先週まではAMD Radeon RX 9070/9070 XTがトップを占めていたAmazon USのグラフィックカードベストセラーリストだが、最新のランキングではNVIDIA GeForce RTX 5070が首位に立ち、NVIDIAのGPUがリスト上位を占める状況に変化した。在庫状況の変動と市場の需要バランスの変化を反映した結果だ。
RTX 5070が首位奪還、AMDはトップ10圏外に
最新のAmazon USのグラフィックカードベストセラーリストによると、先週までトップだったAMD Radeon RX 9070 XTを抜き、NVIDIA GeForce RTX 5070が1位に躍り出た。具体的には「ASUS TUF Gaming GeForce RTX 5070 12GB GDDR7 OC Edition」がトップの座を獲得。同じくRTX 5070を搭載した「ASUS SFF-Ready Prime GeForce RTX 5070 OC Edition」も7位に入っており、RTX 5070の人気の高さを示している。
さらに注目すべきは、先週までトップ10および20位内に複数ランクインしていたAMD Radeon RX 9070/9070 XTが、今週はほぼ姿を消している点だ。現在RX 9070 XTで最上位のモデルは「PowerColor Reaper RX 9070 XT」で、これもわずか11位に留まっている。
代わってNVIDIAのGPUがリストを席巻しており、「ASUS TUF Gaming GeForce RTX 5080 16GB OC Edition」が8位に入るなど、RTX 50シリーズだけでなく、RTX 40シリーズやRTX 30シリーズといった旧世代モデルも多くランクインしている。
急激な変化の背景
この急激なランキング変動には、主に以下の要因が影響していると考えられる
1. 供給状況の変化
RTX 5070は3月5日に発売され、当初は極めて限られた在庫しかなかった。しかし、発売から一週間が経過し、徐々に供給量が増加。この供給増がランキング上昇に繋がったと見られる。一方、3月6日に発売されたRX 9070/9070 XTは、初期在庫が消費された後の追加供給が限られている可能性がある。
2. NVIDIAの強いブランド力
技術的にはRTX 5070よりRX 9070 XTの方が性能が高く、わずか50ドル高いだけだが、NVIDIAのブランド力は依然として強い。価格差が大きくない場合、多くの消費者はNVIDIA製品を選ぶ傾向にあるとの分析もある。
3. 在庫の実態とランキングの関係
注目すべきは、ランキング上位に入っているモデルでも、実際には「在庫切れ」状態のものが多いという点だ。ランキングは在庫状況よりも注文数や閲覧数などの指標に基づくため、実際の入手可能性とランキングが必ずしも一致しないケースがある。
現在のランキング状況
トップ10の構成
- ASUS TUF Gaming GeForce RTX 5070 12GB GDDR7 OC Edition 2~6. (旧世代のNVIDIA/AMD GPU)
- ASUS SFF-Ready Prime GeForce RTX 5070 OC Edition
- ASUS TUF Gaming GeForce RTX 5080 16GB OC Edition 9~10. (旧世代のNVIDIA GPU)
AMDの状況
- 11位:PowerColor Reaper RX 9070 XT
- その他のRX 9000シリーズはトップ20圏外
- RX 7600 XT、RX 7800 XT、RX 7900 XTXなどRX 7000シリーズが中位にランクイン
旧世代モデルの健闘
RTX 4060、RTX 3060などの旧世代モデルも引き続き上位にランクインしており、より手頃な価格帯の製品への需要も根強いことを示している。
RTX 5070とRX 9070/9070 XTの比較
市場での人気度の変化を理解するために、両社の最新ミドルレンジGPUのスペックを比較してみよう
モデル | MSRP | VRAM | 相対性能(ラスタライズ) |
---|---|---|---|
RTX 5070 | $549 | 12GB GDDR7 | 基準 |
RX 9070 | $549 | 16GB GDDR6 | RTX 5070より若干速い |
RX 9070 XT | $599 | 16GB GDDR6 | RTX 5070より明らかに速い |
特筆すべきは、RX 9070/9070 XTが16GBのVRAMを搭載しているのに対し、RTX 5070は12GBに留まる点だ。これはVRAM要求の高い最新ゲームでは意味のある差となる可能性がある。
一方、RTX 5070はGDDR7メモリを採用しており、帯域幅ではRX 9070シリーズよりも優位に立つ。また、レイトレーシングやAI機能においてはNVIDIAの方が強みを持っている。
今後の見通し
専門家によれば、現在のAmazonベストセラーリストは過渡期的な状況を示しているに過ぎず、今後数週間で大きく変動する可能性が高いとされる。特に以下の要因が影響すると予想されている
1. 供給状況の改善
NVIDIAもAMDも供給量の増加に取り組んでいると発表しており、今後数週間で在庫状況が改善すれば、より実態に近いランキングになると予想される。
2. 価格の安定化
現在はMSRP(希望小売価格)を大きく上回る価格設定が多いが、供給量の増加に伴い価格も安定化すると予測されている。これにより、コストパフォーマンスを重視するユーザーの購買傾向も変化する可能性がある。
3. RTX 5060/RX 9060シリーズの登場
3月下旬から4月にかけて、さらに手頃な価格帯の「RTX 5060/5060 Ti」「RX 9060/9060 XT」が発売される予定。これらの新モデル登場によってランキングが再び大きく変動する可能性が高い。
筆者のコメント
このAmazonランキングの変化は、GPU市場の競争が再び活性化していることを示す興味深い現象だ。数年前までは圧倒的なNVIDIAの独壇場だったGPU市場だが、AMDのRDNA 4アーキテクチャの登場で真の競争環境が生まれつつある。
特に注目すべきは、今回のランキング変動が必ずしも製品の性能差を反映したものではなく、供給量の差による側面が大きい点だ。技術的にはRX 9070 XTの方がRTX 5070より高性能であることは多くのベンチマークが示している。しかし、いくら性能が良くても「買えない製品」は消費者にとって選択肢にならない。
GPU市場の健全化のためには、NVIDIAとAMD双方が十分な供給量を確保し、MSRPに近い価格での販売を実現することが重要だ。「幻のMSRP」といわれる状況が続くようでは、消費者の信頼を失うことになりかねない。
個人的にはAMDのラインナップとアプローチに期待している。16GBという大容量VRAMの標準搭載は、将来性を考えると魅力的だ。特にVRAM要求が年々高まっているゲーム環境において、この4GB差が今後さらに意味を持つ可能性がある。
結論として、現在のAmazonランキングはあくまで「一時的なスナップショット」に過ぎない。真の勝者が決まるのはまだ先であり、最終的には「適正価格」「十分な供給量」「実性能」の3要素を最もバランス良く提供できたメーカーが市場を制することになるだろう。
※本記事は2025年3月現在の情報に基づいています。市場状況は日々変化する可能性があります。
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