Radeon RX 9070 XTの「リファレンス」モデルがサーマルパッド交換で改善する高温問題が明らかに。中国のPCエンスージアストがOEM版カードのサーマルパッドを交換したところ、GDDR6メモリの温度が6℃低下することを実証した。また分解調査で、GPUコアにグラフェンシートが採用されていることも判明した。
サーマルパッド交換で大幅に改善するGDDR6メモリ温度
中国Chiphellフォーラムのユーザーが「リファレンス」デザインのRX 9070 XTのサーマルパッドを交換し、温度変化を詳細に報告した。テストはAMD Ryzen 7 9800X3D(全コア5.3GHz、1.2V)とDDR5-6400 CL28メモリを搭載した環境で実施され、室温は22℃に統一された。
FurMarkでの20分間負荷テストによる温度変化は以下の通り
測定項目 | 純正パッド | 交換後 | 差分 |
---|---|---|---|
GPU最大温度 | 62℃ | 64℃ | +2℃ |
GPU HotSpot最大温度 | 84℃ | 85℃ | +1℃ |
メモリ最大温度 | 88℃ | 82℃ | -6℃ |
最大消費電力 | 346W | 343W | -3W |
最も注目すべきは、メモリ温度が88℃から82℃へと6℃低下した点だ。これはサーマルパッド交換がRX 9070シリーズで報告されているメモリ高温問題に対して効果的な対策であることを示している。
GPUコアにグラフェンシート採用の秘密
分解画像から、このリファレンスモデルのGPUコアに従来の金属製ヒートスプレッダーではなく、グラフェンシートが採用されていることが明らかになった。コア部分にはHoneywell PTM7950 TIMが使用されており、工場出荷時のVRAM冷却には2mmおよび1.75mmのサーマルパッドが使用されている。
この冷却設計は、2ブロックに分かれた大型アルミフィンアレイに8本の銅製ヒートパイプを組み合わせた構造で、バックプレートには大きな切り欠きがあり、3つ目のファンで発生する空気を排出する仕組みとなっている。
ベンチマーク性能への影響
サーマルパッド交換がベンチマーク性能に与える影響も検証された
Time Spy:
- 交換前: 26,345点
- 交換後: 26,351点(ほぼ同等)
Time Spy Extreme:
- 交換前: 12,546点
- 交換後: 12,530点(ほぼ同等)
これらの結果から、サーマルパッド交換は短期的な性能向上には直接つながらないものの、メモリ温度の低下により長期的な安定性と耐久性の向上が期待できる。
「リファレンス」RX 9070 XTの概要
このRX 9070 XTは「リファレンス」または「MBA」(Made By AMD)と呼ばれるデザインで、主にOEM向けに製造されており、一般小売市場では正式に販売されていない。2.5スロット厚のトリプルファン冷却設計を採用し、側面と背面には大きなRadeonロゴがあしらわれている。
電源はデュアル8ピンコネクタを採用し、ディスプレイ出力はHDMI 1系統とDisplayPort 3系統を備える。PCB IDは「109-G295A7-00D_03」で、総合14フェーズ電源設計となっている。
筆者のコメント
Radeon RX 9070 XTの「リファレンス」モデルでGDDR6メモリの高温問題が再確認されたことは重要な発見だ。88℃という最大温度は許容範囲内ではあるものの、長期的な安定性を考えると懸念材料となる。サーマルパッド交換で6℃の温度低下が実現できることは、DIY愛好家にとって有益な情報だ。
特筆すべきは、AMDがグラフェンシートを採用している点だろう。グラフェンは熱伝導性に優れた素材であり、従来の金属製ヒートスプレッダーとは異なるアプローチとして興味深い。この技術的挑戦がどのような効果をもたらすのか、今後のAMD製品でも注目したい。
現在市場で入手可能なカスタムモデルでは、多くのメーカーがメモリ冷却を強化した独自設計を採用しているため、一般ユーザーはそちらを選択するのが無難だろう。ただし、「リファレンス」デザインの実力が確認されたことで、AMDの設計哲学への理解が深まった点は評価できる。
※本記事はChiphellフォーラムの投稿およびVideoCardzの報道に基づいています。サーマルパッド交換などの改造は自己責任で行ってください。
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