オランダの小売店「Your Game Specialist」がNVIDIA「GeForce RTX 5090」の大規模リコールに関する情報を顧客に通知したものの、その後撤回するという混乱が発生している。12V-2×6電源コネクタの問題に関連した「火災の危険性」を理由とする通知だったが、現時点でNVIDIA公式からのリコール発表はない状況だ。
リコール通知とその撤回
オランダの小売店「Your Game Specialist」は当初、顧客に以下のような内容のメールを送信していた
「NVIDIAは安全上の問題により、多数のビデオカードをリコールしています。当店には現在このモデルが5台在庫がありますが、火災の危険性が高まっているため、すべて返品する必要があります。この状況では、誰にも優先権を与えません。すべての顧客は、ビデオカードの予約または注文時のランキングに基づいて平等に扱われます。」
しかし、その後同小売店はこの主張を撤回。「リコールにより商品を受け取れない」と通知されていた顧客は、実際には来週商品を受け取ることになり、同店は内部調査を実施していると発表した。
12V-2×6コネクタの懸念
RTX 5090に搭載されている12V-2×6電源コネクタ(旧称12VHPWR)については、すでに一部の専門家から懸念が示されていた。
YouTuberのBuildzoid氏は2月中旬に公開した動画で、NVIDIAがRTX 5090に付属するケーブルの「シャント抵抗器」の数を減らしていることを指摘。これにより、ケーブルの各ワイヤーがGPUに供給する電力を適切に調整できなくなっているとしていた。
同様にDer8auer氏も、ケーブル内の電力が均等に分散されず、1本のワイヤーに過剰な電力が送られることでオーバーヒートやコネクタの溶解につながる可能性を指摘していた。一部の検証では、PSU側のコネクタ温度が150℃を超える事例も確認されていたという。
実際の被害事例
これまでに報告されているRTX 5090の焼損事例は限定的で、ASUS ROG Astralモデルなど一部のケースのみが確認されている。RTX 4090発売時に見られたような多数のコネクタ溶解事例は、現時点では報告されていない。
しかし、「十分に挿入されていない」というRTX 4090シリーズの問題とは異なり、今回の問題はユーザーの取り扱いとは関係なく発生している可能性がある点が懸念されている。
市場の反応と混乱
小売店「Your Game Specialist」の通知に基づき、複数のテック系メディアがリコールに関する情報を報じた。しかし、イギリスの大手小売店SCANの代表者によれば、少なくともイギリス市場においてはリコールの発表はないとしている。
また、MSIの関係者に確認したところ、リコール計画に関する情報は持っていないとの回答だった。NVIDIAも現時点で公式のリコール発表を行っておらず、状況は依然として不明瞭だ。
RTX 50シリーズの相次ぐ問題
RTX 50シリーズは発売以来、複数の問題に直面している
- ROP欠損問題: 一部のRTX 5090、5080、5070 Tiにおいて、公称より少ないレンダー出力ユニット(ROP)しか搭載されていないケースが発覚
- ブラックスクリーン問題: DisplayPort接続時に画面が黒くなる症状が複数報告
- 供給不足: 発売から数か月経過しても深刻な品薄状態が続いている
- 電源コネクタ問題: 今回報告されている12V-2×6コネクタの懸念
これらの問題が重なり、RTX 50シリーズの発売は「NVIDIAにとって最も困難なもののひとつ」と評される状況になっている。
筆者のコメント
情報が錯綜している現状では、明確な結論を出すことは難しい。一小売店からの情報提供とその後の撤回という経緯を考えると、リコールに関する情報は現時点では信頼性が低いと考えるべきだろう。
しかし、専門家が指摘する12V-2×6電源コネクタの潜在的な問題は注視に値する。RTX 4090発売時にも類似の問題が発生し、最終的に大きな問題となったことを考えると、NVIDIAからの正式な声明や詳細な調査結果を待つことが重要だ。
RTX 5090ユーザーへのアドバイスとしては、以下の点に注意することをお勧めする
- 電源ケーブルの接続状態を定期的に確認する
- ケースの換気を十分に確保し、GPU温度を監視する
- 異常な発熱やにおいを感じた場合は、すぐに使用を中止する
- NVIDIAの公式発表や小売店からの通知に注意を払う
RTX 50シリーズが相次ぐ問題に直面していることは残念だが、最終的な判断はNVIDIAの公式見解を待つべきだろう。信頼性の高い情報が出るまでは、過度の憶測を避け、冷静な対応を心がけたい。
※本記事はKitGuruおよびWccftechの報道に基づいています。状況は日々変化する可能性があり、最新情報は各公式ソースでご確認ください。
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