AMD Radeon RX 9070のBIOS改造が成功し、非XTモデルがXT版のパフォーマンスを実現できることが判明した。ドイツのPCGamesHardwareフォーラムのユーザー「Gurdi」氏がASUS PRIME RX 9070にXT版のBIOSを書き換えることで、クロック速度とTGP(消費電力)を大幅に向上させ、さらにオーバークロックを加えることでリファレンスRX 9070 XTを上回る性能を達成した。
驚異的なBIOS書き換え効果
BIOS書き換え前後のスペック変化は以下の通り
- 書き換え前: 2,140-2,610MHz、TGP 220W
- 書き換え後: 2,480-3,030MHz、TGP 317W
この改造により、クロック速度は最大で約16%、消費電力は約44%向上。ただし、Navi 48 GPUのCompute Unit(CU)数は56から64への増加はなく、3,584基のストリーミングプロセッサが4,096基に増えることはない。レーザーカットされた部分は物理的に無効化されているため、ソフトウェア的に復活させることはできない。
ベンチマーク性能
Gurdi氏はBIOS書き換え後の非XT版RX 9070で各種ベンチマークを実施。3DMark Speed Way、Steel Nomad、Port Royalなどで、オーバークロックを加えることでリファレンスRX 9070 XTを上回る性能を達成した。
さらにゲーム設定での最適化も行われ、「Game Stable」なセッティングでもリファレンスXT版を上回ることが可能と報告されている。
BIOS書き換えの懸念点
しかし、この改造には注意点もある
- ULPSモードの無効化: 省電力モードが機能しなくなる
- デスクトップでのフリーズ: 高クロック設定が原因と思われる不安定性
- 電源端子の違い: XT版の多くは3つの8ピン電源端子を搭載するが、非XT版は2つのみ
- シリコン品質: 非XT版は選別でやや品質が劣ると思われるシリコンを使用している場合がある
特に電源端子の違いは重要で、同じASUS PRIME RX 9070 XTのBIOSを使用した点が成功の鍵となった可能性がある。3つの8ピン端子を持つモデルのBIOSを2つの端子しかない非XT版に適用すると、深刻な安定性問題が発生する恐れがある。
テーブル比較
スペック | ASUS PRIME RX 9070 OC | ASUS PRIME RX 9070 “XT化” | ASUS PRIME RX 9070 XT OC |
---|---|---|---|
マイクロアーキテクチャ | RDNA 4 (GFX12) | RDNA 4 (GFX12) | RDNA 4 (GFX12) |
グラフィックプロセッサ | Navi 48 XT | Navi 48 XT | Navi 48 XTX |
Compute Units | 56 | 56 | 64 |
シェーダーユニット | 3,584 | 3,584 | 4,096 |
クロック周波数 | 2,120-2,590 MHz (標準)<br>2,140-2,610 MHz (OC) | 2,460-3,010 MHz (標準)<br>2,480-3,030 MHz (OC) | 2,460-3,010 MHz (標準)<br>2,480-3,030 MHz (OC) |
TGP | 220 W | 317 W | 317 W |
電源コネクタ | 2 × 8-Pin PCIe 4.0 | 2 × 8-Pin PCIe 4.0 | 3 × 8-Pin PCIe 4.0 |
筆者のコメント
AMDグラフィックカードでのBIOS書き換えによる「疑似アップグレード」は、ハードウェアエンスージアスト達の間で長い歴史を持つロマンあふれる改造だ。今回のRX 9070の「XT化」は、その伝統が現代のGPUでも可能であることを示す貴重な例となった。
しかし、一般のゲーマーには必ずしもおすすめできる手法ではない。確かに15-20%の性能向上は魅力的だが、安定性の問題やGPUの早期劣化リスクを考えると、最初からXT版を購入する方が賢明な選択となるだろう。
特に注目すべきは、AMDのGPUアーキテクチャがこうした改造に「寛容」な設計を維持していることだ。NVIDIAのGPUではこうした改造は極めて困難とされており、AMDのハードウェアが持つ「遊び心」は、エンスージアスト達に常に新たな可能性を提供し続けている。
今回の事例は、単なる性能向上の話にとどまらず、PCハードウェアカルチャーの面白さとロマンを再認識させてくれる貴重な発見だった。
※本記事はPCGamesHardwareフォーラムおよびVideocardzの情報に基づいています。BIOS書き換えはリスクを伴う行為であり、保証対象外となる可能性があります。自己責任で行ってください。
情報・参考




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