AMDのフラグシップCPU「Ryzen 9 9950X3D」の初の死亡事例が報告され、Ryzen 7 9800X3Dの大量故障問題がさらに深刻化している。Reddit上で集計された情報によると、Ryzen 7 9800X3Dの故障報告は既に107件に達し、そのうち85件がASRockマザーボードとの組み合わせで発生。さらに今回、高価なRyzen 9 9950X3Dでも同様の症状が確認され、ユーザーの不安が高まっている。
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Ryzen 9 9950X3Dの死亡事例
Redditユーザーのiksdeasdfによれば、ASRock Pro RS X870マザーボードに搭載したRyzen 9 9950X3Dが、わずか9日間の使用で突然起動不能になったという。ユーザーは最新のBIOS 3.20を適用し、Kingston FURY 64GB DDR5-6000 CL30メモリを使用していたが、通常使用中に突然PCがフリーズし、その後一切起動しなくなった。
特筆すべきは、このCPUには物理的な損傷の痕跡が全く見られなかった点だ。爆発や焼損などの明確な故障兆候はなく、「静かに死んだ」と報告されている。別メーカーのマザーボードでも起動せず、CPUが完全に故障したことが確認された。
これに先立ち、別のユーザーがASUS ROG CROSSHAIR X870E HEROマザーボードでも同様の9950X3D故障を報告しており、これで9950X3Dの死亡事例は少なくとも2件確認されたことになる。
Ryzen 7 9800X3Dの大量故障問題
一方、より手頃な価格のRyzen 7 9800X3Dでは、すでに107件もの故障例がReddit上で収集されている。これらの故障の内訳は
- ASRockマザーボード: 85件
- ASUSマザーボード: 13件
- MSIマザーボード: 5件
- Gigabyteマザーボード: 1件
チップセット別では
- X870チップセット: 49件
- B850チップセット: 36件
- X670チップセット: 7件
- B650チップセット: 15件
特に注目すべきは、これらのCPUの多くが数週間から数日という短期間で故障している点だ。中には使用開始からわずか30分で故障したケースも報告されている。さらに、一部のユーザーは交換された9800X3Dも再び故障するという二重の不運を経験している。
故障の症状とパターン
故障したCPUの症状には、いくつかのパターンが見られる
- 物理的な損傷が見られるケース: 一部のCPUには焼損の痕跡があり、過電圧またはユーザーエラーの可能性を示唆
- 物理的な損傷のないケース: 外見上は正常だが、完全に機能停止
- マザーボードの動作状態: ほとんどのケースで、マザーボードは他のCPU(7000シリーズやX3Dではない9000シリーズ)で正常に動作
故障のタイミングも様々で、EXPOやCPUオーバークロックを有効にした直後に発生したケースもあれば、何の設定変更もせずに通常使用中に突然発生したケースもある。
ASRockとAMDの対応
ASRockは最近、公式声明を発表し、「特定のRMAケースでは、マザーボードソケットの清掃だけで問題が解決し、Ryzen 9000シリーズのCPUが正常に動作するようになった」と主張している。また、「以前のBIOSにCPUを損傷させる問題はなかった」とも述べており、暗にAMD側に問題があることを示唆している。
一方、AMDからの公式見解はまだ出ていないが、かなりの数のユーザーがRMAプロセスを通じてCPUを交換している状況だ。多くのユーザーは、交換されたCPUで問題なく動作していることを報告している。
市場への影響
これらの問題報告は、Ryzen 9000 X3Dシリーズの評判に悪影響を及ぼす可能性がある。特にASRock 800シリーズマザーボードユーザーの間で不安が広がっている。
ただし、この問題の規模を正確に把握するには、総販売数との比較が必要だ。Mindfactoryだけでも9800X3Dは15,000台以上販売されているとされ、107件の故障例は全体の約0.7%に相当する。これは通常の故障率と比較してどうなのかという点は、さらなる調査が必要だ。
専門家の見解
業界関係者からは、「これは潜在的な互換性問題か、マザーボードとCPU間の電力供給の問題である可能性がある」との見方がある。特にASRockマザーボードでの故障が多い理由として、以下の可能性が指摘されている
- 市場シェア: ASRockは特にAMDユーザーの間で人気が高く、単に使用例が多いために故障報告も多い可能性
- 設計上の問題: 特定のチップセットやVRMデザインと9000 X3Dシリーズとの相性問題
- BIOS設定: 自動設定やデフォルト値に問題がある可能性
一方で「故障例は全販売数のほんの一部であり、通常の不良率の範囲内かもしれない」との意見もある。ただし、特定のメーカーとの組み合わせで故障が集中している点は無視できないとの指摘もある。
ユーザーへの推奨事項
現在、この問題に関して以下の対応が推奨されている
- ASRock 800シリーズマザーボードでの使用に注意: 特にB850・X870チップセットとX3Dシリーズの組み合わせには注意が必要
- 最新BIOSへの更新: 可能であれば最新のBIOSに更新する
- EXPOやオーバークロック設定に注意: 一部の故障例はこれらの設定変更直後に発生している
- 温度監視: 異常な温度上昇がないか定期的に確認する
- 重要データのバックアップ: 突然の故障に備え、重要なデータは定期的にバックアップする
筆者のコメント
9800X3Dの大量故障問題に続いて、高価な9950X3Dでも同様の症状が報告されたことは非常に懸念すべき状況だ。特に、物理的な損傷の痕跡なく「静かに死ぬ」パターンは、ユーザーにとって予測や防止が難しい点で厄介だ。
ASRockマザーボードでの故障例が多い点も気になるが、他メーカーでも発生していることを考えると、問題の根本はAMDのX3Dシリーズそのものにある可能性も否定できない。X3Dは3Dキャッシュを搭載した特殊な設計であり、通常のCPUとは異なる特性を持つことが知られている。
個人的な経験としては、ASRock、ASUS、MSI製のB650、B850、X870チップセット搭載マザーボードでRyzen 7 9800X3Dを複数回テストしてきたが、不具合が発生したことは一度もない。テスト環境ではメモリを6000MHz、CL30にEXPOプロファイルを適用した状態で安定動作している。この点を考えると、故障の原因が特定の条件下でのみ発生する複合的な問題である可能性も高い。
いずれにせよ、この問題がより広く認識され、AMDとASRockの両社が明確な原因究明と対策を講じることを期待したい。現在9000 X3Dシリーズの購入を検討しているユーザーは、少なくとも状況が明らかになるまで購入を延期するのが賢明かもしれない。
※本記事はReddit上の報告およびWccftech、VideoCardz、その他の情報に基づいています。個々のケースの詳細や原因については、今後の調査によって新たな事実が判明する可能性があります。
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