AMD RDNA 4世代のミドルレンジGPU「Radeon RX 9060 XT」の仕様情報が海外メディアから明らかになりつつある。VideoCardzによれば、RX 9060 XTは2,048ストリームプロセッサと最大3.2GHzという高いブーストクロックを実現し、NVIDIA RTX 5060 Tiに直接対抗する製品になるとされる。特に8GBと16GBの2つのメモリ構成を用意する点もRTX 5060 Tiと同様のアプローチと報じられている。
目次
RX 9060 XTの予想される主要スペック
RX 9060 XTの推定スペックは以下の通り
- GPU: Navi 44(RDNA 4アーキテクチャ)
- ストリームプロセッサ: 2,048基(32コンピュートユニット)
- ゲームクロック: 2,620MHz
- ブーストクロック: 3,230MHz(カスタムOCモデルでは最大3.3GHz)
- メモリ: 8GB/16GB GDDR6
- メモリ速度: 20Gbps
- メモリバス: 128-bit
- 必要電源容量: 500W以上(モデルによっては550W以上)
- ディスプレイ出力: 3系統(RX 9070シリーズの4系統より少ない)
特に注目すべきは報じられているクロック周波数の高さだ。前世代の同クラス製品であるRX 7600 XTのブーストクロック2,755MHzと比較すると、約17%の向上が見られる。これが次世代RDNA 4アーキテクチャの高効率化の結果なのか、正確なところは公式発表を待つ必要がある。
前世代との予想される違い
未発表のRX 9060 XTと現行のRX 7600 XTを比較すると
スペック | RX 9060 XT (噂) | RX 7600 XT (公式) | 変化 |
---|---|---|---|
アーキテクチャ | RDNA 4(Navi 44) | RDNA 3(Navi 33) | 世代更新 |
ストリームプロセッサ | 2,048基 | 2,048基 | 変化なし? |
ゲームクロック | 2,620MHz | 2,470MHz | +150MHz? |
ブーストクロック | 3,230MHz | 2,755MHz | +475MHz? |
メモリ容量 | 8GB/16GB | 16GB | 8GBモデル追加? |
メモリタイプ | GDDR6 | GDDR6 | 変化なし? |
報道情報が正確であれば、コア数は同じ2,048基を維持しつつ、クロック周波数の大幅な向上により、実質的な性能向上が期待できる可能性がある。また、新たに8GBモデルも追加されるとすれば、より幅広い価格帯をカバーする戦略と考えられる。ただし、これらの情報はあくまで非公式なものだ。
NVIDIA RTX 5060 Tiとの予想される競合関係
RX 9060 XTの主な競合となるNVIDIA RTX 5060 Tiとの比較も重要だ。RTX 5060 Tiも同様に8GBと16GBの2つのメモリ構成が準備されているとされるが、主な違いは以下の点にあると報じられている
- メモリ技術: RTX 5060 TiはGDDR7(28Gbps)を採用するとされるのに対し、RX 9060 XTはGDDR6(20Gbps)を使用する見込み。これが事実ならば、RTX 5060 Tiのメモリ帯域幅は448GB/sとなり、RX 9060 XTは320GB/s程度になると予想される。
- 価格戦略: RTX 5060 Tiは16GBモデルが$499、8GBモデルが$399と予想されているが、RX 9060 XTはより安価な価格設定になる可能性があるとの見方がある。特にGDDR7よりも安価なGDDR6メモリを使用することで、コスト競争力を高められる可能性がある。
- 特殊機能: RTX 5060 TiはAI処理に特化したテンソルコアを搭載するとされるのに対し、RX 9060 XTはゲーミング性能を重視した設計となる可能性があると示唆されている。
いずれの情報も公式発表前の段階であり、正確な比較は両社の正式情報を待つ必要がある。
その他の注目情報
報道によれば、RX 9060 XTの電源要件については、最低500W、モデルによっては550W以上の電源ユニットが推奨されるとのこと。また、現時点では16ピン電源コネクタ(12V-2×6)を搭載するモデルの情報はなく、ほとんどが従来の8ピンコネクタを採用する見込みとされている。
Navi 44チップの制約により、ディスプレイ出力は3系統に限定されるとの情報もある。上位のRX 9070シリーズが4系統の出力を備えるとされているのと比べ、もしこの情報が正確ならばマルチモニター環境では若干の制約があるかもしれない。
また、一部の報道では動画エンコードエンジンが制限される可能性も示唆されているが、この点については信頼できる情報が少なく、さらなる情報を待つ必要がある。
発売時期と価格の見通し
RX 9060 XTの正式な発売日はまだ発表されていないが、Computexでの正式発表が予想されており、それは今から約5週間後となる。ただし、NVIDIA RTX 5060 Tiが今週発表される見込みであることから、AMDもそれに合わせて早期に情報公開する可能性もあるとの見方もある。
価格については確定情報はないが、競合するとされるRTX 5060 Tiの予想価格(16GB: $499、8GB: $399)より低い価格設定になるとの見方が多い。特にAMDがGDDR6メモリを採用するならば、コスト面での優位性を生かした価格戦略を取る可能性があるとされている。
「RX 9070 GRE」に関する情報も
一部の情報筋によれば、RX 9060 XTとRX 9070の間に位置する「RX 9070 GRE」と呼ばれる製品も開発中との情報もある。この製品は$400前後の価格帯を狙ったモデルとされており、中国市場を中心に展開される可能性があるとのこと。
このような情報が正確ならば、AMDのRDNA 4製品ラインナップは、RX 9060、RX 9060 XT、RX 9070 GRE、RX 9070、RX 9070 XTと、より細分化される可能性もある。
筆者のコメント
今回報じられたRX 9060 XTの仕様情報から見えてくるAMDの戦略は興味深い。単にコア数を増やすのではなく、クロック周波数を大幅に引き上げる手法を選択しているのは、おそらく歩留まりとコスト効率を最適化するためだろう。2,048基のコア数を維持しながら3.2GHz超のクロックを実現すれば、ダイサイズを抑えつつも性能向上を図れる。この手法はAMDが以前からRyzen CPUでも採用している「小さいダイ+高クロック」戦略の延長線上にある。
特にNavi 44チップを採用するという点は、同じチップを使って8GBと16GBの2つのメモリ構成を用意することで製造コストを削減しながら、異なる価格帯に対応できるという柔軟性をもたらす。この戦略はNVIDIAのGB206チップを使ったRTX 5060 Tiの展開と似ているが、AMDは価格優位性を確保するためにGDDR6メモリを採用する道を選んだようだ。
メモリ技術選択については、GDDR6とGDDR7のコスト差は無視できない。GDDR7は最新技術でありながら供給元が限られているため、コストが高くなるのは避けられない。AMDがGDDR6を選択したのは、単にコスト削減だけでなく、供給安定性の確保という側面もあるだろう。
帯域幅の差(GDDR6の320GB/s vs GDDR7の448GB/s)については、AMDのInfinity Cacheが重要な役割を果たす。確かにNVIDIAもL2キャッシュの拡大などでメモリ帯域のボトルネックを緩和する技術を持っているが、AMDのInfinity Cacheはより大容量で専用設計されている点で優位性がある。
実際のゲームプレイでは、1080pや1440pの一般的な解像度では、Infinity Cacheのおかげで物理的な帯域幅の差がそれほど性能に影響しない可能性が高い。しかし4K解像度やレイトレーシングを多用するゲームでは、キャッシュミスが増加し、GDDR7の広い帯域幅が有利に働く場面も出てくるだろう。特に将来的により高解像度のテクスチャを使用するゲームが増えれば、この差は拡大する可能性がある。
価格戦略の面では、AMDは8GB/16GBのデュアル展開でRTX 5060 Ti 8GB/16GBに直接対抗しながらも、価格設定を一段下げることで競争優位性を確保しようとしていると見られる。
総合的に見れば、AMDはコア数よりもクロック向上による性能アップ、高価なGDDR7を避けてGDDR6+Infinity Cacheの組み合わせ、そして価格優位性による差別化という三位一体の戦略でミドルレンジ市場に挑む構えのようだ。この戦略が実際のゲームパフォーマンスでどのような結果をもたらすのか、正式発表後のベンチマーク結果が非常に楽しみだ。
※本記事はVideoCardzなどメディアの報道に基づいています。正式な製品仕様は、AMDの公式発表をお待ちください。
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