かつてはGoogleが生成AIの台頭にいち早く「コードレッド」を宣言し、世界を震撼させた。だが2025年年末、その立場が一変。今度はOpenAIのSam Altman氏が“非常事態(Code Red)”を社内に布告したという。
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「われわれ、今すごくヤバいぞ。ChatGPTを立て直さねば!」――そんな悲壊な鐘の音が、サンフランシスコから聞こえてきたらしい。聞く者によっては、まるで古き良き世代の“場末のプロレス興行”である。
しかし、それが本当に「危機」なのか。
それとも単なる“ショーマンシップを伴う市場競争の演出”なのか――GearTune編集部独自の視点を交えて斬ってみたい。
目次
“コードレッド”の真の意味 — 焦りの裏返し
ニュースによるとOpenAIのCEOであるサム・アルトマンは、内部メモで「ChatGPTの品質改善を最優先せよ」と命じた模様。広告、AIエージェント、パーソナルアシスタント機能などの新規プロジェクトはすべて棚上げされたという。
なぜか。理由は明快だ――Gemini 3 を擁するGoogleの“本気のAI攻勢”が、OpenAIの盤石と思われたシェアを揺るがしているからである。
Gemini 3 は様々なベンチマークで ChatGPT を上回ったと報じられ、OpenAI 社内には「一時的な経済的逆風が来るかもしれない」との認識があったという。

つまりこれは、かつてGoogleが「ChatGPT登場で危機だ」と煽ったのと同じ構図でただ、立場が逆転しただけ。三年前の再演、あるいはリターンマッチ、である。

だが、そこに本当の“破壊的危機”があるかといえば、疑わしい。
「広告もサービスも全部後回し」というならまだしも、OpenAIは同時に他プロジェクトへの出資や提携にも走っているという報道がある。 つまり「コードレッド」という言葉だけが先に躍り、実態の“選択と集中”はどこまで徹底されるのか。
懐疑的になるのも当然だ。
それでも大騒ぎされる理由 ― 興行としてのAI戦争
では、なぜこの“内部的なお達し”が、ここまで喧伝されるのか。ここにはいくつかの演出上の“旨味”がある。
- “ドラマ性”が高いから
- 「かつて煽ったGoogle → 今度は煽られるOpenAI」という立場の逆転劇。読み手としては「昔の強者が弱者に転落するかも」というスリルがある。
- 投資家とマーケットの好餌
- 不安と期待が混じるこの瞬間、株価や企業評価が動きやすい。特に未上場で評価額が巨額なOpenAIにとって、「非常事態」は“大きな値動き”を呼ぶ格好のフックとなる。
- ユーザーを巻き込むことで騒ぎを拡張
- 「俺たちの愛したChatGPTがヤバい!」という言葉は、SNSで拡散されやすい。実際、多くのテックメディアが一斉にこのニュースを取り上げており、世論的な注目を集めている。
要するに、AI界隈の今の流れは、もはや“静かな技術革新”ではない。
“舞台上のショー”であり、観客(ユーザー+投資家)を沸かせるための演出なのである。
“別の声”――反応を冷静に見るプレイヤーたち
もちろん、すべてが賛同ムードではない。たとえばClaudeの開発会社、Anthropic のDario Amodei は、OpenAIやGoogleの“コードレッド連発”をあざ笑うように語っている。
彼の言葉を借りれば、「我々にはそんな緊急宣言も、派手な号令も必要ない」らしい。
アントロピックCEOダリオ・アモデイ氏、OpenAIとGoogleを批判「コードレッドは不要」
ーBusiness Insider(https://www.businessinsider.com/anthropic-ceo-dario-amodei-drags-openai-and-google-code-red-2025-12?utm_source=chatgpt.com)
実際、Anthropic は企業向けAIの開発を進めており、冷静かつ淡々と事業を回している。つまり、「派手な見せ物」はかえってマイナスになる可能性もある、という戦略だ。
このような“淡々とした実利重視”の姿勢は、今回のような“騒ぎ優先型ショー”と真っ向から対照される。AI戦争の舞台裏では、こうした“地味だが堅実”なプレイヤーも静かに息を潜めているのだ。
ユーザーとしてどう受け取るべきか ― “恩恵待ち”が合理的
私(編集部さいとー)の結論はこうだ――
- この“非常事態宣言”、裏を返せば「ChatGPT を今すぐバチクソに改善する」という約束だ。
ユーザーにとっては「モデルが速くなり、使いやすくなるかもしれない」という希望の合図とも言える。 - だが、それが実際“破壊的改善”になるか、それとも“見せかけの改善”に終わるかは不明だ。
仮にまた「次の新モデルを開発中!」と派手に発表されたら、それこそ“プロレス第二ラウンド”へ突入、である。 - だから我々ユーザーは、わざわざリングサイドでヤジを飛ばす必要はない。
ただ淡々と、どのAIが現実に“使える価値”を提供するかを見極め、恩恵に授かればそれでよい。
ポジションを持たないユーザーであれば、このド派手なAI競争は路上の紙芝居に過ぎない。あるいは、派手な外見のロックコンサートか。
騒ぎの最中では耳を塞ぎ、最後に残った“余韻”だけを確かめればよい。
まとめ ― このプロレス、観客も含めて楽しんでおこう
立場の逆転、慌てた“コードレッド”、市場の劇場化。
今回の騒動を端から見れば、典型的な“舞台ショー”である。
だが、それが悪いというわけではない。むしろ、私たちユーザーには恵みになる可能性がある。
だから願う!どうか、このプロレス、終わらずに続けてくれ!
派手な演出、焦燥、過剰なドラマ……そんな“祭りの夜”が続く限り。最終的に“より使いやすく、より賢く、より現実的なAI”が残ってくれるのなら。
それこそが、私たちの“勝ち”だ。



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