自作PC市場、特にグラフィックボードの世界は常に情報戦だ。今、まさにRTX 50シリーズの購入を検討しているなら、一度立ち止まってこの情報を確認すべきだろう。なぜなら、現行モデルの最大の弱点を克服した「SUPER」シリーズの足音が、すぐそこまで聞こえてきているからだ。
海外の有力リーカーや大手テックメディアから発信される情報は、もはや単なる噂の域を超え、信憑性の高い「未来の確定事項」として我々の前に提示されつつある。その核心は、VRAM(ビデオメモリ)の大幅な増強。
この記事では、なぜ今「SUPER」シリーズの登場が確実視されているのか、その背景にあるNVIDIAの戦略と技術的進化を読み解き、リークされている「RTX 5070 SUPER」「RTX 5070 Ti SUPER」「RTX 5080 SUPER」の3モデルが、我々のPCゲーミングやクリエイティブ環境をどう変えるのか、その全貌を徹底的に解説する。
現行モデルを買って後悔する前に、まずはこの記事で「待つべき理由」を確かめてほしい。
目次
なぜ「SUPER」が今、話題なのか? ― 現行モデルの“アキレス腱”
今回のSUPERシリーズ登場の背景を理解するには、まず現行RTX 50シリーズが抱える根本的な問題を直視する必要がある。それは、「非常に高いコア性能に対して、VRAM容量が追いついていない」という、深刻なボトルネックだ。
特に批判の的となったのが、ハイエンドモデルであるRTX 5080の16GBというVRAM容量だ。999ドルという価格帯でありながら、4K解像度でのゲーミング、特にレイトレーシングを最大限に活用するような現代のAAAタイトルでは、VRAM使用量が16GBを超える場面が頻発する。
- 『アランウェイク2』や『サイバーパンク2077』: 4K解像度にパストレーシングを適用すると、VRAMはあっという間に上限に達し、パフォーマンスが著しく低下する。
- 生成AIや3Dレンダリング: 大規模なモデルや高解像度テクスチャを扱う際、16GBではメモリ不足に陥りやすく、せっかくの高速なCUDAコアを活かしきれない。
これは、ポテンシャルの高いエンジンを搭載しながら、その性能を十分に発揮できないという、非常にもどかしい状況を生み出している。PCショップのカウンターでも、「RTX 5080の性能を活かしたいがVRAMが不安だ」という声は少なくない。
このユーザーの不満と、後述する競合の突き上げに対し、NVIDIAが満を持して投入する回答こそが「SUPER」シリーズなのだ。
登場の背景にある、NVIDIAの戦略と技術的進化
NVIDIAがこのタイミングでSUPERシリーズを投入するのには、大きく二つの理由があると考えられる。
1. 競合(AMD)への対抗策
最大の理由は、AMDのRDNA 4アーキテクチャを採用した「RX 9000」シリーズの存在だ。特に、RTX 5070の直接のライバルとなるであろうモデルが16GBのVRAMを搭載してきたことは、12GBのRTX 5070にとって大きな脅威となる。例え純粋な性能(ラスタライズ、レイトレーシング)でNVIDIAが優位を保っていても、VRAM容量で劣ることは「将来性への不安」に直結し、ユーザーの選択に大きく影響する。この競争環境において、VRAMで優位に立つことは、市場の主導権を握り続けるための必須戦略だ。
2. 技術的ブレークスルー:「3GB GDDR7モジュール」の登場
もう一つは、技術的な進化だ。Wccftechなどの海外メディアが報じているように、これまで主流だった2GBのGDDR7メモリモジュールに加え、より大容量な「3GBモジュール」の量産体制が整ってきた。これにより、グラフィックボードの設計上重要なメモリバス幅を変えることなく、効率的にVRAMを増やすことが可能になった。
- 192-bitバス: 3GB x 6枚 = 18GB
- 256-bitバス: 3GB x 8枚 = 24GB
この技術的下地が整ったことで、NVIDIAはラインナップ全体でVRAMを大幅に増強する準備ができたのだ。
【徹底解剖】リークから見る、三体の“SUPER”の実力
それでは、各モデルがどのような進化を遂げるのか、リーク情報を基に詳細に見ていこう。
スペック項目 | RTX 5070 (現行) | RTX 5070 SUPER (リーク) | 注目ポイント |
GPU | GB205 | GB205 (フルスペック) | 性能の底上げ |
CUDAコア | 6,144 | 6,400 | 4%増 |
VRAM | 12GB GDDR7 | 18GB GDDR7 | 50%増、最大の進化点 |
メモリバス | 192-bit | 192-bit | 変わらず |
TGP | 250W | 275W | 性能向上に伴う増加 |
RTX 5070 SUPERの最大の注目点は、なんといってもVRAMが18GBに増強されることだ。これにより、現行モデルでは厳しかった1440p(WQHD)解像度での最高設定はもちろん、4K解像度でのゲーミングも十分に視野に入ってくる。
さらに、CUDAコアが4%増加している点も見逃せない。これはGPUダイがフルスペック版になることを示唆しており、単なるVRAM増量モデルではなく、ベースとなる性能自体が向上することを意味する。ゲーム性能はもちろん、生成AIなどのクリエイティブ用途においても、その恩恵は大きい。500ドル台のミドルハイ市場において、「実用的な4K入門機」としての地位を確立する、非常に強力な製品になることは間違いない。
スペック項目 | RTX 5070 Ti (現行) | RTX 5070 Ti SUPER (リーク) | 注目ポイント |
GPU | GB203 | GB203 | 変わらず |
CUDAコア | 8,960 | 8,960 | 変わらず |
VRAM | 16GB GDDR7 | 24GB GDDR7 | RTX 4090に並ぶ大容量 |
メモリバス | 256-bit | 256-bit | 変わらず |
TGP | 320W | 350W | VRAM増強に伴う増加 |
このRTX 5070 Ti SUPERこそ、市場に最も大きなインパクトを与える一枚かもしれない。CUDAコア数こそ据え置きだが、VRAMが前世代ハイエンドののRTX 4090に匹敵する24GBへと増強される。このアップグレードが持つ意味は大きい。
ゲーミングにおいては、24GBの大容量VRAMは、あらゆるゲームを4K Ultra設定でプレイしてもメモリ不足の心配がほぼなくなることを意味する。DLSSのフレーム生成(MFG)など、VRAMを多く消費する機能も最大限に活用できる。
しかし、真価が発揮されるのは生成AIや3Dレンダリングといったクリエイティブ分野だろう。これまで24GBのVRAMは、RTX 3090や4090といったフラッグシップモデルだけの領域だった。そのプロフェッショナルな作業環境が、700ドル台の価格帯で手に入る可能性が出てきたのだ。これは、多くのコンテンツクリエイターにとって、まさに待望のモデルと言える。
スペック項目 | RTX 5080 (現行) | RTX 5080 SUPER (リーク) | 注目ポイント |
GPU | GB203 | GB203 | 変わらず |
CUDAコア | 10,752 | 10,752 | 変わらず |
VRAM | 16GB GDDR7 | 24GB GDDR7 | ボトルネックの完全解消 |
メモリバス | 256-bit | 256-bit | 変わらず |
メモリ速度 | 30Gbps | 32Gbps | 帯域幅1TB/s超えへ |
TGP | 360W | 400W以上 | 性能解放の代償 |
筆者は過去の記事で「RTX 5080はVRAM容量がコア性能に見合っていない」と主張してきた、その答えがここにある。RTX 5080 SUPERは、VRAMが24GBに増強されることで、ついにGB203コアの真価を解放する。
現行モデルでは、VRAMがボトルネックとなり、RTX 5070 Tiとの性能差が価格差ほど明確には現れにくかった。しかし、同じ24GBのVRAMを得ることで、約20%多いCUDAコアのアドバンテージが、特に高解像度・高負荷な場面でダイレクトに性能差として現れるようになるはずだ。
さらに、メモリクロックの向上によりメモリ帯域幅は1TB/sの大台を突破すると予想されており、これはデータの通り道をさらに広げ、パフォーマンスをもう一段階引き上げる。RTX 5090には手が届かないが、一切の妥協をしたくない。そんなエンスージアストにとって、「完璧な4Kゲーミング体験」を提供する、真のハイエンドグラボとして君臨することになるだろう。
結論:今、ユーザーが取るべき最善の選択
これまでの情報をまとめると、結論は極めて明確だ。
今、GeForceグラフィックボードの購入を検討しているなら、「待つ」のが最も賢明な判断である。
2026年早期と予想されるSUPERシリーズの登場は、現行モデルの価値を相対的に下げるだけでなく、価格改定や中古市場の活性化など、市場全体に大きな影響を与える。この大きな変化の波を見据え、最適なタイミングで最良の製品を選ぶことが、後悔しないための最善策と言える。
もちろん、「今すぐPCが必要だ」という事情もあるだろう。その場合は、以下の点を考慮して選択することをお勧めする。
- 今すぐ買う場合の選択肢: RTX 5090は別格として、SUPER登場までの「繋ぎ」と割り切れるならRTX 5070 Tiが選択肢になる。VRAMを重視するなら、RTX 5060 Tiの16GB版も特定の用途では有効だ。
- ゲーム性能とコストパフォーマンスを重視するなら: GeForceにこだわらないのであれば、RadeonのRX 7800 XTやRX 7900 XTXは、現時点でも非常に優れた選択肢であることは付け加えておく。
RTX 50 SUPERシリーズは、単なる製品追加ではない。NVIDIAが市場の要求に応え、自らの製品ラインナップを再定義する戦略的な一手だ。我々PCユーザーは、この大きな変化を見極め、自らの用途と予算に合った最も賢い選択をすべき時が来ている。
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