想されるが、その成功次第では世界市場への展開も十分考えられる。今後の公式発表に注目したい。
※本記事はIT之家、BenchLife.info、ITHomeの報道および各種情報源に基づいています。正式な製品仕様は公式発表をお待ちください。
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