AMDの次世代ミドルレンジGPU「Radeon RX 9060 XT」に関する詳細情報が複数のリーク情報から明らかになった。注目すべきは8GBと16GBの2つのVRAM構成が用意されること、そして両モデルとも128bitメモリバスながら20Gbpsの高速GDDR6メモリを採用する点だ。これにより、18GbpsのGDDR6メモリを採用している前世代の RX 7600シリーズから帯域幅が大幅に向上している。
判明したRX 9060 XTのスペック詳細
基本スペック
複数のリーク情報により、RX 9060 XTの基本仕様として以下の情報が確認された
- GPU: Navi 4X(Navi 44と推測される)
- メモリ: 16GB GDDR6 および 8GB GDDR6
- メモリバス幅: 128bit
- メモリ速度: 20Gbps
- 電源コネクタ: 8ピン×1(カスタムモデルも含む)
- 推奨電源容量: 500W以上(OCモデルは550W)
- ディスプレイ出力: HDMI 2.1×1、DisplayPort 2.1a×2
特に注目すべきは、メモリ速度の20Gbpsという数値だ。これはRX 9070シリーズと同じ高速メモリチップを採用していることを示しており、帯域幅の制約を一部緩和する効果が期待できる。128bitメモリバスと20Gbpsのメモリ速度を組み合わせることで、理論上の最大メモリ帯域幅は320GB/sとなる。
※RX 7600 XTシリーズの帯域幅は288GB/sなので、32GB/sの向上を実現している。
ディスプレイ接続の制限から見えるチップの正体
リーク情報によると、RX 9060 XTはHDMI 2.1×1とDisplayPort 2.1a×2の合計3つのディスプレイ接続を搭載するという。これは4つの接続を持つハイエンドモデルと異なり、Navi 44チップの使用を示唆している。小型GPUは、しばしばモバイルプラットフォームから派生するため、ディスプレイ接続が制限される傾向がある。
電力要件とTDP
RX 9060 XTは8ピン1基の電源コネクタを採用し、500Wの電源容量を推奨しているという。このことから、GPUのTDPは225W以下と推測される。これは前世代のRX 7600 XTの190Wと比較すると若干高い可能性があるが、カスタムモデルやオーバークロック仕様では消費電力がさらに増加する見込みだ。
基本モデルは8ピン1基での動作が確認されているが、カスタムモデルでも同様の電源コネクタ構成となる予定だ。特にファクトリーオーバークロック版では、電力消費が増加するため、より高性能な電源ユニットが推奨されることになる。
8GBモデルに対する懸念
注目すべき点として、AMDがRX 9060 XTで8GBと16GBの2種類のVRAM構成を用意する方針だ。これはRX 7600シリーズとは異なるアプローチであり、NVIDIAのRTX 4060 Ti/5060 Tiシリーズの戦略に近い。
しかし業界からは、8GB VRAMモデルについての懸念の声も上がっている。現代のゲームでは8GBのVRAM容量がボトルネックとなるケースが増えており、特に$300以上のGPUで8GBというのは競争力に欠けるという指摘もある。前モデルのRX 7600 XTが$329で16GBを提供していたことを考えると、新世代の8GBモデルの価格設定によっては市場での立ち位置が難しくなる可能性がある。
メモリ帯域幅の課題
128bitメモリバスという仕様は、ハイエンドGPUの256bitや384bitと比較すると明らかに制限があるが、20Gbpsという高速メモリの採用により一部相殺されている。しかし、特に16GBモデルでは大容量メモリを活かすためにはメモリバンド幅が潜在的なボトルネックとなる可能性がある。
これはNVIDIAのRTX 5060 Tiと同様の課題だが、RTX 5060 Tiが採用する予定のGDDR7メモリ(28Gbps)と比較すると、AMDのGDDR6 20Gbps仕様はやや見劣りする。ただし、AMDはRDNA 4アーキテクチャとソフトウェア最適化、Infinity Cacheの採用などで、この差を埋める可能性はある。
発売時期と市場での位置づけ
現時点では通常のRX 9060(非XT)やRX 9050に関する情報はなく、RX 9060 XTが最初に発売されるSKUになると見られている。AMDは8GBと16GBの両バリエーションを同時に発表する予定だと伝えられている。
発売時期はまだ公式に発表されていないが、RX 9060 XTはNVIDIAのRTX 5060 Tiと直接競合することになる。RTX 5060 Tiも8GBと16GBの2バリエーションでの展開が予想されており、特に16GBモデル同士の競争は激しくなりそうだ。
価格帯としては300ドル~400ドル(約4.5万円~6万円)になると予想されるが、8GBと16GBモデルの間には明確な価格差が設けられるだろう。
筆者のコメント
RX 9060 XTの登場は、ミドルレンジGPU市場に新たな選択肢をもたらす重要な動きだ。特に注目すべきは16GBモデルの存在で、VRAM要求の高まる最新ゲームにおいて大きなアドバンテージとなる可能性がある。
一方で8GBモデルには懸念が残る。確かに低価格帯では魅力的な選択肢となり得るが、現代のゲームでは8GBというVRAM容量はすでに限界に近づいている。特に$300以上の価格帯では、将来性を考えると16GBモデルを選ぶ方が賢明だろう。
128bitメモリバスという制約は気になるところだが、20Gbpsという高速メモリの採用と、AMDのInfinity Cacheテクノロジーがどこまでこの制約を緩和できるかが鍵となる。RTX 5060 Tiが採用予定のGDDR7(28Gbps)と比較すると理論値では不利だが、実際のゲームパフォーマンスでどのような差が出るかは、実機テストを待つ必要がある。
DisplayPort出力が2基のみという点も、マルチモニター環境を構築しているユーザーには注意が必要だ。3画面以上の構成を考えているなら、この制限は購入判断に影響するかもしれない。
現段階では、性能や価格についての具体的な情報はまだ限られているが、ミドルレンジGPU市場での競争が活発化することは、消費者にとって良いニュースだ。AMDとNVIDIAの競争が激化することで、より良い価格性能比の製品が登場することを期待したい。
※本記事はリーク情報に基づいており、正式発表まで内容が変更される可能性があります。
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