ASUSが高級グラフィックスカード「ROG ASTRAL GeForce RTX 5080」向けに新しいBIOSアップデートをリリースし、最大GPU消費電力(TGP)を従来の400Wから450Wへと引き上げることを発表した。この変更により、同モデルはRTX 5080シリーズの中でもっとも高い電力設定となり、前世代のRTX 4090と同レベルの電力消費を実現。しかし、性能向上は2〜5%程度に留まる見込みだ。
電力制限を450Wまで引き上げるBIOSアップデート
ASUSは3月14日付けで「ROG ASTRAL GeForce RTX 5080」向けの新しいBIOSをリリースした。このアップデートの主な内容は、GPUの最大消費電力(TGP)を400Wから450Wへと50W引き上げるものだ。標準的なRTX 5080のリファレンス電力設定は360Wであるため、このASUSのモデルは基準値より90Wも高い電力設定となる。
ASUSはこの電力制限引き上げの具体的な理由を公表していないが、ROG ASTRALをハイエンドモデルとして他社製品との差別化を図り、最大限の性能を引き出すためと見られている。
業界内における位置づけ
現時点で450WのTGPに対応しているのは、ASUSのROG ASTRAL RTX 5080に加えて、GigabyteのRTX 5080 Gamingのみ。特にGigabyteのモデルが高級モデルではないにもかかわらず、この高い電力設定を採用していることは興味深い。
TechPowerUPが実施したオーバークロック比較によると、以前のROG ASTRAL RTX 5080は電力制限の変更ができなかったが、今回のBIOSアップデートにより、ユーザーが最大450Wまで調整できるようになる。
性能向上の見込み
追加電力による性能向上は限定的と予想されている。GigabyteのRTX 5080 Gamingでの検証によれば、標準の360Wから450Wへの90W増加(25%増)でも、実際のゲーム性能向上は約2%に留まっている。
具体的な数値を見ると
- Gigabyte RTX 5080 Gaming: 標準360W時で113.2 FPS、450W時で115.2 FPS(約2%向上)
これは電力効率の法則に従った結果であり、追加の電力投入に対する性能向上は徐々に減少する。ASUSのROG ASTRAL RTX 5080も同様の結果が予想され、2〜5%程度の性能向上に留まる可能性が高い。
各社RTX 5080モデルのオーバークロック性能比較
TechPowerUPのレビューによると、各社のRTX 5080モデルのオーバークロック性能は以下の通り
モデル | 平均GPUクロック | 最大メモリクロック | パフォーマンス | 電力制限(標準/最大) | 最大電力時性能 |
---|---|---|---|---|---|
ASUS RTX 5080 Astral OC | 3312 MHz | +375 MHz | 115.9 FPS | 400/400 W | N/A |
Colorful RTX 5080 Vulcan | 3154 MHz | +375 MHz | 114.7 FPS | 375/400 W | 114.9 FPS |
Gainward RTX 5080 Phoenix | 3192 MHz | +375 MHz | 112.5 FPS | 360/380 W | 113.0 FPS |
Galax RTX 5080 1-Click | 3186 MHz | +375 MHz | 111.7 FPS | 360/400 W | 112.4 FPS |
Gigabyte RTX 5080 Gaming | 3245 MHz | +375 MHz | 113.2 FPS | 360/450 W | 115.2 FPS |
MSI RTX 5080 Suprim SOC | 3200 MHz | +375 MHz | 111.9 FPS | 360/400 W | 112.3 FPS |
NVIDIA RTX 5080 FE | 3154 MHz | +375 MHz | 110.2 FPS | 360/390 W | 110.8 FPS |
注目すべきは、ASUS ROG ASTRAL RTX 5080がすでに標準の400W設定で115.9 FPSという高いパフォーマンスを発揮している点だ。これは電力制限を上げた際のGigabyteモデル(115.2 FPS)をも上回っている。
BIOSアップデート方法
ASUSは公式サポートページでBIOSアップデートファイル「ASTRAL-RTX5080_450W.exe」を提供している。アップデートを希望するユーザーは以下の手順で行える
- ASUSの公式サポートサイトからBIOSファイル(15.77MB)をダウンロード
- ダウンロードしたEXEファイルを実行
- 画面の指示に従ってアップデートを完了
- システムを再起動
ただし、電力制限の引き上げは、十分な電源容量と適切な冷却環境が整っている場合にのみ推奨される。
筆者のコメント
ASUSがROG ASTRAL RTX 5080の電力制限を450Wまで引き上げる決断をしたことは、ハイエンドGPU市場での競争の激しさを物語っている。しかし、90Wもの追加電力投入に対して、わずか2%程度の性能向上しか見込めないという現実は、現代のGPUアーキテクチャが電力効率の面で限界に近づいていることを示している。
個人的には、このような電力競争は必ずしもユーザーに大きなメリットをもたらすとは思えない。電気代の上昇、発熱の増加、電源要件の厳格化などのデメリットを考えると、450Wという消費電力は一般的なユーザーにとって過剰と言えるだろう。
むしろ注目すべきは、ASUSがすでに標準の400W設定で優れた冷却性能と高いクロック周波数を実現している点だ。電力制限を上げる前から他社モデルより高いパフォーマンスを発揮していることを考えると、このBIOSアップデートは実用的な価値よりも、マーケティング面での意義が大きいかもしれない。
極限のパフォーマンスを求めるエンスージアストには魅力的かもしれないが、一般ユーザーには標準設定での使用を推奨したい。
※本記事はASUS公式発表、TechPowerUP、VideoCardzの情報に基づいています。
情報・参考


コメント