「ゲーミングPCのストレージは、OS用とゲーム用に分けるべきですか?」
この手の質問を見るたびに、筆者は頭を抱えたくなる。
結論から言おう。無理に分ける必要はない。
むしろ、今の時代に思考停止で「OSはCドライブ、ゲームはDドライブ」と物理的に分けている奴は、はっきり言って情弱か、ハードウェアの仕組みを理解していないかのどちらかだ。
なぜ「分ける派」が時代遅れなのか。そして、真にパフォーマンスを求めるならどう構成すべきなのか。
今回はCPUのレーン数やマザーボードの構造といったハードウェアの現実を突きつけながら、この不毛な論争に終止符を打つ。
なぜ「分ける」必要がないのか?
答えは単純だ。貴重な「CPU直結スロット」が無駄になるからだ。
自作PC初心者やBTO上がりのゲーマーは勘違いしているかもしれないが、Core i9だろうがRyzen 9だろうが、所詮はコンシューマ向けの「おもちゃCPU」に過ぎない。
サーバー・ワークステーション向けとは異なり、一般向けのCPUが持つPCIeレーン数は極めて貧弱だ。
多くのマザーボードにおいて、CPUと直結して最高速度が出るM.2スロット(プライマリスロット)はたった1つしかない。上位のマザーボードでようやく2つ使えるかどうかだ。
※ごく一部のエンスー向けモデルではGPU用の帯域を分割することでCPU直結スロットが3つ以上あったりするが、この記事では触れない
残りのスロットはすべて「チップセット経由」の接続になる。
情弱が陥る「最悪の構成」
ここで、世の中にはびこる「最もクソな構成」を紹介しよう。もし自分のPCがこれなら、今すぐ構成を見直したほうがいい。
- CPU直結スロットに、512GB程度の低容量・コスパ最悪なSSDを挿してOSを入れる。
- チップセット経由のスロットに、大容量の激安SSD(DRAMレス・QLC)を挿してゲームや動画素材を入れる。
これが「役満」級の最悪構成だ。筆者がこれを見たら憤死しかねない。
なぜか?
CPU直結という「特等席」に、一度起動したら大して読み書きしないOSだけを鎮座させ、帯域の細いチップセット経由に、最も帯域を必要とするゲームデータや動画素材を流し込んでいるからだ。
しかも、ゲーム用にケチってDRAMキャッシュレスやQLC NANDを選んでいるなら目も当てられない。これではPCの性能をドブに捨てているのと同じである。
真の最適解:賢いSSDの選び方と配置
では、どうするのが正解なのか。
筆者が推奨する構成は以下の2パターンだ。
1. 【推奨】大容量SSD一本で運用する(シンプルかつ賢明)
CPU直結スロットが1つしかない場合、変に分けようとするな。
性能の良い大容量(2TB〜4TB)のSSDを1枚買い、CPU直結スロットに挿す。
これだけでいい。
CPU直結スロットは帯域幅が広く、CPUとのレイテンシも最小だ。
ここにOSもゲームもすべて入れてしまえば、OSのキビキビとした動作と、ゲームのロード時間の短縮の両方を享受できる。
コントローラーへの負荷を気にする声もあるが、最近のハイエンドSSDのコントローラー性能をナメてはいけない。
ただし条件がある。必ずDRAMキャッシュ搭載のTLC NANDモデルを選ぶこと。
OSとゲームが混在する場合、ランダムアクセスとシーケンシャルアクセスが入り乱れる。DRAMキャッシュがあれば、これらを効率よくさばき、SSDの寿命と速度を維持してくれる。
2. 【上級者向】OSをチップセット側、ゲームをCPU直結側に(理想形)
どうしても物理的に分けたい、あるいは手持ちのSSDを活用したいという奇特なユーザーへの最適解はこれだ。
- OS用(Cドライブ): チップセット経由のスロット
- ゲーム・作業用(Dドライブ): CPU直結スロット
「えっ、OSを遅い方に入れるの?」と思ったなら勉強不足だ。
OSの挙動というのは、基本的に細かい4Kランダムアクセスが中心だ。
ここで重要になるのがDRAMキャッシュの存在である。
チップセット経由に繋いだとしても、DRAMキャッシュ付きのSSDであれば、キャッシュが緩衝材となりレイテンシの影響を最小限に抑えられる。SATA接続のSSDですら、体感速度は誤差レベルだ。
逆に、ゲームのロードや動画編集の書き出しといった「激しいシーケンシャル・ランダムアクセス」こそ、帯域の太いCPU直結スロットに担当させるべきだ。
OSは裏方に徹し、重たい処理を特等席で行う。これが理にかなった配置である。
この場合、CPU直結スロットに使うSSDはDRAMキャッシュレスでも問題ない。ランダムリード性能に優れた Sandisk WD Black SN 7100等がおすすめだ。
究極の構成:Gen5×2スロットという「暴力」
予算に糸目をつけないなら、話は別だ。
PCIe Gen5対応のM.2スロットを2つ備えたハイエンドマザーボードを用意しよう。
- スロット1(Gen5): OS専用(ハイエンドGen5 SSD)
- スロット2(Gen5): ゲーム専用(ハイエンドGen5 SSD)
ここまでやるなら分ける意味がある。
SSDのコントローラーが物理的に2つ存在することで、OSのバックグラウンド処理とゲームの読み込みを完全に分業できるからだ。
もちろん、どちらもDRAMキャッシュ搭載のハイエンドモデルであることが絶対条件だ。ここまで金を出してDRAMレスを買うような馬鹿な真似はしないと信じている。
まとめ:SSD選びの鉄則
最後に、この記事の要点を叩き込んでおく。
- 思考停止でOSとゲームを分けるな。 CPU直結スロットがもったいない。
- SSDは「TLC NAND」かつ「DRAMキャッシュ搭載」を選べ。 これ以外選択肢に入れるな。
- CPU直結スロットが1本なら、迷わず大容量1枚運用を選べ。
- 分けるなら「OSをチップセット側、ゲームを直結側」にしろ。 これが内部通信的に最もスマートだ。
「OSがクラッシュした時のためにデータを分けたい」という意見もあるだろうが、それはクラウドやNASにバックアップを取ればいいだけの話だ。ストレージの物理分割をバックアップ戦略にするのはナンセンスである。
ハードウェアの特性を正しく理解し、賢い構成でPCゲームライフを送ってくれ。
以上だ。














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