AMDの「Radeon RX 9070 XT」が驚異的な販売台数を記録し、ドイツの大手小売店Mindfactoryでは週間GPU販売台数の首位を独走していることが明らかになった。週間で340台を売り上げたRX 9070 XTは、2位のRTX 5080(220台)を大きく引き離し、AMD全体としても販売台数でNVIDIAを初めて上回る快挙を達成。一方でIntelはArcシリーズがほぼ完全に市場から姿を消す厳しい状況に直面している。
RX 9070 XTが圧倒的な人気
ドイツの大手小売店Mindfactoryが公開した第13週(3月下旬)の販売データによると、Radeon RX 9070 XTは単一モデルとして圧倒的な販売台数を記録した。具体的な数字は以下の通り
- Radeon RX 9070 XT: 340台(全体の約41%)
- GeForce RTX 5080: 220台(全体の約26%)
- Radeon RX 7800 XT: 60台(全体の約7%)
- GeForce RTX 5090: 60台(全体の約7%)
- GeForce RTX 5070 Ti: 45台(全体の約5%)
特に注目すべきは、RX 9070 XTの直接の競合製品であるRTX 5070 Tiを約7.5倍上回る販売台数を記録したことだ。これはRTX 5070 Tiの価格が明らかに高すぎる一方で、RX 9070 XTが599ドルという比較的手頃な価格設定と豊富な供給量で市場に投入されたことが大きな要因となっている。
メーカー別シェアでAMDが初の首位
今週のMindfactoryのデータによれば、メーカー別の販売台数シェアは以下の通りとなった
- AMD: 440台(52.69%)
- NVIDIA: 395台(47.31%)
- Intel: 0台(0%)
これはAMDが週間販売台数でNVIDIAを上回った初めてのケースとなる。しかし、平均販売価格(ASP)には大きな差があり、AMDが751ユーロであるのに対し、NVIDIAは1,549ユーロと約2倍の価格差が存在する。この結果、売上高ではNVIDIAが61万1,997ユーロ(64.94%)、AMDが33万360ユーロ(35.06%)となり、依然としてNVIDIAが市場を支配している状況だ。
カスタムモデルの供給状況
現在Mindfactoryでは、XFXとPowerColorからのRX 9070 XTモデルを中心に取り扱いがある。当初は以下のようなモデルが人気を博した
- PowerColor Radeon RX 9070 XT Hellhound: 40台
- PowerColor Radeon RX 9070 XT Quicksilver: 20台
- XFX Radeon RX 9070 XT Mercury RGB OC: 30台
- XFX Radeon RX 9070 XT Mercury RGB OC White: 20台
- XFX Radeon RX 9070 XT Mercury Magnetic Air RGB OC: 10台
現在は6種類のRX 9070 XTモデルが販売されており、すべてXFXブランドとなっている。一方のRX 9070(非XT)は2種類のモデルのみが提供されており、販売は芳しくない状況だ。
NVIDIAの高価格戦略
NVIDIAのGPUは依然として高価格帯に位置しており、特にRTX 5090は2,990ユーロ(VAT抜きで約2,690ドル)という高額で販売されている。また、RTX 5080も高価格ながら220台という比較的好調な販売を記録した点が注目される。
RTX 5070 Tiは749ドルの公式MSRPに対して、実売価格は850〜1,050ドル程度となっており、RX 9070 XTとの価格差が250〜300ドルにも達している。この価格差が、性能面でわずかに上回るRTX 5070 Tiの販売不振の主な原因となっている。
Intelの市場脱落
最も衝撃的なデータは、Intelが今週の販売データで完全に「0」を記録した点だ。Arc B770やB580といった製品がMindfactoryの販売リストに一切登場せず、Intel GPUの販売台数が「ゼロ」となった。
この状況は、Intelが高性能カードを提供できていないだけでなく、市場の需要を満たすための供給体制も整っていないことを示している。特にIntel Arc B580はつい先日発売されたばかりであるにもかかわらず、すでに店頭から姿を消している点は深刻だ。
今後の展望
現在の状況は、小売店の在庫補充が継続的に行われていることから、来週以降もさらに大きな数字になる可能性がある。特にRX 9070 XTの人気は衰える気配がなく、AMDのCEOも「前世代比で10倍の販売台数」と供給量の増加を発表している。
一方で、NVIDIAもRTX 50シリーズの供給改善に注力しており、特にRTX 5070の価格競争力が向上すれば、市場シェアの奪還を目指す可能性がある。ただし、現時点での価格差を考えると、短期的にはAMDの優位が続くだろう。
筆者のコメント
今回のMindfactoryのデータは、AMDの積極的な価格戦略と供給量確保が功を奏した典型的な例だ。RX 9070 XTの圧倒的な販売台数は、単に「安いから売れる」というだけでなく、「価格に見合った性能」と「実際に購入できる在庫の豊富さ」という要素が組み合わさった結果だと言える。
特に興味深いのは、高価格帯製品に依存するNVIDIAの戦略の脆弱性が露呈した点だ。確かに売上高では依然としてNVIDIAが優位に立っているが、販売台数でAMDに敗北したことは、「量」を重視する市場への訴求力が弱まっていることを示している。NVIDIAの平均販売価格が1,549ユーロと、AMDの751ユーロの約2倍というのは、いかにNVIDIAが「高価格路線」に依存しているかを如実に示している。
Intelについては、率直に言って厳しい現実に直面している。発売したばかりの製品が一切販売されていないという状況は、製品そのものの魅力の低さに加え、供給体制の問題も示唆している。PC市場での第三の勢力として期待されたIntel GPUだが、現時点では市場からの評価を得られていないと言わざるを得ない。
今後数週間のデータが示す傾向が注目される。特にAMDのRX 9070 XTが引き続き強い販売を記録するか、またNVIDIAが価格調整により巻き返しを図るかが、2025年のGPU市場の方向性を決める重要な指標となるだろう。個人的には、この競争がより手頃な価格でのGPU提供につながることを期待したい。
※本記事はMindfactoryの販売データおよび@TechEpiphanyYTの情報に基づいています。一部地域の小売店のデータであり、世界市場全体の傾向を必ずしも反映するものではありません。
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