3月6日の発売を控えるAMD「Radeon RX 9070 XT」において、VRAM(ビデオメモリ)の温度が90℃以上に達する問題が報告された。中国のレビュアーが公開したGPU-Zのスクリーンショットからは、GPUコア自体は適正温度を維持しているにもかかわらず、GDDR6メモリが高温になるケースが複数確認されている。これが一部モデルの問題なのか、それともRDNA 4アーキテクチャ全体の設計上の課題なのかが注目される。
VRAM温度が90℃超えを記録
中国のメディア「CHH评测室」が中国SNS「Bilibili」で共有した情報によると、テスト中のRX 9070 XTのGDDR6メモリ温度が88℃および94℃というかなり高い温度を記録したという。通常のGPU温度測定では主にコア部分のみに注目されがちだが、今回はVRAM温度も測定されていた。
CHHの創設者であるnApoleonは次のようにコメントしている
「これまではGPUコアの温度だけを見て、VRAMの温度は気にしていなかった。しかし今回の結果は衝撃的だ…テストした複数のメーカー製カードで、メモリチップが異常な高温になっている…あるモデルでは88℃、別のモデルでは94℃にも達した…まるで暗号通貨マイニングバブルの時代に逆戻りしたような状況だ…」
公開されたGPU-Zのスクリーンショットからは、次のデータが確認できる
1つ目のケース
- GPU最高温度:63℃(ホットスポット)
- メモリ温度:88℃
- 消費電力:237W
2つ目のケース
- GPU最高温度:79℃(ホットスポット)
- メモリ温度:94℃
- 消費電力:329W
興味深いのは、1つ目のケースではTBP(総基板消費電力)が237Wと、RX 9070 XTの公称TDP 260Wを大きく下回っている点だ。これがバグなのか、それとも省電力設定での測定なのかは不明だが、2つ目のケースの329Wという数値はフルロード時として妥当な範囲と思われる。
高温のVRAMがもたらす問題
GDDR6メモリの許容温度上限は95℃前後とされており、今回の測定値はその上限にかなり近い。この高温は、以下のような問題を引き起こす可能性がある
- 性能の低下:サーマルスロットリング(熱による性能制限)が発生する可能性
- オーバークロック能力の制限:メモリクロックを上げる余地がほとんどない
- 長期的な信頼性への影響:継続的な高温はメモリチップの寿命を縮める可能性がある
興味深いのは、2月末にリークしたFurMarkテストでは、RX 9070 XTが55℃という驚異的な低温を維持していたという報告があったことだ。ただし、そのテストではGPUコア温度のみが測定されており、VRAM温度は計測されていなかった可能性が高い。
原因と対策の可能性
このVRAM高温問題の背景には、いくつかの可能性が考えられる
- 冷却設計の最適化不足:特定のカスタムモデルの冷却ソリューションがVRAMに十分対応していない
- サーマルパッドの品質や接触不良:VRAMとヒートシンク間の熱伝導が効率的でない
- 高密度実装:RDNA 4アーキテクチャでのメモリ実装がより高密度になり、熱分散が困難になっている
現時点では、この問題が特定のカスタムモデルに限定されるのか、それともRX 9070 XTの設計全体に関わる問題なのかは不明だ。3月6日の正式発売後、より多くのユーザーやレビュアーからのデータ収集が必要となる。
市場への影響
この情報は、RX 9070 XTの発売を前に、潜在的な購入者に警告を与えるものだ。特にオーバークロックを計画しているユーザーや、長時間の高負荷使用を想定しているユーザーは、初期のレビューでVRAM温度についても確認することが賢明だろう。
また、AIBパートナー各社の冷却設計の違いにも注目が集まる。VRAMへの冷却が優れたモデルが、購入判断の重要な要素になる可能性がある。
筆者のコメント
VRAM温度問題は、近年のGPUで時々見られる現象だ。RTX 3090/3080シリーズでも、初期モデルではVRAM温度が100℃を超えるケースが報告され、後にメーカーが冷却設計を改良したという経緯がある。
今回のRX 9070 XTのケースも、初期ロットの一部モデルに限定された問題である可能性は十分ある。特に気になるのは、GPUコア温度が良好(63℃)にもかかわらず、VRAMが88℃に達しているケースだ。これは冷却設計がGPUコアに集中し、VRAMが軽視されている可能性を示唆している。
より深刻な懸念は、高温によるVRAMチップの劣化リスクだ。半導体では「エレクトロマイグレーション」という現象が知られており、高温環境下では金属配線内の原子が電子の流れによって徐々に移動し、最終的に断線や接続不良を引き起こす。GDDR6メモリのような高クロックで動作するチップでは、この現象がより顕著になる傾向がある。さらに、チップとPCB間のはんだ接合部にも熱ストレスがかかり、膨張と収縮の繰り返しによる「はんだクラック」のリスクも高まる。これらの問題は使用開始時には現れず、数ヶ月から数年の使用後に突然発生することが多いため、初期レビューだけでは見逃されがちな重大な懸念点だ。
発売直後はメーカー間のばらつきが大きい可能性があるため、購入を急ぐよりも、各モデルのVRAM温度を含めた詳細なレビューを待つことをお勧めする。また、AIBパートナーもこの問題を認識し、改良版を出してくる可能性もあるだろう。
なお、94℃というVRAM温度は確かに高いが、GDDR6の許容範囲内ではある。通常使用では即座に問題が生じることはないが、長期的な信頼性やオーバークロック余地を考えると、やはり懸念材料と言わざるを得ない。特に夏場の高温環境下では、さらに温度が上昇する可能性もあるため注意が必要だ。
※本記事はBilibiliの投稿およびWccftechの報道に基づいています。実際の温度特性は使用環境や個体差によって異なる場合があります。
情報・参考
forum / media CHH评测室 shared two screenshots of gpuz of some xt cards, calling out bad cooling on gddr6 vram.https://t.co/RwowRdYFwc
— UNIKO's Hardware 🌏 (@unikoshardware) March 3, 2025
nApoleon, the founder of chh:
Previously, I only paid attention to the GPU temperature and ignored the video memory. The result is good… The… pic.twitter.com/r1ytuyZNky

コメント