【2025年2月26日追記】 本記事公開後、ASRockから公式声明が発表され、状況が大きく変わりました
・この問題の多くは「CPUの故障」ではなく「メモリ相性によるブート不良」
・ASRockはAM5マザーボード向けにBIOS 3.20を提供開始し、問題に対応
・「CPUは壊れていない」とASRock Japanが公式に明言
最新情報は続報記事「Ryzen 7 9800X3D「突然死」問題の真相判明」をご参照ください。
AMD最新のゲーミング向けCPU「Ryzen 7 9800X3D」で「突然死」現象が多発していることが明らかになった。Reddit上で立ち上げられた専用メガスレッドには、わずか数週間で40件以上の報告が寄せられており、そのうち32件がASRock製マザーボードでの発生例だ。特に深刻なのは、交換したCPUまでもが同様に故障するケースが複数確認されていることで、単なる初期不良の域を超えた構造的問題の可能性が指摘されている。
突然死問題の実態と傾向
現在報告されている9800X3D故障の特徴として、以下のパターンが見られる
- 故障のタイミングが不規則
- 開封直後から動作せず(DOA: Dead On Arrival)
- 数時間〜数日の動作後に突然故障
- 数週間の正常動作後に突然起動不能
- 故障の症状
- 電源投入後にPOSTに至らない(BIOSにも入れない)
- マザーボードのデバッグLEDが「CPU」と「DRAM」を同時に示す
- 一切の映像出力が得られない
- メーカー別の発生状況
- ASRock製マザーボード:32件(全報告の約80%)
- MSI、ASUS、Gigabyte製マザーボード:8件(約20%)
特筆すべきは、同一マザーボードに7800X3Dや7950Xなど他のAMD CPUを装着すると問題なく動作するケースが複数報告されていることだ。これは9800X3D特有の問題である可能性を強く示唆している。
ASRock製マザーボードで特に発生率が高い理由
ASRock製マザーボードでの故障例が圧倒的に多い理由については、現在も調査中だが、以下の可能性が指摘されている
- BIOS/ファームウェアの最適化不足
- 特定のBIOSバージョン(3.15/3.16)で故障率が上昇
- 旧バージョン(3.10/3.11)へのダウングレードで復活するケースあり
- 電源供給の問題
- 過剰な電圧供給によるCPUダメージの可能性
- 昨年のRyzen 7000シリーズ初期で発生した「焼損問題」の再来との見方も
- PCI-Eレーン配分の独自実装
- ASRock独自の「レーン共有なしNVMe」実装が負荷を増大させるという指摘も
特にBIOSバージョンとの関連性は強く、ASRockは2月24日に「3.20」という新バージョンをリリース。これは一部のブート問題を解決するもので、完全に故障したCPUの復活は期待できないものの、初期症状での救済策となる可能性がある。
対策と回避策
現在判明している対策として、以下が推奨されている
- BIOS更新後に起動しなくなった場合
- BIOS Flashback機能で以前のバージョンに戻す
- 特にASRock製マザーボードでは3.10へのダウングレードが有効なケースが多い
- 新規購入を検討している場合
- 状況が明確になるまで、購入を延期することを検討
- 他社製マザーボードの選択も一案(ただし少数ながら他社製でも発生例あり)
- すでに所有している場合
- BIOSアップデートに慎重になる
- EXPO(メモリOC)設定の適用に注意
- 正常動作している場合はBIOSや設定を変更しない
AMDとASRockの対応
両社は問題を認識しており、調査を進めている段階だ
- AMD
- 問題が報告されたCPUのRMAを積極的に受け入れている
- 公式声明はまだ発表されていない
- 交換品の供給は比較的迅速
- ASRock
- BIOS 3.20をリリースし、一部のブート問題に対処
- Reddit上でも公式代表者が間接的に情報提供
- 一部ユーザーに非公開BIOSを個別提供するケースも
注目すべきは、「CPU交換+BIOS旧バージョン使用」の組み合わせで正常動作するケースが多い点だ。これはハードウェア的な欠陥というよりも、ファームウェアとCPUの相互作用に問題がある可能性を示唆している。
市場への影響
この問題は、高性能ゲーミングCPUとして人気の9800X3Dの信頼性に大きな疑問符を投げかけている
消費者信頼の低下
- 価格が高いプレミアムCPUでの故障は、消費者の信頼を大きく損なう
- 「X3D」モデル全体のイメージダウンにつながるリスク
マーケットシェアへの影響
- ゲーミング市場でのAMDの優位性が揺らぐ可能性
- Intel Core Ultra-S(Arrowlake)への消費者シフトの可能性
ASRockのブランドイメージ
- 同社のAM5マザーボード全体への不信感が広がる懸念
- 他社製品への需要シフトの可能性
筆者のコメント
9800X3Dの「突然死」問題は、単なる初期不良の範囲を超えた深刻な問題だと考えざるを得ない。特にASRock製マザーボードでの発生率の高さは、偶然の域を超えている。問題の核心は、おそらくBIOSファームウェアとCPUの相互作用にあると推測される。
Ryzen 7000シリーズ初期に発生した「焼損問題」では、過剰な電圧供給がCPUに損傷を与えるケースが発生した。今回も類似のメカニズムが働いている可能性は高い。特にX3Dモデルの3Dキャッシュは通常のRyzenと異なる電力特性を持つため、BIOS側の適切な対応が不可欠だ。
特に気になるのは、AMD側の公式発表がまだない点だ。40件以上の報告があるにもかかわらず、公式の声明が出ていないことは、状況の複雑さを示唆している。原因の特定に苦戦している可能性もあるが、ユーザーに対する透明性という観点からは、早急な情報開示が望まれる。
現状では、9800X3Dの新規購入を検討しているユーザーには、問題の原因と対策が明確になるまで待機することをお勧めする。すでに所有しているユーザーは、BIOSアップデートに慎重を期し、正常動作している場合は設定変更を最小限にとどめるべきだろう。
今回の問題は、ハイエンドCPUにおける信頼性の重要性を改めて浮き彫りにした。性能だけでなく安定性もプレミアム製品の重要な価値であることを、メーカーは再認識する必要があるだろう。
※本記事はRedditの報告およびwccftech.comの記事に基づいています。状況は日々変化しており、新たな情報が入り次第更新いたします。
情報・参考


コメント
当該CPUとRAMとの相性は疑わないのですか?
https://x.com/AsrockJ/status/1894293467372949660
ASRockフォーラムで報告された不具合なのでASRockマザーボードでの不具合発生率が高いのでは…?
他社製MBで起きない事象をメモリとCPUの相性問題って自社製品絡まない原因出してくる時点で信用できないわ。