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Intel、P-Coreのみの新CPU発表も意義に疑問符
Intelが発表したE-coreを省いた新CPUに対し、業界から厳しい視線が向けられている。
8コア/6コア構成のこの新モデルは、ゲーミング性能や価格競争力でAMD Ryzen 7 7800X3Dに太刀打ちできない可能性が高い。
マルチスレッド性能の低下や高い生産コストなど、多くの課題を抱えるこの製品の市場での位置づけに注目が集まる。果たしてIntelは、この”逆行”とも言える戦略で、CPU市場の激戦区でどのような展開を見せるのか。詳細な分析と今後の展望を、本記事で徹底解説する。
最初に結論から言おう。Ryzen 7 7800X3Dで良くね?
今回発表されたCPUは既存モデルからEコアが排除されPコアのみになった製品だ。
複数あるが面倒なので代表例を一つ挙げよう。
Core i9-14901KE
既存モデルのCore i9-14900Kと比較すると数字1桁が1になり、末尾にアルファベットのEが追加されているだけなので非常にわかりやすい。
では早速解説していく。
最大8コアではRyzen9に対抗できない
Intelが今回発表した新CPUは、購入する価値が皆無と言わざるを得ない代物だ。既存モデルからE-coreを取り除いただけの8コアまたは6コアという構成は、現代のハイエンドCPU市場において完全に見当違いと言える。
まず、この新CPUの位置づけを考えてみよう。最上位モデルのCore i9を謳っているにもかかわらず、最大でも8コアしかないため、競合としてはRyzen 7シリーズが該当する。これは、かつてRyzen 7 5800Xに完敗したi9-11900Kの二の舞を予感させる展開だ。
Ryzen7 7700Xの Cinebench R23 multiスコアが 20000前後
Eコアを無効化した 13900K で 21000前後なので、i9 14901KE でもせいぜい22000に届くかどうかといったところだろう。
これではi9を名乗る資格がない。
Intelは長年、E-coreの重要性を強調してきた。マルチタスク性能の向上や電力効率の改善など、E-coreの利点を熱心に説明してきたわけだ。それにもかかわらず、今回E-coreを無効化してマルチスレッド性能を意図的に下げるという判断には、首を傾げざるを得ない。
この決定の背景には、Intelの製造プロセスの問題があるのかもしれない。8つのP-coreだけで構成されるCPUの生産は、歩留まりの悪さから高コストになる可能性が高い。そのため、価格競争力という観点からも、このCPUが市場で優位に立つことは難しいだろう。
さらに重要なのは、ゲーミング性能だ。IntelはThread DirectorやWindows 11のスケジューリング最適化など、様々な工夫を重ねてきた。しかし、それでもなおAMDのRyzen 7 7800X3Dには及ばないのが現状だ。そんな中、P-coreのみの構成で勝負に出るというのは、かなり強気な姿勢と言わざるを得ない。
ゲーム性能でAMDに勝つことは難しい
ここで、Ryzen 7 7800X3Dの優位性について詳しく見ていこう。このCPUは、AMDの3D V-Cache技術を採用しており、大容量のL3キャッシュによってゲーミング性能を大幅に向上させている。特に高フレームレートが求められるe-sportsタイトルや、オープンワールドゲームなどのキャッシュ依存度の高いゲームで、その真価を発揮する。
一方、Intelの新CPUは、単純にE-coreを取り除いただけでは、この性能差を埋めることは難しいだろう。P-coreの動作周波数を極限まで引き上げることで対抗しようとしても、それは消費電力と発熱の増大を招くだけだ。結果として、電力効率やサーマルスロットリングの面で不利になる可能性が高い。
最大8コアだと足りない場面が多い
さらに、安定性の観点からも疑問が残る。E-coreを完全に無効化することで、Thread Directorの恩恵を受けられなくなる。これは、マルチタスク環境下でのパフォーマンスや電力効率の低下につながりかねない。
消費者は「i9」というブランド名を頼りに購入することがほとんどだ、せっかく「i9」を買ったのに満足にゲーム配信もできないのは可哀想だ。
価格面でも、Intelは苦しい立場に置かれるだろう。高性能なP-coreのみで構成されるCPUは製造コストが高く、競争力のある価格設定が難しい。一方、AMDはより成熟した製造プロセスを活用し、コスト効率の良い製品を提供できる立場にある。
このような状況下で、Intelがどのようなマーケティング戦略を展開するのか、非常に興味深い。過去には、ベンチマークの選択や測定条件の操作など、様々な手法でIntel製品の優位性をアピールしてきた。しかし、今回のケースでは、そうした従来の手法が通用するとは考えにくい。
特に懸念されるのは、発熱と消費電力だ。P-coreのみの構成で高クロックを維持しようとすれば、必然的にTDPは上昇する。これは、PCケースの冷却設計や電源の選択にも影響を与える。ユーザーにとっては、追加のコストや運用上の課題につながる可能性がある。
また、マルチスレッド性能の低下は、クリエイティブワークやストリーミングなど、CPU負荷の高いタスクを行うユーザーにとっては大きなデメリットとなるだろう。Intelは長年、クリエイター向けの高性能プラットフォームとしての地位を確立してきたが、この新CPUはその立場を危うくする可能性がある。
結論:Ryzenで良くね
結論として、この新CPUは現時点では全く魅力的とは言えない。ゲーミング性能、マルチタスク性能、電力効率、価格競争力のいずれを取っても、Ryzen 7 7800X3Dの優位性は明らかだ。
6コアモデルに関しても Ryzen7 5700X や Ryzen5 7600X 等の競合がいるため厳しい戦いになると思われる。
Intelがこの状況を覆すためには、革新的な技術の導入か、劇的な価格戦略の転換が必要となるだろう。
しかし、Intelのブランド力と市場での影響力を考えれば、この製品が一定の支持を得る可能性も否定できない。特に、長年Intel製品を使用してきたユーザーや、特定のIntel独自機能に依存したワークフローを持つユーザーにとっては、選択肢の一つとなるかもしれない。
今後、Intelがこの製品をどのようにポジショニングし、どのようなマーケティング戦略を展開するのか、業界関係者として非常に注目している。技術的な優位性が薄い中で、いかにして市場シェアを確保するのか。その手腕が問われることになるだろう。
最後に、消費者の皆様へのアドバイスとしては、この新CPUの購入を検討する前に、十分な比較検討を行うことをお勧めする。特に、Ryzen 7 7800X3Dとの性能比較、価格、電力効率、そして自身の使用用途との適合性を慎重に評価する必要がある。現時点では、大多数のユーザーにとって、AMDの選択肢の方が魅力的に映るだろう。
Intelの今後の展開、特に次世代アーキテクチャの開発状況に注目しつつ、冷静な判断を心がけていただきたい。技術革新のスピードが速い半導体業界において、状況は常に変化する。今回の製品が意味を持つ日が来るかもしれないが、少なくとも現時点では、その日は遠いように思える。
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