PCショップで日々、様々な自作PCトラブルに向き合っている。その経験から断言できる。メモリの装着は、実は自作PCで最も難しい作業の一つなのだ。
まず、物理的な取り付け方から説明しよう
メモリは「カチッ」という音がするまで、一発で強く押し込む必要がある。この「一発」というのが重要だ。何度も押し直したり、弱い力で押したりすると、実は端子との接触が不完全になってしまう。プロはメモリを差し込んだ瞬間、そのPCが正常に起動するかどうかが分かる。それほど、この作業は繊細なのだ。
次に、スロットの選び方を理解しよう
現代のマザーボードには4つのメモリスロットがある。A1、A2、B1、B2だ。ここで重要なのは、必ずA2とB2から使うということ。これは見た目の問題ではない。マザーボードの内部配線が、CPUからA2、B2への経路を最短になるよう設計されているからだ。
この設計は「デイジーチェーン方式」と呼ばれ、高速なメモリ動作を可能にする。ただし、4枚差しの場合は要注意だ。A1、B1は配線が長くなるため、安定性が低下する。
メモリには「ランク」という概念がある
一般的に16GB以下のメモリは「シングルランク」、32GB以上は「デュアルランク」となる。デュアルランクは理論上の性能は高いが、メモリコントローラへの負荷も大きい。4枚差しでデュアルランクメモリを使うと、安定性が著しく低下する可能性がある。
メモリ増設は”危険”である
「後から増設すれば良い」。よく聞く言葉だが、これは大きな間違いだ。同じ製品型番でも、製造ロットが違えば相性問題が発生する可能性がある。特にDDR5では、メモリに搭載された電源制御IC(PMIC)の違いにより、最悪の場合ハードウェアが破損する可能性すらある。
また、以下の要素が一つでも異なると、重大な問題を引き起こす
- CL値(レイテンシー)
- 動作電圧
- クロック周波数
最後に、現場からの提案
自作PCを組む際は、必要なメモリ容量を最初から用意しよう。16GB×2の構成が最も安定する。デュアルランクメモリを使う場合も、2枚構成を強く推奨する。
そして最も重要なのは、メモリの装着だ。カチッという音がするまで、恐れず、しかし慎重に押し込んでほしい。その一瞬の作業が、システムの安定性を大きく左右するのだから。
↓こういう四角いヒートシンクのメモリは差し込みやすい。
![](https://geartune.games/wp-content/uploads/2024/12/image-1-2-1024x673.jpg)
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